74 / 120
中等部編
第七話 警察沙汰で青春大ピンチ危機一髪! (10)
しおりを挟む◆◆◆
いまだ火の手がおさまらぬ王城の門前にて、兵士達が整列していた。
全員が銃を持ち、パワーアーマーを着ている。
先ほどまで戦っていたかのような風貌であり、実際その通りであった。
いまだ銃身が熱を帯びていると錯覚するほどに、兵士達の心はまだ火照っている。
その熱を帯びた視線は、前方に歩み現れたある一人の男に注がれ始めた。
その男は普通の風貌では無かった。
明らかに量産型とは違う、漆黒のパワーアーマーに男は身を包んでいた。
細かな装飾が多く、高級感すら感じられる。
しかし背中に背負った巨大な銃剣がその高級感を打ち消し、黒い威圧感だけを残している。
何者なのか、それを答えるように、兵士の一人が声を上げた。
「ガタノトーア元帥様に敬礼!」
その声が響いた直後、整列している全兵士が一挙一動そろえて敬礼の姿勢を取った。
そんな兵士達の前に立ったガタノトーアは大きく声を響かせた。
「諸君、ご苦労であった! 諸君らはいま、歴史の転換点に立っている! ここが新たな始まりの場であり、それを成しえたのは諸君ら一人一人の奮戦によるものである! ゆえに私は誇りに思う!」
言いながら、ガタノトーアは近くにある壁に視線を誘導するように手で示した。
その壁には、十名ほどの人間が並び立たされていた。
全員が縄で拘束されている。
麻の袋を頭からかぶせられているため顔はわからない。服装から性別だけは判別できる。
ガタノトーアはその者達を手で示したまま、再び声を上げた。
「その誇りと共に、最後の仕事をかつての英雄の末裔(まつえい)である、アーサーに任せたいと思う!」
その声と共に、『かつての英雄の末裔』と称された者が前に歩み出た。
その者もガタノトーアと同じく、量産型とは違うパワーアーマーに身を包んでいた。
ガタノトーアとは対照的な銀色の装甲。中世の騎士を思わせる形状をしている。
兜は着けておらず、端正な顔立ちがあらわになっていた。
その顔は、既に知る誰かに似ていた。性別が違うが、たしかに似ていた。
アーサーは壁の前に立ち、拘束されている者達に向かってライフルを構えた。
そしてアーサーは引き金に指をかけながら思った。
(この場にクラリスがいなくて良かった)と。
こんな姿を妹に晒すことにならなくて本当に良かったと、己をなぐさめながらアーサーは引き金を引いた。
第八話 ちっちゃいはかわいい。かわいいは正義。ゆえにちっちゃいは正義 に続く
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
その婚約破棄、巻き込まないでください
有沢真尋
ファンタジー
公爵令嬢の婚約者である王子に、あのセリフを言われたら詰み。
絶対に巻き込まれたくない男爵令嬢の戦いがそこにある――
このところ、貧乏貴族の娘であるミントは、公爵令嬢からはきつく当たられ、その婚約者である王子にはなぜかつきまとわられている。
このままでは、「貧乏娘が身の程もわきまえず婚約者のいる王子に言い寄った」という状況が出来上がってしまい、二人の婚約破棄騒動に巻き込まれてしまうのでは……!?
どうにかしたい、とミントが相談したのは怪しい毒草マニアのお師匠様。
彼らに飲ませてしまえと取り出してきた薬は……
※「アリスと魔法の薬箱」と同一世界観です。
※作中の薬の効用はフィクションです。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる