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すれ違い ⑥
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退院し常駐している医師や看護師、拓海の献身的な看病もあり、雅成の体調はみるみるよくなり、少しだけなら外出もできるようになってきた。
その頃より拓海は嶺塚に呼び出されることが多くなり、拓海の外出と合わせるように雅成も病院での検査を受けることとなった。
「じゃあ、終わったら連絡するね」
運転手付きの車で家を拓海と一緒に出た雅成は、先に病院前で車から降ろしてもらう。
今日は新しい検査と前回の検査結果を聞きにきた。
主治医と担当研究員との顔合わせでもあった。
約束時間より早く着き、研究棟を散策していると、雅成の視線の先の部屋ドアが開き、中から頭を下げてルイが出てきた。
ドアを閉めたルイは明らかに肩を落とし、落ち込んでいる。
「ルイ?」
雅成が呼びかけると、ルイはいしゆみにでも弾かれたように飛び上がり、雅成の方を見た。
「ひ、姫……」
頬は高揚しているが、どこか落ち着きがないように目が泳いでいる。
「もう姫じゃないよ、僕は雅成。覚えてて」
ルイに近寄るが、ルイは雅成を見ないように視線を逸らす。
「ルイ?」
顔を覗きこむが、また逸らされる。
「もうルイ!」
雅成の視線から逃げようとするルイの両頬を手で包み込み、無理やりに自分の方に向けさせる。
「ルイ、僕を見て」
雅成に顔を固定されたにも関わらず、ルイは視線だけでも必死に逸らす。
「ルイ、見て」
「……」
「ルイ……僕のこと、嫌いになった?」
悲しそうに雅成が言うと、
「! 大好きです!」
先ほどまで視線を逸らしもじもじしていた人とは思えないほど、しっかりと雅成を見てはっきりと答えた。
「大好きなの?」
「はい! もう大好きです! 大好きすぎ……ま……す……」
はじめは力強く言っていたのに、途中で我に帰ったのか、急に声が小さくなる。
その姿が可愛らしくて、雅成は微笑む。
「よかった。全然僕の方見てくれないから、嫌われちゃったのかと思ったよ」
「そんなこと絶対にないです。むしろ姫が……雅成さんが僕のこと……嫌いなんじゃないかって……思ってて……」
今度はルイが雅成の様子を伺うように、顔を覗き込む。
「僕がルイのこと嫌いになる? どうして?」
「だって、初対面であんなこと……してしまったから……」
思い出したのか、ルイは顔を真っ赤にして両手で顔を隠した。
その頃より拓海は嶺塚に呼び出されることが多くなり、拓海の外出と合わせるように雅成も病院での検査を受けることとなった。
「じゃあ、終わったら連絡するね」
運転手付きの車で家を拓海と一緒に出た雅成は、先に病院前で車から降ろしてもらう。
今日は新しい検査と前回の検査結果を聞きにきた。
主治医と担当研究員との顔合わせでもあった。
約束時間より早く着き、研究棟を散策していると、雅成の視線の先の部屋ドアが開き、中から頭を下げてルイが出てきた。
ドアを閉めたルイは明らかに肩を落とし、落ち込んでいる。
「ルイ?」
雅成が呼びかけると、ルイはいしゆみにでも弾かれたように飛び上がり、雅成の方を見た。
「ひ、姫……」
頬は高揚しているが、どこか落ち着きがないように目が泳いでいる。
「もう姫じゃないよ、僕は雅成。覚えてて」
ルイに近寄るが、ルイは雅成を見ないように視線を逸らす。
「ルイ?」
顔を覗きこむが、また逸らされる。
「もうルイ!」
雅成の視線から逃げようとするルイの両頬を手で包み込み、無理やりに自分の方に向けさせる。
「ルイ、僕を見て」
雅成に顔を固定されたにも関わらず、ルイは視線だけでも必死に逸らす。
「ルイ、見て」
「……」
「ルイ……僕のこと、嫌いになった?」
悲しそうに雅成が言うと、
「! 大好きです!」
先ほどまで視線を逸らしもじもじしていた人とは思えないほど、しっかりと雅成を見てはっきりと答えた。
「大好きなの?」
「はい! もう大好きです! 大好きすぎ……ま……す……」
はじめは力強く言っていたのに、途中で我に帰ったのか、急に声が小さくなる。
その姿が可愛らしくて、雅成は微笑む。
「よかった。全然僕の方見てくれないから、嫌われちゃったのかと思ったよ」
「そんなこと絶対にないです。むしろ姫が……雅成さんが僕のこと……嫌いなんじゃないかって……思ってて……」
今度はルイが雅成の様子を伺うように、顔を覗き込む。
「僕がルイのこと嫌いになる? どうして?」
「だって、初対面であんなこと……してしまったから……」
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