16 / 44
監視
しおりを挟む
ターニャは長いワンピースの裾を持ち上げ、いそいそと部屋の隅に移動した。そして植物の装飾が施されたキャビネットの上に置いてある鳥型の不可解な機械を手にした。ターニャは満面の笑みでベッドサイドまで戻ってくる。
カルミアは首を傾げた。こんな物、昨日まであったっけ?
「カルミア様!この機械があればギルバート様に簡単に連絡が取れますよ」
「...それは?」
「最近イディア商工の機械部門で発売された、最新型の通話機器です。これ凄いんですよ。二羽一組で売られているんですけど、鳥の頭についているこの小さなボタンを押せば、嘴から相手の声が聞こえてくる法術みたいな機械なんです。今朝、狩猟に出かける前に、カルミア様のお部屋にギルバート様が訪れて、この機械を置いて行かれました。寂しくなったら何時でも連絡して、とおっしゃっていました。カルミア様愛されていますね!」
カルミアは機械をまじまじと見る。前世の世界で言う所の、電話という奴だろうか。最近、アーダルベルト王国は著しく技術が発展していると聞いた。その内、高層の建物が並び、街中に仕組みの分からない機械が溢れるようになるかも知れない。長谷川樹が暮らしていた日本みたいに。
カルミアはターニャから鳥型の機械を受け取った。目の部分に宝石が組み込まれているのか、虹色の輝きを放っている。
「ちなみに鳥の目に石が組み込まれているんですけど、これはただの石ではなくて、法石なんです。そこから相手の様子を写して、向こうの機械で見れるようになっています。通話機能だけでなく監視機能までついているって凄いですよね!高価な商品を取り扱う貴族向けのお店が、盗難防止に次々購入されていて...」
ターニャの言葉が遮らるように、後ろで大きな音が響く。ターニャは油の切れた機械のように、ぎこちなく後ろを向いた。壁目掛けて投げられた鳥の機械が無残に床に転がっている。ちなみに機械を投げたのは、カルミアだった。カルミアは真っ赤な顔をしながら、肩で息をしている。
機械は思いの他強度があるらしく、傷一つついていない。
「足枷では足りないのかよ!!どこまでギルは僕を縛り上げたら気が済むんだよ!」
「...あの、カルミア様。お怒りのところ大変申し上げにくいのですが、あの機械は表面が鉄鋼で覆われているので、あれくらいの衝撃では壊れないようになっているんです」
ターニャの言葉にカルミアはうな垂れた。
昨晩、ギルバートに自由を乞わなければ良かった。自由になるどころか、状況がますます酷くなっている。
(足枷に加えて、今度は監視だって?あの機械の先で、ギルは僕の様子を見て、ほくそ笑んでいるんだろうね。ギルは正気の沙汰じゃない。狂ってるよ)
静かに怒りを燃やしているカルミアに、ターニャはおろおろと狼狽えた。
「カルミア様。ターニャ、何かお気に召さない事でもいいましたか?」
「言ってないよ。ターニャは悪くない。それよりもあの機械で、至急、ギルに部屋に来るように伝えて欲しい」
「は、はい!!」
ターニャが慌てた様子で機械を取に行く。
カルミアはそんなターニャの様子をぼんやりと見て、後悔するように瞼を閉じた。
ーー僕が歩みたかった人生は、こんな人生だったのかな。
カルミアは首を傾げた。こんな物、昨日まであったっけ?
「カルミア様!この機械があればギルバート様に簡単に連絡が取れますよ」
「...それは?」
「最近イディア商工の機械部門で発売された、最新型の通話機器です。これ凄いんですよ。二羽一組で売られているんですけど、鳥の頭についているこの小さなボタンを押せば、嘴から相手の声が聞こえてくる法術みたいな機械なんです。今朝、狩猟に出かける前に、カルミア様のお部屋にギルバート様が訪れて、この機械を置いて行かれました。寂しくなったら何時でも連絡して、とおっしゃっていました。カルミア様愛されていますね!」
カルミアは機械をまじまじと見る。前世の世界で言う所の、電話という奴だろうか。最近、アーダルベルト王国は著しく技術が発展していると聞いた。その内、高層の建物が並び、街中に仕組みの分からない機械が溢れるようになるかも知れない。長谷川樹が暮らしていた日本みたいに。
カルミアはターニャから鳥型の機械を受け取った。目の部分に宝石が組み込まれているのか、虹色の輝きを放っている。
「ちなみに鳥の目に石が組み込まれているんですけど、これはただの石ではなくて、法石なんです。そこから相手の様子を写して、向こうの機械で見れるようになっています。通話機能だけでなく監視機能までついているって凄いですよね!高価な商品を取り扱う貴族向けのお店が、盗難防止に次々購入されていて...」
ターニャの言葉が遮らるように、後ろで大きな音が響く。ターニャは油の切れた機械のように、ぎこちなく後ろを向いた。壁目掛けて投げられた鳥の機械が無残に床に転がっている。ちなみに機械を投げたのは、カルミアだった。カルミアは真っ赤な顔をしながら、肩で息をしている。
機械は思いの他強度があるらしく、傷一つついていない。
「足枷では足りないのかよ!!どこまでギルは僕を縛り上げたら気が済むんだよ!」
「...あの、カルミア様。お怒りのところ大変申し上げにくいのですが、あの機械は表面が鉄鋼で覆われているので、あれくらいの衝撃では壊れないようになっているんです」
ターニャの言葉にカルミアはうな垂れた。
昨晩、ギルバートに自由を乞わなければ良かった。自由になるどころか、状況がますます酷くなっている。
(足枷に加えて、今度は監視だって?あの機械の先で、ギルは僕の様子を見て、ほくそ笑んでいるんだろうね。ギルは正気の沙汰じゃない。狂ってるよ)
静かに怒りを燃やしているカルミアに、ターニャはおろおろと狼狽えた。
「カルミア様。ターニャ、何かお気に召さない事でもいいましたか?」
「言ってないよ。ターニャは悪くない。それよりもあの機械で、至急、ギルに部屋に来るように伝えて欲しい」
「は、はい!!」
ターニャが慌てた様子で機械を取に行く。
カルミアはそんなターニャの様子をぼんやりと見て、後悔するように瞼を閉じた。
ーー僕が歩みたかった人生は、こんな人生だったのかな。
1
お気に入りに追加
1,048
あなたにおすすめの小説
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。
元魔王様は今世こそ平凡スローライフを開拓したい、、、のですが、元勇者(今世王子)が離れません!!!〜ベタつき具合はスライム並みです〜
しおりんごん
BL
いきなりだけど、『魔王』って聞いて思い浮かぶイメージはどんなのがある?
残虐?恐ろしい?人間をいたぶる?やばい奴?怖い?
うんうん、、、大体はそんな感じだよね
え?魔王、、、受け?勇者攻め?、、、何を言ってる?
と、とりあえず、、、なんかこわーい存在ってのはある程度の共有認識なんだと思う
、、、けどさ
俺はそんなことなかったから!!!!!!!!!!
確かに前任魔王(父)は道すがら人街を潰してきたり、秘境のドラゴンいたぶって舎弟にしたり、でっかい森を人間たちへの嫌がらせで更地にしたりしてたけど!
俺は争い事とか、痛いこととか、辛いこととか、魚を食べることとか、、、
全然好まないし、人間ともラブアンドピースで生きて行きたかったわけ!!!
と、まぁ過去形だから、もう俺の魔王としての生涯は終わったんだけど
だけども気が付けばなんと二度目の人生スタートしちゃってて!!
俺は念願の人として生まれることができたのなら、人が溢れる街から遠くの田舎町で牛に囲まれて、自給自足のスローライフで一生をゆっくり終えたいわけさ!
だから俺の理想のスローライフを開拓するため、、、とにかく活動開始だ〜!!
って、、、うん?前世帰り?魔導学校?元勇者の第二王子?!?!
あ、あの頭のネジが二桁は外れてる、イカれ勇者の生まれ変わり?!
おい!そんなの聞いてなっ、、、「あー、、、みぃつけた、キィちゃん♡」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!!」
俺の念願の人生、、、どうやら波乱確定らしいです
前世から激重感情持ちの前世勇者、今世第二王子の攻め×前世から念願の自由な人生を獲得するも、今世でも攻めに振り回され、逃げられない元魔王受け(チートではある)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる