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Ep1 あなたひとりの章(8)

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 それはあなたの好奇心を刺激するに十分なものであった。
 ゆえにあなたがその『いわく』について尋ね返すと、友人は少し嬉しそうに答えた。

「最初は『祟り神(たたりがみ)』だったのさ」

 その内容の不吉さに、あなたの好奇心は一気に引いたが、友人はその口を止めなかった。

「もともとは夜に一人で留守番している人間に災いをもたらす神様だったんだよ」

 ろくでもないなあ、というのが第一印象だった。
 しかしそれ以上では無かった。次の言葉を聞くまでは。

「帰ってくると、留守番していた人が謎の変死を遂げていたりしてな。酷い時は引き裂かれてバラバラにされてることもあった。まあ、後者はクマの仕業ではないかと言われてるが」

 ろくでもないどころでは無かった。恐怖でしか無かった。バラバラ死体だって?
 とんでもない神様だなと、あなたは文句を言おうとしたが、友人は先に言葉を続けた。

「だからこの地方の人達はそれをやめてもらうように、災いを鎮めるために祭ったのさ。それが続いて今では留守番の守り神になっている」

 人を殺してたやつが祭られて、ちやほやされて守り神に転職? ちょっと受け入れられないなあ、とあなたは思った。
 その思いを察したのか、友人はさらに言葉を重ねた。

「でもこの神様はやっぱりちょっと気難しい神様みたいでな、罰当たりなことをすると、容赦無く祟ってくるらしい」
「……」

 その言葉に、あなたは何も言えなかった。
 本当にろくでもないな、とは思った。
 そしてあなたの沈黙に対し言いすぎたと思ったのか、友人はこの話を次の一言で終えることにした。

「地方にはこの手の話を本気で信じていて、神経質な人がいるから気をつけろよ?」

 オーナーもその一人だ、とは言わなかったが、これだけ立派な神棚をあちこちに置いているのだからつまりはそういうことなのだと、友人は忠告していることにあなたは気付いた。
 だからあなたはそれ以上何も言わなかった。
 代わりに「うん」と頷きを返すと、友人は話題を当初の目的のものに戻した。

「じゃあ、俺はちょっとオーナーに聞いてみるよ」

 そして友人はあなたに背を向け、自身ありげな足取りで廊下の奥に消えていった。
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