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翌日 ①

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「ユベール様、おはようございます。今日はこんなにお天気がいいですよ」
「ん…?」
 僕の意識がまだまどろみの中にた頃、元気な女性の声が聞こえた。

 ダインズ家に、こんなに元気な女の子はいたのだろうか?
 まだハッキリと働かない頭で、ゆっくりと体を起こすと、今まで使っていた板のように硬いベッドではなく、清潔なシーツをかけられたふかふかで暖かなベッドだった。

「ここは!?」
 一気に意識を取り戻し目の当たりにしたのは、日の光がよく入る明るい部屋で、小さなチェストとクローゼット、木製だが座り心地のよさそうな椅子が二脚とそれにあった大きさの机。本棚には本がびっしりと詰まっている。
 その上、肌触りがよい綿のパジャマまで着ている。
 だんだんと鮮明になっていく記憶で昨日宮殿に着き、アレキサンドロス様のご慈悲で孤児院まで助けいただくとお約束してくださったことを思い出し、我に返った。

「ここはユベール様のお部屋でございます」
 笑顔が眩しい見知らぬ女性が僕の前に進み出る。

「僕の…部屋?」
「はい!そうでございます。おはようございますユベール様。お初にお目にかかります、今日からユベール様専属の侍女を務めさせていただきます『クロエ』と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
 はつらつとした笑顔であいさつをしたクロエと名乗る女性は、綺麗なお辞儀をした。

「あ!ユベールと申します。こちらこそよろしくお願いします」
 綿のパジャマを着たまま、大急ぎで自己紹介をし頭を下げる。

「そんなそんな!私は侍女で、ユベール様はあの第一皇子アレキサンドロス様の初めてのご側室でいらっしゃいます!私になんて頭をおさげにならないでください!」
 深々と頭を下げ続けている僕に、クロエは慌てて頭を上げさせた。

「でも、僕はそんな立場では…」
 昔は王族であったとしても今はその国もなく、僕は何も持たないただの孤児。側室という立場もアレキサンドロス様のお慈悲や気まぐれによるもので、あの方のお心次第でいつでも消えてなくなるのだ。

「何をおっしゃってるのですか?あのアレキサンドロス様が初めてご側室に選ばれた方ですよ!?しかも女神のように美しいお方!私はそんな素晴らしい方の専属侍女に選ばれたことを、本当に光栄に思っています」
 クロエに手を両手で握られ、女神だなんて褒められ頬が赤くなるのがわかった。
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