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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に

第四十一話 三つ葉葵の男(15)

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   ◆◆◆

「言わずとも分かっているだろうが、これだけではただの博打技に過ぎぬ。これはあくまで、最後の手段として覚えておけ」

 あの時、師はそう言った。

「……でしょうな」

 雲水もそれを理解していた。ゆえに雲水はそれ以上何も言わなかった。

「……」

 そして師も、そこで言葉を一度止めた。
 師が再びその技について口を開いたのは、次の日のことだ。
 雲水は知識として学んだその技を実際に使って試してみた。
 しかしその時は上手くいかなかった。みっともなく何度も転んだ。
 それを見ていた師が声をかけてきたのだ。

「気にするでない、雲水。それは誰が使ってもそうなるものだ」

 分かっていたが雲水はその言葉を素直に飲み込めなかった。
 何かいい使い道がある、欠点を補う工夫がどこかにあるはずだ、雲水はそう考えていた。
 その熱意を師は察し、口を開いた。

「……その技は非常に難しい。ゆえに博打技だと言われており、伝承すべき技として定められていない」

 そう言う師の瞳には励ましの色が滲んでいたが、期待感の色の方が明らかに濃かった。
 だから師は次のように言葉を続けた。

「しかしそれはその技に対して研鑽を重ねた者がいないからだ。儂はお前に期待している。だから教えたのだ。失敗など気にせず、好きに励むがよい」

 その言葉に、雲水は素直に喜んだ。
 が、直後に師の口から出た言葉は、その感情を難しくするものであった。

「だがな……儂個人の感情を言わせてもらえば、お前がこの技に頼るような事態は来ないでほしいと思っておるよ」

   ◆◆◆

 それから、雲水は師の期待通り研鑽を重ねた。
 が、雲水が思っていたほどの成果は出なかった。
 なのに、この技に頼らざるを得なくなった。
 だから雲水は言葉に謝罪の念を込めた。
 未熟な自分をお許し下さい、と。
 そしてその言葉は思いと共に女の心に響いた。

“奥義、無形(むけい)”と。
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