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5章 願わくは、愛を
9話 相違点
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「誰の話からすればいいかしら…。私がきちんと覚えていると言った四通りは、その…言いづらいのだけれど…。」
「リリーの恋愛模様とかって言っていたけど、もしかして僕も…?」
「………ええ。リリーが誰とお付き合いしはじめるか、またはお付き合いできないか、でその未来が変わるのだけど…。」
自分たちの恋愛模様を私が知っているなんてどれほど気まずいだろう。
「さっき、十六通りあると言ったでしょう?それはね、五人の男の子の誰かに愛される、嫌われる、友愛で終わる、もしくは全員から愛される、そのいずれかによって結末が変わるのよ。
……その五人というのが…マシューとイリスくん、フレディー様、クリスさん─アズラル帝国のクリストフ殿下、それから、オーリ、なのよ。」
「見事に姉さんの周りの人ばかりだね…。」
「…そうなのよ。」
まぁ私からしたら当然と言えば当然なのだけど。
「ねぇ、あなたたち、自分のあったかもれない恋愛話、聞きたい?」
マシューとオーリに小さく問いかけると、二人とも微妙な顔をする。
「…おおまかな、流れだけでも理解できる?」
「大雑把に言ってしまえば、誰と恋に落ちても流れはたいして変わらないから、なんとかなると思うわ。だいたいは、リリーが皆と出会って、いろんな出来事を経て卒業する。その時点であなた達の誰かと…って感じだから。」
ここには父様もいるし、自分のそんな話、わたくしからなんて聞きたくないだろう。
「じゃあ、今との相違点だけを話してくれるとありがたいな…。」
「分かったわ。
うーん…違う点はたくさんあるけれど、一番は私の存在かしら。わたくしが変わってしまったから、流れもだいぶ変わってしまったのよね。大きな分岐はわたくしが別の人の記憶を持ってしまったことだけれど…。」
きっと伊織がいなければ、わたくしはゲームの中のエリューシアと大差ない人間になっていただろう。
「まずわたくしが起こしてしまった違いから話そうかしら。
小さい頃で言えば、わたくしはオーリを…というか勉学に関する家庭教師を、少なくとも自分からはつけていなかったわ。ああそれと、オーリのことで言えばオーリはわたくし達が二年の時の副担で一年の時は…分からないわね。」
「そうなの!?エル様たちと研究とかしてたおかげかな…。」
オーリのルートは一年の終わりまでに誰のルートにも入らず、かつ一定以上の好感度が必要で大変だって言っていた。一年の時は担任も、教科の担任もオーリではなかったので、二年で副担になったところから話が始まる。生徒と先生の禁断の恋…。
ただこの世界では先生と生徒だから、なんて制約はないけれど。教師にも貴族は多いので先生と生徒が婚約者同士だということも稀だがあり得ることだった。
「それから、わたくしはマシューのことを家族だなんて認めていなかったし大嫌いだったわ。マシューとも呼んでいなかったわね。父様もわたくしを甘やかすだけ甘やかして、わがまま放題にさせていたわ。母様を亡くしたショックからか放任していたみたいね。」
エリューシアの過去は設定書とその特典である冊子で少し触れられていた程度なので確実なことは分からない。
「すまない…。」
「これはわたくしの記憶のことなので父様が誤る必要はありませんよ。今、この現実ではそんなことないから安心してください。父様も放任していたわけじゃないし、マシューも大切な弟ですわ。」
「僕も姉さん大好きだよ。」
「ふふ、ありがとう。わたくしも大好きよ。」
わたくしの話を聞き謝る父様。でも、この話は今の話じゃない。わたくしだって、もうさすがに理解した。…理性では。ちゃんと本能でまで理解していたらこんなことになっていない。
「えーと、それから、わたくしは魔導院に入りません。白翼狼のウィトラス様もあの時期に姿を現さなくて…記憶の中では今くらいの時期だったかしら?助けたのはわたくしじゃなくてリリーだったわ。
あの時はわたくしでもどうにかなって良かった。ブランシュも預かることはなかったの。わたくしも、リリーも。リリーとその時の相手と二人で森にはよく遊びに行っていたみたいだけど。」
「え?あの時、大丈夫って…。何か確証があったから行ったんじゃなかったの!?」
オーリが驚いたように声をあげる。
彼はあの時何歳だったか…。わたくしが言った言葉を覚えていたのね…。
「ああ、まぁ…わたくしが大丈夫っていう確証はなかったわねぇ…。光の精霊加護を持っている彼女だったからこそ無事だった、という可能性もあったし。わたくしが知っていたのはウィトラス様があんなとこまで来て暴れていた理由…いや、それも時系列が狂っていたから合っているかは分からなかったわね…?」
「無茶をするなとあれほど…っ!」
「だ、だって!」
そういえばあの時は皆を守ることに必死だったし大丈夫って言い聞かせてたっけ。まぁあの時はあの選択が最善だったと思うし…。ブランシュに久しぶりに会いたいわ…。
「と、とりあえずあの時はどうにかなったからいいのよ。
あと違ったのは、わたくしとイリスくんが誘拐されたこととか…。フレディー様が魔導院の見学に来るなんて状況にもなってなかったはず…?あ、魔法もそうね。記憶の知識をもとに魔法を作ったり…。」
あれこれとエリューシアとわたくしの記憶を遡り違う点を探していく。
わたくしが忘れているだけで本当はもっとあるだろう。
「僕、頭痛がしてきたよ…。」
「ああ、俺もだ…。」
なにかを呟き頭を抱える二人を遠い目で見つめるオーリ。よく分からない反応をする皆を横目に話を続ける。
「それから…決定的に違うのはわたくしと周囲の仲、ね。わたくしは皆に嫌われていたわ。この皆というのはあなた達含め周囲のほぼすべての人ね。」
「リリーの恋愛模様とかって言っていたけど、もしかして僕も…?」
「………ええ。リリーが誰とお付き合いしはじめるか、またはお付き合いできないか、でその未来が変わるのだけど…。」
自分たちの恋愛模様を私が知っているなんてどれほど気まずいだろう。
「さっき、十六通りあると言ったでしょう?それはね、五人の男の子の誰かに愛される、嫌われる、友愛で終わる、もしくは全員から愛される、そのいずれかによって結末が変わるのよ。
……その五人というのが…マシューとイリスくん、フレディー様、クリスさん─アズラル帝国のクリストフ殿下、それから、オーリ、なのよ。」
「見事に姉さんの周りの人ばかりだね…。」
「…そうなのよ。」
まぁ私からしたら当然と言えば当然なのだけど。
「ねぇ、あなたたち、自分のあったかもれない恋愛話、聞きたい?」
マシューとオーリに小さく問いかけると、二人とも微妙な顔をする。
「…おおまかな、流れだけでも理解できる?」
「大雑把に言ってしまえば、誰と恋に落ちても流れはたいして変わらないから、なんとかなると思うわ。だいたいは、リリーが皆と出会って、いろんな出来事を経て卒業する。その時点であなた達の誰かと…って感じだから。」
ここには父様もいるし、自分のそんな話、わたくしからなんて聞きたくないだろう。
「じゃあ、今との相違点だけを話してくれるとありがたいな…。」
「分かったわ。
うーん…違う点はたくさんあるけれど、一番は私の存在かしら。わたくしが変わってしまったから、流れもだいぶ変わってしまったのよね。大きな分岐はわたくしが別の人の記憶を持ってしまったことだけれど…。」
きっと伊織がいなければ、わたくしはゲームの中のエリューシアと大差ない人間になっていただろう。
「まずわたくしが起こしてしまった違いから話そうかしら。
小さい頃で言えば、わたくしはオーリを…というか勉学に関する家庭教師を、少なくとも自分からはつけていなかったわ。ああそれと、オーリのことで言えばオーリはわたくし達が二年の時の副担で一年の時は…分からないわね。」
「そうなの!?エル様たちと研究とかしてたおかげかな…。」
オーリのルートは一年の終わりまでに誰のルートにも入らず、かつ一定以上の好感度が必要で大変だって言っていた。一年の時は担任も、教科の担任もオーリではなかったので、二年で副担になったところから話が始まる。生徒と先生の禁断の恋…。
ただこの世界では先生と生徒だから、なんて制約はないけれど。教師にも貴族は多いので先生と生徒が婚約者同士だということも稀だがあり得ることだった。
「それから、わたくしはマシューのことを家族だなんて認めていなかったし大嫌いだったわ。マシューとも呼んでいなかったわね。父様もわたくしを甘やかすだけ甘やかして、わがまま放題にさせていたわ。母様を亡くしたショックからか放任していたみたいね。」
エリューシアの過去は設定書とその特典である冊子で少し触れられていた程度なので確実なことは分からない。
「すまない…。」
「これはわたくしの記憶のことなので父様が誤る必要はありませんよ。今、この現実ではそんなことないから安心してください。父様も放任していたわけじゃないし、マシューも大切な弟ですわ。」
「僕も姉さん大好きだよ。」
「ふふ、ありがとう。わたくしも大好きよ。」
わたくしの話を聞き謝る父様。でも、この話は今の話じゃない。わたくしだって、もうさすがに理解した。…理性では。ちゃんと本能でまで理解していたらこんなことになっていない。
「えーと、それから、わたくしは魔導院に入りません。白翼狼のウィトラス様もあの時期に姿を現さなくて…記憶の中では今くらいの時期だったかしら?助けたのはわたくしじゃなくてリリーだったわ。
あの時はわたくしでもどうにかなって良かった。ブランシュも預かることはなかったの。わたくしも、リリーも。リリーとその時の相手と二人で森にはよく遊びに行っていたみたいだけど。」
「え?あの時、大丈夫って…。何か確証があったから行ったんじゃなかったの!?」
オーリが驚いたように声をあげる。
彼はあの時何歳だったか…。わたくしが言った言葉を覚えていたのね…。
「ああ、まぁ…わたくしが大丈夫っていう確証はなかったわねぇ…。光の精霊加護を持っている彼女だったからこそ無事だった、という可能性もあったし。わたくしが知っていたのはウィトラス様があんなとこまで来て暴れていた理由…いや、それも時系列が狂っていたから合っているかは分からなかったわね…?」
「無茶をするなとあれほど…っ!」
「だ、だって!」
そういえばあの時は皆を守ることに必死だったし大丈夫って言い聞かせてたっけ。まぁあの時はあの選択が最善だったと思うし…。ブランシュに久しぶりに会いたいわ…。
「と、とりあえずあの時はどうにかなったからいいのよ。
あと違ったのは、わたくしとイリスくんが誘拐されたこととか…。フレディー様が魔導院の見学に来るなんて状況にもなってなかったはず…?あ、魔法もそうね。記憶の知識をもとに魔法を作ったり…。」
あれこれとエリューシアとわたくしの記憶を遡り違う点を探していく。
わたくしが忘れているだけで本当はもっとあるだろう。
「僕、頭痛がしてきたよ…。」
「ああ、俺もだ…。」
なにかを呟き頭を抱える二人を遠い目で見つめるオーリ。よく分からない反応をする皆を横目に話を続ける。
「それから…決定的に違うのはわたくしと周囲の仲、ね。わたくしは皆に嫌われていたわ。この皆というのはあなた達含め周囲のほぼすべての人ね。」
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