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中等部編

第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外のry(10)

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 精霊の剣と共に一斉に斬りかかる。
 十本の剣が縦横無尽に走る。光の線が幾重にも重なる。
 うわーすごい。エッジくんの姿がよく見えなくなるくらい光の線が重なってる。触手を器用に使ってガードしてるエッジくんもすごいけど。
 あ、でも、エッジくん少しずつ押されてる。このままいけば勝てそう。もうすぐ壁際だ。
 フェンスを背負ったら一気に不利になる。だから、エッジくんは追い詰められる直前に上へ高く跳んで逃げた。
 見上げるお姉ちゃんと、フェンスにはりついたエッジくんの視線が重なる。
 フェンスを蹴って体当たりの要領で突っ込んでくる気だ。わたしはそう感じ取れた。お姉ちゃんもそう思った。
 だけど違った。
 感知が外れたわけじゃない。直前でエッジくんは思考を切り替えたのだ。
 エッジくんは反対側のフェンスに激突する勢いでわたしの頭上を飛び越えていった。
 上手い。逃げられた。裏の選択肢となるもう一つの思考を隠しておいて、直前で切り替える、そんなテクニックもあるのかあ。勉強になるなあ。
 距離を取り直して仕切り直し、そうなったのと同時にエッジくんは言った。

「なるほど。もう手加減は必要ないみたいだな」

 そう言うと同時に、今度はエッジくんからしかけてきた。
 鋭く踏み込んでくると同時にパンチの連打!
 軌道はフックやショートアッパーなど、曲線ばかり。触手を振り回すためだろう。
 拳が描く光る曲線と、ムチのようにしなる触手の黒い曲線は同時に襲いかかってくる。白と黒のコントラストがちょっとキレイだ。
 いやいや、そんなことに感動してる場合じゃない。いろいろとバチバチしてますよ! 魔力のぶつかり合いが激しすぎて、白い雷があちこちに走ってる! これは止めないとマズいのでは?
 チラリと審判のほうに意識を向ける。
 しかし止めてくれる気配は無い。仕事して?

「うおおおおおぉっ!」

 ほら、エッジくん興奮のあまり叫んじゃってるし。はやく止めて? もしもーし!
 うわ、エッジくんの気迫が心にびりびりと伝わってくる。はわわわ、これは本当にマズい――

「「っ!」」

 瞬間、閃光と共に走った痛みに、わたしとお姉ちゃんの意識は同じように揺らいだ。
 エッジくんのパンチが頬をかすった! それだけですごくイタイ! 直撃したらどうなっちゃうの!? やばたん!
 はわわわ、揺らいだところにしっかりと追撃してきてる! 寸止めだよね! 寸止めしてくれますよね!
 わたしの願いは届かず、直後に閃光と共に衝撃が走った。
 しかし走ったのは顔面にではなく両手にだった。お姉ちゃんのガードが間に合ってくれたのだ。
 そして鈍い衝撃がもう一つあった。左足だ。お姉ちゃんはガードしながら蹴ったのだ。
 お互いによろめき、距離が再び離れる。
 ふう、試合を止めるには良いタイミングですね。二人とも、一度落ち着きましょう!
 わたしはそう願ったのだけど、この願いも届かなかった。
 先に動いたのはお姉ちゃんだった。
 宙を舞う精霊の剣が次々と合体し、大きな二本の剣となる。
 え? これはまさか? ダメだよ! お姉ちゃん、これはシャレにならないよ!
 もしもーし! ダメだ! このお姉ちゃん言うことをきいてくれない! エッジくん逃げて!
 わたしはそう心の声を響かせたのだが、エッジくんはわたしのお願いとは真逆の動作をした。
 エッジくんは構え、そして叫んだ。

「ダァクネス!」

 その声と共に触手が右腕に集合して巻き付いた。
 その腕から放たれる気配はもう灰色じゃない。言葉通りの黒だ。
 そしてその右腕を引き絞りながら、さらに声を響かせた。

「バァスト!」

 声と共に右腕が燃え上がる。
 はわわわわ! これは! エッジくんも必殺技的なアレを出すつもりだ!
 あわわわわ! マズイマズイマズイ! なんとかして止めないと!
 二人とも落ちついて! どうどう、どうどう、くっくどうどぅるどぅわあああああああ! 何を言ってるんだわたしはあああ!
 落ち着けわたし! 深呼吸! すーはーすーはー、すーはわわわわ! 無理だああああああああああ! だれかたすけてー!
 わたしのテンパりが伝わったのか、リングの外で見ていたおじいちゃんがようやく声を上げてくれた。

「止めろ審判!」

 ありがとうございます! でもちょっと遅すぎた気がします!
 わたしの予想通り、お姉ちゃんとエッジくんは止まらず、直後に二人の叫び声が重なった。

「テンペスタス・ルシス!」
「ファングッ!」
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