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第五話 わたし、島を出ます! (11)

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 だけど、わたしの治療に多くの精霊を使ってしまっているせいで、他のことに対しては明らかに手薄だった。
 触手の物量に阻まれ、ルイスさんの足が止まってしまう。
 しかし直後に新たな救いの声が響いた。

「二人とも無事のようだな」

 その声と共に光の線が何本も走り、わたし達を阻んでいた触手の群れはすべて斬り落とされた。
 線を描いた声の主は、やっぱりヴィーさんだった。
 それから少し遅れて、

「アイリス、無事なの?!」

 ブルーンヒルデさんも声と共に姿を現した。
 ブルーンヒルデさんは到着と同時に引き連れていた花の精霊を放った。
 紙吹雪のように大量の花びらが廊下に吹き荒れ、黒いものを押し流していく。
 そうして安全が確保された直後、ヴィーさんはブルーンヒルデさんに向かって口を開いた。
 
「ヒルデ、お前は機関室へ向かえ」

 その指示にブルーンヒルデさんは即答しなかった。ちらりとわたしと目を合わせ、即答しない理由を示した。
 だけど、ヴィーさんの意思は変わらなかった。

「機関室がやられたら終わりだ。そしていまこの船で一番強い精霊使いはお前だ。だから任せられるのはお前しかいない」

 その言い回しはヴィーさんにしてはめずらしいもので、ゆえにブルーンヒルデさんの心は少し動いた。
 だからブルーンヒルデさんは渋々といった様子で答えた。

「……わかったわ。アイリスのことは任せたわよ」

 そう言ってからブルーンヒルデさんは背を向け、機関室に向かって走り出した。
 その背を見送ってからヴィーさんは再び口を開いた。

「この状況だと艦内のほうが危険だ。甲板へ行くぞ」

   ◆◆◆

 ヴィーの言葉は正解であり、ブリッジはその対処に追われていた。

「レーダーが完全に沈黙! 精霊と通信できません!」
「機銃の照準補正機能が停止!」

 通信士達の声が次々と響く。
 これに対し、艦長は伝声管に向かって叫んだ。

「すべての制御を手動に変更! 各々の目と感知をもって状況に対処せよ!」

 しかし次の瞬間、より悪い報告の声が響いた。

「エンジンの出力が低下!」
 
 これに対しては、出せる指示が思いつかなかった。
 が、直後、伝声管から声が返ってきた。

“わたしは精霊使いのブルーンヒルデ。いま機関室に着いたのだけど、このエンジンとかいうデカブツの制御系を守ればいいのね? 状況は良くないけど、これならわたし一人でもなんとかなると思う。少し時間をちょうだい”

 それは少し息を切らしたブルーンヒルデの声だった。
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