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最終章
第五十八話 おとぎ話の結末(7)
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◆◆◆
「!」
発砲音と同時にシャロンは目を見開いていた。
弾を外されたからだ。
腕を伸ばしても銃口に触れるのがやっと、それはその通りであった。
ゆえにオレグは銃口を下から二本の指でつまみ、斜め上に押し上げたのだ。
しかしそれだけでは射線を外すことは出来なかった。
だからオレグはその手から魔力を放出した。
光弾で銃口を塞ごうとするかのように。
そしてそのタイミングは完璧であった。
相手の心を一方的に読める、その差がはっきりとその瞬間に現れた。
光弾の中を通す、それでは駄目だからだ。
光の粒子で弾を下から押し上げなくてはならないからだ。
光弾の中を通過させると上下左右全方向から不規則にエネルギーが加わってしまう。
ゆえに、オレグはシャロンが電撃魔法を発動させたのに合わせて魔力を放出した。
それによって弾丸の軌道はさらに上にそらされ、オレグの首の横を通過するだけで終わった。
銃口に輝く手を添えた、たったその一動作だけでオレグは弾丸から身を守ったのだ。
しかしその見事な防御を称賛する余裕はシャロンには無かった。
驚くシャロンにオレグが踏み込みながら反撃の拳を繰り出す。
その一撃をシャロンは輝く手を後ろにそえた銃身で受け止めたのだが、
「っ!?」
銃はへし折れ、生まれ始めたばかりの輝く盾も突き破られた。
拳が胸に、心臓のある位置に食い込む。
「ぁうっ?!」
胸骨がへし折れた痛みと、想像を超えた威力に悲鳴を漏らすシャロン。
後ろに跳び逃げながら受けてこの威力、立ち止まっていたら間違いなく即死の一撃だった。
だがオレグとの距離はあまり離れていない。
追いかけてきている。追撃を入れようとしている。
ゆえにシャロンは、
(疾ッ!)
心の気勢と共に、腰の得物を抜き放った。
横一閃。針をただの鈍器としたなぎ払い。
だが、その反撃はいとも簡単げに叩き払われた。
そして同時に、オレグの心の声が響いた。
やはりあの時のお前なのか? と。
「……っ」
シャロンは答えない。答える義理も余裕も無い。
そしてオレグにも答えを待つつもりは無かった。
シャロンの心臓に狙いを再び定めながら、脇の下に拳を構える。
が、次の瞬間、
「斬!」
沈黙する二人の間に別の声が、雲水の気勢が割り込んだ。
オレグの真横から居合で一閃。
しかしこれもオレグは簡単げに防御。
(これは――)
予想以上に手ごわい。手ごたえからそれを確認した雲水は即座に刃を切り返し、次の攻撃動作に入ろうとした。
だがオレグが反撃の動作に入るほうが速い。
それは雲水には分かっていたことだった。
だから保険を用意しておいた。
その保険は次の瞬間に雲水の真後ろから上に飛び現れた。
雲水の背と肩を踏み台にし、オレグの真上を飛び越えるような軌道で跳躍した影。
雲水の部下であるその忍者は空中で逆立ちするように体を前に回転させ、オレグの頭上から矢を放とうとした。
が、
「!?」
直後、視界を埋め尽くす勢いで迫ってきたオレグの姿に、忍びは目を見開いた。
忍びに向かって体当たりするようにオレグも跳躍したのだ。
そしてオレグは下に向き始めた忍者の顔面を突き上げるように、飛び上がりの勢いを乗せて、
「うげっ!」
拳を振り上げた。
忍者の首と顔面があってはならない方向に捻じ曲がる。
そしてオレグはその死体となったばかりの忍びの体を掴み、
「むんっ!」
下で構えている雲水に向かって投げつけた。
既に「ある技」の初動に入っていたがゆえに雲水はそれを避けられなかった。
「っ!」
為す術無くぶつかり合い、なぎ倒される。
せっかく準備した技が、いやそれよりも倒されたこの状況は非常に良くない――そんな思いが雲水の水面に焦りの色を滲ませたが、
「雄ォッ!」
その色は直後に響いたバージルの気勢に吹き飛ばされた。
飛び上がったオレグの真下に潜り込むように踏み込んできたバージルは、その落下の隙に対し、
「でぇやっ!」
オレグの股下から脳天に向かって裂くように、両手で握った輝く槍斧を振り上げた。
その無骨な刃を迎え撃つは、
「疾ィっや!」
オレグの横回し蹴り。
双方の攻撃の軌跡が光の十字を描くようにぶつかり合う。
瞬間、
「っ?!」
衝撃と共に痛みが生じたのはバージルのほうだけであった。
激痛に震えた心が刹那遅れて驚きに塗りつぶされる。
それはバージルにとって初めての経験であった。
ぶつかり合いの衝撃で右腕がへし折れた、豪腕と自負しているそれが一方的に、そんな思いが脳裏に浮かび始めたが、言葉として完成するよりも早く、
「ぐぁっは!」
同じ軌道の攻撃が、オレグの放った連続回し蹴りがバージルの体を肩からなぎ払った。
「!」
発砲音と同時にシャロンは目を見開いていた。
弾を外されたからだ。
腕を伸ばしても銃口に触れるのがやっと、それはその通りであった。
ゆえにオレグは銃口を下から二本の指でつまみ、斜め上に押し上げたのだ。
しかしそれだけでは射線を外すことは出来なかった。
だからオレグはその手から魔力を放出した。
光弾で銃口を塞ごうとするかのように。
そしてそのタイミングは完璧であった。
相手の心を一方的に読める、その差がはっきりとその瞬間に現れた。
光弾の中を通す、それでは駄目だからだ。
光の粒子で弾を下から押し上げなくてはならないからだ。
光弾の中を通過させると上下左右全方向から不規則にエネルギーが加わってしまう。
ゆえに、オレグはシャロンが電撃魔法を発動させたのに合わせて魔力を放出した。
それによって弾丸の軌道はさらに上にそらされ、オレグの首の横を通過するだけで終わった。
銃口に輝く手を添えた、たったその一動作だけでオレグは弾丸から身を守ったのだ。
しかしその見事な防御を称賛する余裕はシャロンには無かった。
驚くシャロンにオレグが踏み込みながら反撃の拳を繰り出す。
その一撃をシャロンは輝く手を後ろにそえた銃身で受け止めたのだが、
「っ!?」
銃はへし折れ、生まれ始めたばかりの輝く盾も突き破られた。
拳が胸に、心臓のある位置に食い込む。
「ぁうっ?!」
胸骨がへし折れた痛みと、想像を超えた威力に悲鳴を漏らすシャロン。
後ろに跳び逃げながら受けてこの威力、立ち止まっていたら間違いなく即死の一撃だった。
だがオレグとの距離はあまり離れていない。
追いかけてきている。追撃を入れようとしている。
ゆえにシャロンは、
(疾ッ!)
心の気勢と共に、腰の得物を抜き放った。
横一閃。針をただの鈍器としたなぎ払い。
だが、その反撃はいとも簡単げに叩き払われた。
そして同時に、オレグの心の声が響いた。
やはりあの時のお前なのか? と。
「……っ」
シャロンは答えない。答える義理も余裕も無い。
そしてオレグにも答えを待つつもりは無かった。
シャロンの心臓に狙いを再び定めながら、脇の下に拳を構える。
が、次の瞬間、
「斬!」
沈黙する二人の間に別の声が、雲水の気勢が割り込んだ。
オレグの真横から居合で一閃。
しかしこれもオレグは簡単げに防御。
(これは――)
予想以上に手ごわい。手ごたえからそれを確認した雲水は即座に刃を切り返し、次の攻撃動作に入ろうとした。
だがオレグが反撃の動作に入るほうが速い。
それは雲水には分かっていたことだった。
だから保険を用意しておいた。
その保険は次の瞬間に雲水の真後ろから上に飛び現れた。
雲水の背と肩を踏み台にし、オレグの真上を飛び越えるような軌道で跳躍した影。
雲水の部下であるその忍者は空中で逆立ちするように体を前に回転させ、オレグの頭上から矢を放とうとした。
が、
「!?」
直後、視界を埋め尽くす勢いで迫ってきたオレグの姿に、忍びは目を見開いた。
忍びに向かって体当たりするようにオレグも跳躍したのだ。
そしてオレグは下に向き始めた忍者の顔面を突き上げるように、飛び上がりの勢いを乗せて、
「うげっ!」
拳を振り上げた。
忍者の首と顔面があってはならない方向に捻じ曲がる。
そしてオレグはその死体となったばかりの忍びの体を掴み、
「むんっ!」
下で構えている雲水に向かって投げつけた。
既に「ある技」の初動に入っていたがゆえに雲水はそれを避けられなかった。
「っ!」
為す術無くぶつかり合い、なぎ倒される。
せっかく準備した技が、いやそれよりも倒されたこの状況は非常に良くない――そんな思いが雲水の水面に焦りの色を滲ませたが、
「雄ォッ!」
その色は直後に響いたバージルの気勢に吹き飛ばされた。
飛び上がったオレグの真下に潜り込むように踏み込んできたバージルは、その落下の隙に対し、
「でぇやっ!」
オレグの股下から脳天に向かって裂くように、両手で握った輝く槍斧を振り上げた。
その無骨な刃を迎え撃つは、
「疾ィっや!」
オレグの横回し蹴り。
双方の攻撃の軌跡が光の十字を描くようにぶつかり合う。
瞬間、
「っ?!」
衝撃と共に痛みが生じたのはバージルのほうだけであった。
激痛に震えた心が刹那遅れて驚きに塗りつぶされる。
それはバージルにとって初めての経験であった。
ぶつかり合いの衝撃で右腕がへし折れた、豪腕と自負しているそれが一方的に、そんな思いが脳裏に浮かび始めたが、言葉として完成するよりも早く、
「ぐぁっは!」
同じ軌道の攻撃が、オレグの放った連続回し蹴りがバージルの体を肩からなぎ払った。
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