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決意 ⑦

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 意外にもヒューゴ様はお酒より甘いものがお好きで、お菓子の歴史や、どのお菓子にどんな飲み物が合うなど、とても詳しい。
 クロエもヒューゴ様と同じく甘いものが大好きで、城下に行くと美味し店を開拓するのが趣味だそうだ。美味しいものを見つけると宮廷のシェフと相談しながらメニュー作りを手伝うのが楽しいと教えてくれた。
 あと一つ大好きなことがあるようで……。

「ユベール様、お茶を飲みつつ読書なんていかがですか?」
 アフタヌーンセットと共に、数冊の本を取り出。
「これは?
 赤ワイン色の皮表紙に金色の文字で『白い薔薇が紅く染まる時』とタイトルが書かれている本を手渡され、まじまじと見た。
「『白い薔薇が紅く染まる時』なんだか大人っぽい本だね。ジャンルは何になるの?」
 小さな頃から本は大好きだけど、こんなタイトルの本を見るのは初めて。
 まだ知らないジャンルがあったなんて、内容が気になってワクワクする。

「私おすすめのロマンス小説になります」
「ロマンス小説っていうんだ」
 ロマンス小説。今まで聞いたことがなかった。
「クロエは読書が好きなの?」
「はい!難しい本は苦手ですが小説は大好きです。なんだか違う世界に行っているような気持ちになりませんか?」
「うん!それすごくわかる!」
「ですよね」
 今まで孤児院では僕より小さい子ばかりで、読書後、感想を言い合う読書会なんてしたことがなかったけど、これからクロエと読書会ができるかもしれないと思うと、楽しみすぎてワクワクする。

「でもクロエ、その本は……」
 ヒューゴ様が何か言おうとするけど、クロエは唇の前で人差し指をたて、
「し~」
 と、それ以上ヒューゴ様に何も言わないでというような素振りをする。
 なにか問題のある小説なのかな?
 気になったけれど、それより内容が気になるので、皮表紙をめくりパラパラパラとページを捲っていくと、
「!!!!」
 ある場面の挿絵を見た時、慌てて本を閉じた。

「これがロマンス小説?」
「はい、ロマンス小説です。でもただのロマンス小説ではありません」
「普通のと、どう違うの?」
「それは大人の・・・ロマンス小説、いわゆる『官能小説』です」
 官能小説って、あの官能小説!?
 単語は聞いたことはあったけど、現物を手にしたことは無い。

 大人の余裕を見せつつ、にっこり笑うクロエとは対照的に、挿絵を思い出してしまった僕の頭からはボフッと音が出てしまいそうなほど、頬が熱くなった。
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