19 / 55
Ep1 あなたひとりの章(19)
しおりを挟む
が、直後、
「?!」
状況は再び変化した。
それは二階からだった。
携帯の着信音が鳴り響き始めたのだ。
そしてそれは友人からのものだと、あなたは一瞬で判断できた。
かけてきた相手によって着信音を変えているからだ。
友人は無事なのか?! あなたはそう思った。
こちらを心配して逆にかけてきてくれたのだろうか、そう思った。
「……」
その思考が勇気になったのか、あなたは自然と移動を開始した。
階段に足を乗せ、ゆっくりと体重をかける。
軋みを足裏で感じる。
だが、その音は小さい。狙い通り窓の音にまぎれてくれている。かすかに自分の耳に聞こえるほどだ。
これならいける、そう思ったあなたは次の足を出した。
「っ!」
瞬間、ギシリ、という音にあなたの意識は硬直した。
先と同じようにゆっくりと体重をかけたのに、こいつは大きな音を出した。
当たり前だ。全ての段の質が同じであるわけがない。
だが、そう分かっていても、あなたは心の中で「もうやめてほしい」と願った。
祈りながら次の足を出す。
今度は成功。
そして次の段へ、
五段目、六段目と進んでいく。
その進みはまるで牛歩のよう。
二階が恐ろしく遠くに感じる。神経がすりへるのを感じる。
それでもあなたは先の一回以外に目立った失敗をせず、登りきった。
体が汗をかいているのを感じる。たったこれだけのことでだ。
あなたはその汗が背中の上を流れていくのを感じながら、突きあたりにある自分の客室にゆっくりと向かった。
「?!」
状況は再び変化した。
それは二階からだった。
携帯の着信音が鳴り響き始めたのだ。
そしてそれは友人からのものだと、あなたは一瞬で判断できた。
かけてきた相手によって着信音を変えているからだ。
友人は無事なのか?! あなたはそう思った。
こちらを心配して逆にかけてきてくれたのだろうか、そう思った。
「……」
その思考が勇気になったのか、あなたは自然と移動を開始した。
階段に足を乗せ、ゆっくりと体重をかける。
軋みを足裏で感じる。
だが、その音は小さい。狙い通り窓の音にまぎれてくれている。かすかに自分の耳に聞こえるほどだ。
これならいける、そう思ったあなたは次の足を出した。
「っ!」
瞬間、ギシリ、という音にあなたの意識は硬直した。
先と同じようにゆっくりと体重をかけたのに、こいつは大きな音を出した。
当たり前だ。全ての段の質が同じであるわけがない。
だが、そう分かっていても、あなたは心の中で「もうやめてほしい」と願った。
祈りながら次の足を出す。
今度は成功。
そして次の段へ、
五段目、六段目と進んでいく。
その進みはまるで牛歩のよう。
二階が恐ろしく遠くに感じる。神経がすりへるのを感じる。
それでもあなたは先の一回以外に目立った失敗をせず、登りきった。
体が汗をかいているのを感じる。たったこれだけのことでだ。
あなたはその汗が背中の上を流れていくのを感じながら、突きあたりにある自分の客室にゆっくりと向かった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
京都裏路地不思議草紙
凪司工房
ホラー
京都という街には一歩入ると狭い路地のずっと奥に暖簾を出しているような古い店がある。これはそういった裏路地の店にやってきたおかしな客と奇妙な店主の不可思議話を集めた短編集である。
アララギ兄妹の現代心霊事件簿【奨励賞大感謝】
鳥谷綾斗(とやあやと)
ホラー
「令和のお化け退治って、そんな感じなの?」
2020年、春。世界中が感染症の危機に晒されていた。
日本の高校生の工藤(くどう)直歩(なほ)は、ある日、弟の歩望(あゆむ)と動画を見ていると怪異に取り憑かれてしまった。
『ぱぱぱぱぱぱ』と鳴き続ける怪異は、どうにかして直歩の家に入り込もうとする。
直歩は同級生、塔(あららぎ)桃吾(とうご)にビデオ通話で助けを求める。
彼は高校生でありながら、心霊現象を調査し、怪異と対峙・退治する〈拝み屋〉だった。
どうにか除霊をお願いするが、感染症のせいで外出できない。
そこで桃吾はなんと〈オンライン除霊〉なるものを提案するが――彼の妹、李夢(りゆ)が反対する。
もしかしてこの兄妹、仲が悪い?
黒髪眼鏡の真面目系男子の高校生兄と最強最恐な武士系ガールの小学生妹が
『現代』にアップグレードした怪異と戦う、テンション高めライトホラー!!!
✧
表紙使用イラスト……シルエットメーカーさま、シルエットメーカー2さま
隠せぬ心臓
MPE事業部
ホラー
これは江戸川乱歩の命名の元にもなったアメリカの作家 エドガー アラン ポーの短すぎる短編 The Tell-Tale Heart をわかりやすい日本語に翻訳したものです。
大丈夫おじさん
続
ホラー
『大丈夫おじさん』、という噂を知っているだろうか。
大丈夫おじさんは、夕方から夜の間だけ、困っている子どもの前に現れる。
大丈夫おじさんに困っていることを相談すると、にっこり笑って「大丈夫だよ」と言ってくれる。
すると悩んでいたことは全部きれいに片付いて、本当に大丈夫になる…
子どもに大人気で、けれどすぐに忘れ去られてしまった『大丈夫おじさん』。
でも、わたしは知っている。
『大丈夫おじさん』は、本当にいるんだってことを。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
オーデション〜リリース前
のーまじん
ホラー
50代の池上は、殺虫剤の会社の研究員だった。
早期退職した彼は、昆虫の資料の整理をしながら、日雇いバイトで生計を立てていた。
ある日、派遣先で知り合った元同僚の秋吉に飲みに誘われる。
オーデション
2章 パラサイト
オーデションの主人公 池上は声優秋吉と共に収録のために信州の屋敷に向かう。
そこで、池上はイシスのスカラベを探せと言われるが思案する中、突然やってきた秋吉が100年前の不気味な詩について話し始める
ゴーストバスター幽野怜Ⅱ〜霊王討伐編〜
蜂峰 文助
ホラー
※注意!
この作品は、『ゴーストバスター幽野怜』の続編です!!
『ゴーストバスター幽野怜』⤵︎ ︎
https://www.alphapolis.co.jp/novel/376506010/134920398
上記URLもしくは、上記タグ『ゴーストバスター幽野怜シリーズ』をクリックし、順番通り読んでいただくことをオススメします。
――以下、今作あらすじ――
『ボクと美永さんの二人で――霊王を一体倒します』
ゴーストバスターである幽野怜は、命の恩人である美永姫美を蘇生した条件としてそれを提示した。
条件達成の為、動き始める怜達だったが……
ゴーストバスター『六強』内の、蘇生に反発する二名がその条件達成を拒もうとする。
彼らの目的は――美永姫美の処分。
そして……遂に、『王』が動き出す――
次の敵は『十丿霊王』の一体だ。
恩人の命を賭けた――『霊王』との闘いが始まる!
果たして……美永姫美の運命は?
『霊王討伐編』――開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる