らぶこめ！ わたしのツンが消える時

第二話 夏だから気前よく大胆に(2)

　　　◆◆◆

　その変化にわたしは驚かされた。
　ちょっと遅めの高校デビューと呼ぶのが適切だろうか。それぐらい彼は変わった。
　そしてわたしは焦った。
　なぜなら、

「あの子、変わったね～」
「遊びに誘ったらきてくれるかな？」

　部活内での女子先輩からの評価が上がったからだ。
　まだ耳にはしていないが、部活外の女子からの評価も同じであるはず。誰から見てもあれは悪く無い。
　しかし髪にちょっと手を加えるだけでああも変わるものなのか。ちょっとぼーっとした感じだったのが、ある日突然さわやか系になったのだから。
　もともと顔は悪く無いのだからなおさらだ。
　そしてわたしは焦ったあとにモヤモヤした。
　なぜなら、先輩と同じように彼の変化を褒めてあげることができなかったからだ。
　本当に素直じゃない。本当にバカだと思う。

　そして夏に入ったころ、わたしの焦りは現実のものになった。
　彼が告白されたのだ。
　部活の先輩じゃない。同学年の子からだ。
　その子のことはよく知らないけれど、悪い子には見えなかった。
　だけど彼は断った。
　どういう理由で断ったのかは分からない。その部分はウワサにもならなかった。
　わたしはホッとした。
　なんでホッとしたのか、その時のわたしは深く考えなかった。わざとそうした。

　　　◆◆◆

　夏休みに入るころには、彼女の心の壁が想像以上に堅いことを思い知らされていた。
　部活仲間という口実が無ければ話も出来ない、そんな関係。
　それはイヤだった。
　そして向こうから歩み寄ってくる可能性はほとんど無いことは分かっていた。
　だから俺には自分から迫るしか選択肢が無かった。
　まずは仲の良い幼馴染を目指す、そう思って行動に移した。