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中等部編
第十話 突然のニンジャ!(6)
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目的の美術館は隣町にあった。
シノブとヴィーの足であれば列車を待たずとも走ったほうが早い距離。急ぎであったため、二人はそのようにして現場に到着した。
少し離れた屋根の上から様子をうかがう。
そして双眼鏡であるものを見つけたシノブは口を開いた。
「上空を鳥型の精霊が巡回してますね」
ヴィーは双眼鏡を使っていないが、事前にその存在を知っていたため即座に答えた。
「警備の精霊だ。全体を薄く広く監視する精霊を中心に、指向性を高めた複数の精霊が周囲を巡回している」
ヴィーが言った通り、精霊はそのように配置されていた。
それを遠目に見ながらヴィーはシノブに尋ねた。
「どう攻める?」
シノブは即答した。
「まずは全体を監視している中央の精霊を気付かれずに制圧し、続けて他の精霊を速攻します」
「具体的にはどうやって?」
「幸いなことに、上空には通信用の精霊が多く頻繁に飛び交っています。それに紛れ込ませれば接近は容易でしょう」
この答えに、ヴィーは満足した表情で口を開いた。
「定番であり、模範的な回答だ。新鮮さと面白みに欠けるやり方だが、さすがと言っておこう」
それは少しひねくれた称賛の言葉であったが、シノブはまったく嬉しがること無く、言葉を返した。
「ですが問題がまだ残っています。確実に内部にも警備の精霊が配置されているでしょう。そして恐らく、いや、これも確実に、内部の精霊は外にいる精霊とリンクしているはず。同時に制圧する必要があります」
それについての対処法をヴィーはすでにいくつか考えていた。だからヴィーは即答した。
「まだ閉店までに少し時間がある。だから客として堂々と侵入して内部から工作すればいい。それは俺が一人でやる。制服のお前は目立つからここで待っていろ」
そう言うと同時にヴィーは屋根から飛び降り、美術館へと向かっていった。
◆◆◆
ヴィーの仕事は早く、入ってから出てくるまで10分もかからなかった。
シノブもその10分の間に準備をすませていた。
だからヴィーは戻ってくると同時に口を開いた。
「よし、やるぞ。タイミングはお前に任せる。俺は合わせるから、好きなタイミングでいけ」
言われたシノブは即座に始めた。
複数の鳥型の精霊を飛ばし、一般の精霊の群れの中にまぎれこませる。
そして警備の真上を通過する直前、バランスを崩したように見せかけながら、急降下させた。
事故を装う形で警備と衝突。
接触と同時に攻撃を開始。
それは瞬時に終わった。
二羽の鳥型の精霊は融合して一羽となり、そして主導権をシノブが握った。
周囲に旋回している他の警備も同じように制圧。
シノブの仕事は完璧だった。
あとは、ヴィー先生の仕事がどうなったか。
それを尋ねるより早く、ヴィーは答えた。
「よくやった。こっちも終わった」
言葉通り、警報が鳴る気配は無かった。
その事実にシノブが心の中で胸を撫で下ろすと、ヴィーは再び口を開いた。
「潜入は夜だ。人の気配が無くなるまでここで待つぞ」
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