22 / 120
第三話 V・A (4)
しおりを挟む◆◆◆
マラソンが終わったら光る剣を持ってヴィーさんと打ち合う。
最近は良い勝負になってきたんじゃないかなあと、自分では思ってる。
その証拠に、
「いいぞ! もっと打ち込んで来い!」
ヴィーさんの口調は明らかに変わっていた。
楽しんでいるかのような口調。
最初の頃のめんどくさそうな雰囲気は感じられない。
注意の言葉の回数も減った。
だけどまだヴィーさんから一本を取ったことは一度も無い。
だけど今日こそはいけそう、そんな手ごたえを感じる。
剣がぶつかり合うたびに、その手ごたえが伝わってくる。
もう大きく受け流されることは無い。受けられたら即座に剣を引いているからだ。
そして吹っ飛ばされることも無い。ヴィーさんのように上手くは無いけど、衝撃をちゃんと流せてるからだ。
攻めて、引いて受ける、それの繰り返し。
この繰り返しはだんだん速くなる。
最初はついていけなかったけど、いまはもう慣れた。
ぶつかり合いで生じる火花と光の粒子がその数を増していく。
そろそろかな? そう思った直後にヴィーさんは口を開いた。
「では、少し強めにいくぞ!」
その声と共にヴィーさんは大太刀を納刀した。
何度見てもカッコいい居合の構え。
鞘に刃を納めた状態が構え。ここからすごい速さの抜刀が飛んでくる。
いや、抜くという表現は違う。ヴィーさんは刃を発射している。
光の魔力同士がぶつかり合った際に生じる反発力を利用して、鞘から飛ばしているのだ。そもそも、そうでもしないとこんな長い刃は腰からは抜けない。
納刀の際は手から完全に離れている瞬間がある。刃を軽く投げて、下から鞘を突っ込ませて納刀している。その動作も一瞬だからこれまたカッコいい。
抜刀から納刀までほとんど隙が無い。
だけど今日こそは! もう何度も見た! もう目が慣れている!
だから、
(あとはタイミングの問題! ヴィーさんの心を、抜刀の気配を読むんだ!)
あとはわたしの感知能力を研ぎ澄ませるだけ!
意識を集中し、ヴィーさんの体の中に流れる魔力を見る。
まるで光る血管のようなそれをじっと見つめる。
時が止まったような感覚のあと、間も無くそれは始まった。
肩のそばで太い流れ星のような魔力が現れ、腕に向かって流れこみ始める。
(ここだ!!)(一閃!!)
瞬間、わたしとヴィーさんの心の声は重なった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる