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13 お嫁さんになって

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 アリシアは彼に“執着”している。

 アリシアが感情を持った者は、みんなアリシアの側で亡くなった。
 だからこそ、アリシアは人に感情を抱いてはいけない。懐いてはいけない。執着してはいけない。この恋のような心は綺麗に隠して、どこか遠くに放り投げなければならない。

「婚約者じゃなくて、僕のお嫁さんになってよ」

 なのに、ヨハンはくしゃっと笑ってそんなことを言う。
 アリシアが弱いきらきら輝くような、お月さまみたいな笑みを浮かべて、アリシアの手を取る。
 今日だって、何度も何度もアリシアの側にいて、アリシアを庇ったせいでお洋服がたくさん汚れて、その挙句シャンデリアに潰されて死にかけたのに。

 アリシアに何度も殺されかけたはずなのに、ヨハンは無邪気にアリシアに笑いかける。彼は知らないだろう。そんな彼に、アリシアの心が何度も何度も救われたことを。

「はい?」
「君との約束は、死んでも、怪我をしても、不運になっても、君が責任を取らないこと。捨てるときはこっ酷くぼろぼろに捨てること」

 最後の1項目を言う前に、ヨハンは深く息を吸った。

「ーーーそして、君に好きなひとができたら婚約者じゃなくなることだ」

 ひゅっとアリシアは息を飲み込んだ。
 確かに、彼とアリシアの約束はアリシアに好きな人ができた時、婚約者ではなくなるという約束だった。でも、それはこのためのものじゃない。これは、彼を救うためのもので………、

「僕は望んで不運に飛び込む。君の不幸ごと君を愛する。だから、僕を好きになって。僕だけを見て。お願いだから、僕を、………置いていかないで………………」

 迷子の子供のようにアリシアの両腕を掴んで床に崩れ落ちたヨハンに、アリシアは変な汗をかくのを感じた。

(どこで失敗したの。どこで間違えたの。これじゃあ彼のことを守れないの。解放できないの。どうすれば、どうすれば………!!)

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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