雪山のペンションで、あなたひとり

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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Ep4 真相の章(5)

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 靴下一枚で友人と共に吹雪の中を駆ける。
 途中、雪の坂で滑り転げそうになりながらも、車のところに辿り着く。

「乗れ!」

 言われるまでもなく友人と同時に乗り込む。
 間も無く発進する車。
 こうなったらもうこっちのもの、安心だ、あなたはそう思ったのだが、

「!」

 瞬間、後ろから響いたエンジン音に、あなたは振り返った。
 すると、吹雪の中に車のヘッドライトが眩しく光り始めたのが見えた。
 追いかけてきている、あなたがそう叫ぶと、友人は「わかってる!」と答えた。
 アクセルを踏む友人の足に力が入る。
 しかし無茶は出来ない。あたりは一面銀世界で、しかも山道なのだから。
 それでも、やはり普段よりもスピードが出ている。
 カーブを曲がるたびに、後輪がすべっているのを感じる。
 その吐き気をもよおす感覚の中で、あなたは携帯で警察に連絡を取った。

“はい、こちら――”

 応対に出た女性警官に対し、状況を説明する。
 上手く説明出来ていたのかどうかはこの時のあなたには分からなかった。何回か噛んだことだけは分かった。
 車が激しく揺れるせいでますます舌が上手く回らない。
 そうこうしているうちに、車はヘアピンのような急カーブの手前にさしかかった。
 友人がブレーキを深く踏み込み、車を大きく減速させる。
 そうしないと曲がれない。
 そのはずなのだが、

「!?」

 後方から追って来るヘッドランプにはその気配が見られなかった。
 まさか、脳裏に浮かんだ言葉をあなたは声に出そうとしたが、それよりも早く友人が咲きに叫んだ。

「ぶつけてくるぞ!」

 友人のその警告とほぼ同時に、車は衝撃に包まれた。
 道から押し出され、斜面に乗り上げる。
 友人はその滑る坂の上で必死にハンドルを左右に切り、迫る木々を上手く避けていったが、

「「!?」」

 直後のそれはどうにもならなかった。
 二人の体は同時に浮遊感に包まれた。
 崖の上に飛び出したのだ。
 そのあとは、ただ祈ることしか出来なかった。
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