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疑問
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そう言いながら机の上にだし巻き卵を置いた旦那さまに、わたしは今まで思っていた疑問をぶつける。
「あの、どうして洋風のお屋敷なのに、このお部屋だけ和風なのですか?」
「あぁ、そういえば言ったことがなかったな。これは俺の趣味だ。この家は元々西洋の文化が好きな母上が作らせたものなんだ。だが、俺は和風の方が落ち着く。だから、母上に頼み込んで俺の部屋だけ和風に作ってもらったんだ。元々この屋敷の俺の部屋はここだけだったんだがな………」
どこか寂しそうな旦那さまの表情に、わたしはあわあわと慌てます。
「気にすることはない。………そういえば、この屋敷は暮らしづらくないか?俺なりに考えて、必要そうな箇所には必ず踏み台を置くようにしているとはいえども、不便な箇所があるはずだ。遠慮なく物申してくれ」
「い、いえ!いえ!!大丈夫ですっ。ものすっごく暮らしやすいです!はい!!」
「無理してないか?」
「本当に大丈夫です。お布団、いいえ、ベッドですね。ベッドについている紗も、窓に設置されている木製の飾りも、ベッド横に置かれている提灯に似せたランプも、………全てわたしの母国のものに似せてくださっていますよね?それが本当に心地よいのです。この国ならではの花々が意匠として使われていることももちろんのこと、その細やかな気遣いが嬉しいのです」
「………そうか」
旦那さまの優しい表情にほっこりとしていると、旦那さまがわたしの手を見つめます。
「少し荒れているな」
「そうですか?」
「あぁ。荒れている」
そう言った旦那さまは、木製の机の引き出しの中をガサゴソと漁ります。
やはり、和風のお部屋というのは素敵ですね。藺草の深く鼻腔をくすぐる匂いがふんわりと漂ってきます。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「あの、どうして洋風のお屋敷なのに、このお部屋だけ和風なのですか?」
「あぁ、そういえば言ったことがなかったな。これは俺の趣味だ。この家は元々西洋の文化が好きな母上が作らせたものなんだ。だが、俺は和風の方が落ち着く。だから、母上に頼み込んで俺の部屋だけ和風に作ってもらったんだ。元々この屋敷の俺の部屋はここだけだったんだがな………」
どこか寂しそうな旦那さまの表情に、わたしはあわあわと慌てます。
「気にすることはない。………そういえば、この屋敷は暮らしづらくないか?俺なりに考えて、必要そうな箇所には必ず踏み台を置くようにしているとはいえども、不便な箇所があるはずだ。遠慮なく物申してくれ」
「い、いえ!いえ!!大丈夫ですっ。ものすっごく暮らしやすいです!はい!!」
「無理してないか?」
「本当に大丈夫です。お布団、いいえ、ベッドですね。ベッドについている紗も、窓に設置されている木製の飾りも、ベッド横に置かれている提灯に似せたランプも、………全てわたしの母国のものに似せてくださっていますよね?それが本当に心地よいのです。この国ならではの花々が意匠として使われていることももちろんのこと、その細やかな気遣いが嬉しいのです」
「………そうか」
旦那さまの優しい表情にほっこりとしていると、旦那さまがわたしの手を見つめます。
「少し荒れているな」
「そうですか?」
「あぁ。荒れている」
そう言った旦那さまは、木製の机の引き出しの中をガサゴソと漁ります。
やはり、和風のお部屋というのは素敵ですね。藺草の深く鼻腔をくすぐる匂いがふんわりと漂ってきます。
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