1 / 72
1
しおりを挟む
▫︎◇▫︎
わたし、オードリー・アイリーンは今日結婚する。
お相手は女嫌いと有名な公爵さま。
結婚が決まったのはたった1週間前で、参列者はお父さまとお母さまと小さい弟、あとは相手方の従者さんだけ。
寂しい寂しい結婚式。
結婚なんか絶対しないって公言していたわたしにも、結婚式に対する願望ぐらいはあった。真っ白なトレーンの長いドレスや白百合を繊細に編み込んだ白レースのベール、お友だちをたくさん呼んで、幸せいっぱいな笑みを浮かべて、愛の花言葉いっぱいの可愛らしいお花でブーケトスをして………、旦那さまにどろっどろに甘やかされて、愛されて、そうしてみんなにこう言ってもらうの。
綺麗な花嫁さんね、
幸せいっぱいの花嫁さんねって。
そのはずだったのに………、今わたしが行なっている結婚式は何?
既製品のエンパイアラインの黒いドレスに、薔薇を編み込んだ黒レースのベール、お友だちは誰も参列していなくて、それどころか家族の表情はお葬式。わたしが握っているお花は漆黒の薔薇でブーケトスをする相手なんていない。
しかも、旦那さまとなる男性はわたしのことを親の仇の如く睨みつけてきている。
女神さまに永遠の愛を誓うはずの教会の女神さまの像の目前で、神父さまの目前で、旦那さまはその完璧と言わざるを得ない造形のお口を開いてバリトンボイスを響かせる。
「お前を愛することはない」
「っ、」
ねぇ、こんな結婚なんて信じられる?
ねぇ、こんな結婚なんて耐えられる?
わたしは怒りに震えるてで黒薔薇をぐしゃっと握り込んで、にっこりと笑ってやる。こんな男とまともな結婚を夢見たわたしがバカだった。
「えぇ。………あなたを愛することなって、たとえ天変地異が起ころうともあり得ませんわ、“旦那さま”」
嫌悪感たっぷりでわたしのことに触れようともしない新郎の言葉に、神父さまはおろおろと怯えている。
この国で最も地位の高い貴族家アーデルハイト公爵家の当主にして、王弟殿下であらせられるエドワード・アーデルハイトさま。
わたしの旦那さま。
わたしはこの男が大嫌いだ。
けれど、わたしはこの日、この瞬間、この男と婚姻を結んだ。
女の子ならば誰もが夢見るであろう誓いのキスも、指輪の交換もなかった。
あったのはたった1枚の紙切れに綴った———誓約だった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
最後までお楽しみいただけると嬉しいです!!
今日は10分おきに3話まで更新後、9時に4話を更新し、21時まで1時間おきに更新します!!
明日は8時から21時まで1時間おきに更新します。
わたし、オードリー・アイリーンは今日結婚する。
お相手は女嫌いと有名な公爵さま。
結婚が決まったのはたった1週間前で、参列者はお父さまとお母さまと小さい弟、あとは相手方の従者さんだけ。
寂しい寂しい結婚式。
結婚なんか絶対しないって公言していたわたしにも、結婚式に対する願望ぐらいはあった。真っ白なトレーンの長いドレスや白百合を繊細に編み込んだ白レースのベール、お友だちをたくさん呼んで、幸せいっぱいな笑みを浮かべて、愛の花言葉いっぱいの可愛らしいお花でブーケトスをして………、旦那さまにどろっどろに甘やかされて、愛されて、そうしてみんなにこう言ってもらうの。
綺麗な花嫁さんね、
幸せいっぱいの花嫁さんねって。
そのはずだったのに………、今わたしが行なっている結婚式は何?
既製品のエンパイアラインの黒いドレスに、薔薇を編み込んだ黒レースのベール、お友だちは誰も参列していなくて、それどころか家族の表情はお葬式。わたしが握っているお花は漆黒の薔薇でブーケトスをする相手なんていない。
しかも、旦那さまとなる男性はわたしのことを親の仇の如く睨みつけてきている。
女神さまに永遠の愛を誓うはずの教会の女神さまの像の目前で、神父さまの目前で、旦那さまはその完璧と言わざるを得ない造形のお口を開いてバリトンボイスを響かせる。
「お前を愛することはない」
「っ、」
ねぇ、こんな結婚なんて信じられる?
ねぇ、こんな結婚なんて耐えられる?
わたしは怒りに震えるてで黒薔薇をぐしゃっと握り込んで、にっこりと笑ってやる。こんな男とまともな結婚を夢見たわたしがバカだった。
「えぇ。………あなたを愛することなって、たとえ天変地異が起ころうともあり得ませんわ、“旦那さま”」
嫌悪感たっぷりでわたしのことに触れようともしない新郎の言葉に、神父さまはおろおろと怯えている。
この国で最も地位の高い貴族家アーデルハイト公爵家の当主にして、王弟殿下であらせられるエドワード・アーデルハイトさま。
わたしの旦那さま。
わたしはこの男が大嫌いだ。
けれど、わたしはこの日、この瞬間、この男と婚姻を結んだ。
女の子ならば誰もが夢見るであろう誓いのキスも、指輪の交換もなかった。
あったのはたった1枚の紙切れに綴った———誓約だった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
最後までお楽しみいただけると嬉しいです!!
今日は10分おきに3話まで更新後、9時に4話を更新し、21時まで1時間おきに更新します!!
明日は8時から21時まで1時間おきに更新します。
10
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜
長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。
幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。
そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。
けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?!
元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。
他サイトにも投稿しています。
利用されるだけの人生に、さよならを。
ふまさ
恋愛
公爵令嬢のアラーナは、婚約者である第一王子のエイベルと、実妹のアヴリルの不貞行為を目撃してしまう。けれど二人は悪びれるどころか、平然としている。どころか二人の仲は、アラーナの両親も承知していた。
アラーナの努力は、全てアヴリルのためだった。それを理解してしまったアラーナは、糸が切れたように、頑張れなくなってしまう。でも、頑張れないアラーナに、居場所はない。
アラーナは自害を決意し、実行する。だが、それを知った家族の反応は、残酷なものだった。
──しかし。
運命の歯車は確実に、ゆっくりと、狂っていく。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
貴方の子どもじゃありません
初瀬 叶
恋愛
あぁ……どうしてこんなことになってしまったんだろう。
私は眠っている男性を起こさない様に、そっと寝台を降りた。
私が着ていたお仕着せは、乱暴に脱がされたせいでボタンは千切れ、エプロンも破れていた。
私は仕方なくそのお仕着せに袖を通すと、止められなくなったシャツの前を握りしめる様にした。
そして、部屋の扉にそっと手を掛ける。
ドアノブは回る。いつの間にか
鍵は開いていたみたいだ。
私は最後に後ろを振り返った。そこには裸で眠っている男性の胸が上下している事が確認出来る。深い眠りについている様だ。
外はまだ夜中。月明かりだけが差し込むこの部屋は薄暗い。男性の顔ははっきりとは確認出来なかった。
※ 私の頭の中の異世界のお話です
※相変わらずのゆるゆるふわふわ設定です。ご了承下さい
※直接的な性描写等はありませんが、その行為を匂わせる言葉を使う場合があります。苦手な方はそっと閉じて下さると、自衛になるかと思います
※誤字脱字がちりばめられている可能性を否定出来ません。広い心で読んでいただけるとありがたいです
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる