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第四話 わたしのツンが消える時(4)
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「……」
道中、わたしはあまり喋れなかった。相槌を打つのが精一杯だった。
緊張のせいだ。
わたしはドキドキしたまま商店街を歩いた。
彼と遊びに行く時によく通る道だ。
商店街はクリスマス仕様になっていた。
看板やあちこちにクリスマス特有の電飾が張り巡らされている。
様々な色の小さな光が目に心地良い。
その鮮やかさとにぎやかさはわたしの緊張を少しとかしてくれた。
そして気付けば、わたしは懐かしい場所に連れてこられていた。
「そこのベンチに座ろう」
そこは昔よく一緒に遊んでいた公園だった。
寒さのせいか、公園で遊んでいるものは誰もいなかった。
彼と並んでベンチに腰掛ける。
そして彼は口を開いた。
「むかしここでよく一緒に遊んだよな」
わたしが「そうだね」と答えると、彼は言葉を続けた。
「俺は君に守られてばかりだった。最初はそれでいいと思った。でも、学校でバカにされたことで俺は変わろうと思った。男らしくなろうと思った。そのために君から離れた」
そういう理由だったんだと、わたしは声を上げそうになった。
声を上げなかったのは、今まで悩んでいたのがバカらしく思えてきたからだ。
そして彼の言葉には続きがあることがわかっていたからだ。
「そしてずうずうしいことに、俺はかわいくなった君とまた昔のような関係に戻りたいと思った」
かわいくなった、その言葉は普通に嬉しかった。あの努力は無駄では無かったのだ。
そして彼はとうとう本題に入った。
「でもそれじゃ満足できなくなった。やっぱり友達じゃダメなんだ」
そして彼はその言葉を口にした。
「好きだ。アサヒナさん、俺と付き合ってくれ」
その告白に、わたしは、
「……うん。いいよ」
素直に応えた。
その日の夜、わたしはドキドキしたまま床についた。
これからどうなるんだろう、そんなことを想像して悶々とした。抱き枕に抱きついたまま、ベッドの上で何度も寝転がった。
そしてあのモヤモヤもいつの間にか消えていた。
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