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番外編 ラテの誤算

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 地面にぴちゃりぴちゃりと落ちる唾を呆然と見つめるラテは、唖然とした。

 どう、して………、どうしてお母様は怒っているの?

 わたくしはお母様の望む通り、お姉様のものを奪った。
 お姉様よりも上に立った。

 どうして、お母様は褒めてくださらないの?

「おかあ、」
「触らないでッ!!このドアホッ!!」

 勢い良く手を叩かれたラテの瞳にぶわりと涙の幕が張る。

 ———どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうして………!!

 わたくしはずっとずっと我慢して、我慢して、要らないものでも、欲しくないものでも、嫌いなものでもお母様の言う通りにお姉様から奪ってきたのに、なんで、なんで褒めてくださらないの。罵倒するの………!!

「アハッ、アハハハハッ!!」

 壊れたように空を見上げて高笑いをし始めたカプチーノは、途中パッタリと高笑いをやめ、一瞬だけラテのことを見つめた。

「お前なんか、産まなければよかった」
「え、………、」

 呆然とした声をこぼした次の瞬間、母の喉には尖った石が刺さっていた。
 バタバタっと全身が暴れたと思ったら、ぼたぼたと赤いものが溢れて、そしてビクッと身体が硬くなって地面に崩れ落ちた。

「おかあ、さ………ま?」

 虚な目をして笑っているカプチーノの身体からはとめどなく赤いものが、カプチーノの命がこぼれ落ちて行く。

「あらまぁ、死んじゃったわねぇ」

 妖精という呼び名が思い浮かびそうなほどにふわふわした印象の美女が、カプチーノのそばに座り込みカプチーノの首筋に触れる。

「あぁッ!!なんて美しいの。こんなに温かい死体は久しぶりだわッ!!」

 心の底から嬉しそうに、熱に酔いしれたような声を上げた妖精のような美女は、血溜まりにとっぷりと浸かった血だらけの手を嬉しそうに頬に当て、その凄惨な血濡れを自らの唇に紅のように塗る。
 ほうっと溢れる美しい妖艶な微笑みが、母がもうこの世にいないことを否応なしにラテに伝える。

 わたくし、は、………どこで、………まち、がえたの………?


*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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