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監禁脱出計画

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時間は流れる雲のように静かに過ぎ去る。
監禁脱出計画をスタートさせてからゆっくりと時間は過ぎ去り、気がつけばギルバートの即位式の日を迎えていた。
ターニャの協力の甲斐もあってか、ギルバートがこの部屋に近づく事はなかった。おかげでギルバートにこの計画を知られないで済んだ。

ターニャの話しでは、ギルバートの即位式は昼から始まり、夕方にはディアとの婚礼式、そして夜には王宮が解放され、盛大な宴が開かれるそうだ。
宴の開始の合図に大きな花火が打ち上げる。ーーそしてそれが、監禁脱出計画の実行の合図でもある。  


カルミアはというと、西日が煌々と降り注ぐ窓際のソファーで、のんびりとくつろぎながら、庭園を往来する騎士達を眺めていた。緊張感はまるでない。

騎士達は何やら駆け足で王宮と庭園を行ったり来たりしている。
警備に、祭りの準備にと大忙しなのだろう。

カルミアはそんな様子を見て、他人事のように大変だなと思った。

「カルミア様、本当にお荷物はこれくらいでいいんですの?」

ターニャの腕に抱かれたバッグには、必要最低限の着替えしか入ってない。

「こっそり金目の物を持ってかなくていいんですの?街で高く売れますわよ?」
「そんなことしたら、足がついて即効ギルにバレちゃうだろ」

カルミアは大胆な事を考えるターニャがおかしくて、クスクスと声を押し殺すように笑った。   


「流石ですわ。家を抜け出す時に、母の宝石を盗んで、街でお金に変えたターニャとは大違いですわ」
「...ターニャ、君意外とやるよね」

大胆というか、恐れ知らずというか。
カルミアは、全身の血液を循環させるように大きく伸びをした。  

「今は...ちょうどギルとディアの婚礼式くらいか」
「そう、ですわね。カルミア様大丈夫ですか?」
「ん?何が?」
「その...。好きな人が、自分以外の者と婚儀の契りを交わすことは辛いことだと思うんですの。気丈に振る舞ってないかターニャ心配で」
「そんなの今更だよ」

辛くないかと問われれば、確かに辛い。
けれどギルバートから離れると決めた今となっては、考えるだけ無駄だ。
考えたって辛いだけだし、それにーー。

「それよりも、僕は楽しみなんだ」

まだ見ぬ何かに期待を馳せるような表情をカルミアはしていた。その瞳は生き生きとしていて、何処か意思を感じさせる強い光を宿していた。

「この部屋を抜け出した先に何があるんだろう。今まで出来なかった分、思う存分自由に生きてみたい。色んなところに行って、色んな物を食べて、色んな人と触れあってみたい。きっと辛いことも多いだろうけど、色んな事を体験してみたいんだ」

樹がそう望んだように。
この先に何が待ち受けようとも、必ず乗り越えてみせるとカルミアは覚悟を決めていた。

「ギルのことなんて考えてる暇ないよ」
「...カルミア様はお強いですわね」

ターニャは若草色の瞳を細め、優しく微笑んだ。
カルミアがこの監禁生活を終えるまで、一刻と迫っている。
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