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決意 11

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「お兄ちゃんがユベール、様?」
 本を胸に抱えたまま、トトトと男の子が駆け寄ってくる。
「うん、僕がユベール。君は?」
「ぼく、カイト、6歳」
 そういいながらカイト君はテーブルの上に持っていた本を置き、ヨイショヨイショと先ほどまでクロエが座っていた椅子を、僕の隣に移動さようとする。
「おい、勝手にユベール様のおそばに寄るんじゃない」
 ヒューゴ様がカイト君を捕まえようとするけど、カイト君はヒューゴ様の手をするりとすり抜ける。
「こら。待ちなさい」
「いやだよ~」
 ヒューゴ様はまたカイト君を捕まえようとするが、また逃げられる。
 あのヒューゴ様が6歳の男の子に振り回れているのを見て、笑ってはいけないとわかっているけど、どうしても口角が上がってしまう。
「笑い事ではありません」
「だって……あははは」
 ますます困った顔のヒューゴ様を見ていると、どうしても我慢できずに吹き出してしまった。
「ユベール様!」
「ごめんなさい。ヒューゴ様があまりにも可愛く」
「私が可愛い……?怖がられることはありますが、可愛いと言われたのは、はじめてです」
 ヒューゴ様は僕の言葉が理解不能だというように、目をぱちくりさせる。
「僕はカイト君と一緒にいるのは構いませんよ」
「しかし……」
「それに僕もカイト君と話がしたいです」
 僕のそばにはいつもクロエがいてくれて、寂しい思いはしていない。
 でも他の人とも話をしたい。
 特にカイト君の年頃の子の様子を見ていると、孤児院の子どもたちのことを思い出して懐かしい。
「ダメです……か?」
「ユベール様がしたいことにダメなことなんて、ありません」
 ヒューゴ様は僕に微笑みかけてから、
「ゆべーる様にご迷惑をおかけしないように」
 カイト君に釘を刺し、僕の隣にカイト君が座れるように椅子を移動させた。
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