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17.なぜか切なくて

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別に、彼を抱えて逃げてきたからといって私だけが彼の特別なんかじゃ全然なかった。
 コルフェがミシュレットさんにも手を出そうとしたと聞いて、急に寂しく感じてしまっているのはなんでだろう。
 意識なんかしていなかったのに、切なくなっちゃうのはどうしてだろう。

 心臓がギシッと軋むみたいに痛い。
 軋んだあとは小刻みに震えてちくちくしている。

(……なんか、いやだなぁ)

 寝じたくを済ませ再びコルフェが眠っているベッドへ戻ってきた。
 掛布を少しずらして足を滑り込ませ、彼に寄り添うようにしてベッドに入る。
 あたたかい。少し体温が高めの子供姿からぬくもりが伝わってくる。

 彼と私は今、寝間着がなければ肌が密着するくらいぴったりくっついている。
 下を向けば、綺麗な横顔から発せられる穏やかで愛らしい寝息がすやすや。
 私の胸辺りから上がって聞こえてくる。

 前世ではあきれるほどに画面越しの彼に焦がれ、日々の生きる糧にしていた最上級の推し。
 その推しが小さな姿となって私の隣にいる。
 胸を踊らせながら遊んだゲームの中の登場人物が、私にくっついて眠っている。
 
 夢にまでみたこれ以上ないほどのシチュエーションのはずなのに、私の胸はキシキシ細かい痛みに鳴っているばかり。
 いまひとつ喜びをきちんと表現してくれない。

 追加シナリオのお陰で夜の相手にもなってくれるコルフェと、ゲームの中ではえっちな妄想をしていたはずなのに。
 理想のお相手がこんなに近くにいて、一緒のベッドに入って身を寄せているというのに。
 あんなことやこんなことをイメージして濡れたりすることなんてできやしない。

 それは彼がまだ子供だから、なんだろうか。
 見た目も中身もまだ幼すぎる推しに対して私の中の感情が変化し、恋心ではなく親心みたいなものが芽生えつつあるのかもしれない。

(恋人にはなれないとしても、せめて……)

 せめてこの先、彼の中で大切な存在になってゆきたい。
 一番じゃなくても。

 そんな風に考えてしまう思考を止め、私は無理矢理目を閉じた。
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