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愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜
山崎宅 ②
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『はい、鈴木です』
鈴木とは表向き副社長と秘書。
電話の向こうに谷川がいるので、馴れ馴れしくしてはいけない。
「急に電話悪い。今晴人の家に来ていて、瑞稀くんがどうしても鈴木と話がしたいって。変わっても大丈夫か?」
『それはもちろん』
俺は瑞稀くんにスマホを渡す。
「鈴木さんご無沙汰しています、瑞稀です。さっき鈴木さんの話が出ていて、もしよろしければ鈴木さんも我が家でお食事いかがですか?……、いえ迷惑だなんて。昴さんと晴人さんが家まで送りますので、安心してくださいね。絶対、絶対、絶対来てくださいね。千景と清貴も待ってますので。電車にのられましたら昴さんに電話ください。迎えに行ってもらいます。それでは失礼します」
一気にそういうと瑞稀くんは通話を切った。
なんだかいつもの瑞稀くんと、今さっき鈴木と電話をしていた瑞稀くん、別人だ。
「瑞稀、あんな強引な誘い方で大丈夫なのか?」
心配そうに晴人が聞くと、
「大丈夫です。晴人さん、お鍋の具材買いに行きますよ。昴さんはここで待機でお願いします。家の鍵はこれですので鈴木さんから連絡があったらすぐ迎えに行ってください。ないとは思いますが、万が一、谷川さんも来られていたら、嫌な顔せず車に乗せて、晴人の家で待っていてくださいね」
そう言いながら、瑞稀くんはテキパキと買い物に行く準備をする。
いつも瑞稀くんの周りだけ時間がゆっくり流れているのに、今の瑞稀くんの周りだけ時間が倍速で流れているようだった。
鈴木から電車に乗ったと連絡があり、改札から出てきたのは鈴木だけで、ほっと胸をひとなでした。
鈴木を車に乗せ走り出す。
「瑞稀さんからの突然のお誘いって珍しいですよね」
やはり鈴木にも、さっきの瑞稀くんの誘い方は強引だと感じたようだ。
「そうか?」
なんと答えれば正解なのかが分からず、とりあえず話を濁しておく。
「谷川はよかったのか?」
特に気にしてなさそうに聞いてみたが、それが1番気になる。
「本当は一緒に来たがっていましたが、それはおかしな話なので断っておきました」
すごいな。瑞稀くんの万が一が当たりそうだったんだ。
「他に何か言ってたんじゃないか?」
「『休日に呼び出しなんて、非常識にも程がある』って怒ってましたけど『副社長からの呼び出しじゃなくて、山崎さんのパートナーさんからのお誘いで、俺はその誘いを嬉しく思ったから行くだけで、怒ることはひとつも無い』って言っておきました。谷川くん、いい人なんですが副社長関係になると直ぐに苛立つので」
やや困った顔で鈴木は言う。
谷川に敵意を向けられていると感じていたが、やはり間違いではなかったようだ。
鈴木とは表向き副社長と秘書。
電話の向こうに谷川がいるので、馴れ馴れしくしてはいけない。
「急に電話悪い。今晴人の家に来ていて、瑞稀くんがどうしても鈴木と話がしたいって。変わっても大丈夫か?」
『それはもちろん』
俺は瑞稀くんにスマホを渡す。
「鈴木さんご無沙汰しています、瑞稀です。さっき鈴木さんの話が出ていて、もしよろしければ鈴木さんも我が家でお食事いかがですか?……、いえ迷惑だなんて。昴さんと晴人さんが家まで送りますので、安心してくださいね。絶対、絶対、絶対来てくださいね。千景と清貴も待ってますので。電車にのられましたら昴さんに電話ください。迎えに行ってもらいます。それでは失礼します」
一気にそういうと瑞稀くんは通話を切った。
なんだかいつもの瑞稀くんと、今さっき鈴木と電話をしていた瑞稀くん、別人だ。
「瑞稀、あんな強引な誘い方で大丈夫なのか?」
心配そうに晴人が聞くと、
「大丈夫です。晴人さん、お鍋の具材買いに行きますよ。昴さんはここで待機でお願いします。家の鍵はこれですので鈴木さんから連絡があったらすぐ迎えに行ってください。ないとは思いますが、万が一、谷川さんも来られていたら、嫌な顔せず車に乗せて、晴人の家で待っていてくださいね」
そう言いながら、瑞稀くんはテキパキと買い物に行く準備をする。
いつも瑞稀くんの周りだけ時間がゆっくり流れているのに、今の瑞稀くんの周りだけ時間が倍速で流れているようだった。
鈴木から電車に乗ったと連絡があり、改札から出てきたのは鈴木だけで、ほっと胸をひとなでした。
鈴木を車に乗せ走り出す。
「瑞稀さんからの突然のお誘いって珍しいですよね」
やはり鈴木にも、さっきの瑞稀くんの誘い方は強引だと感じたようだ。
「そうか?」
なんと答えれば正解なのかが分からず、とりあえず話を濁しておく。
「谷川はよかったのか?」
特に気にしてなさそうに聞いてみたが、それが1番気になる。
「本当は一緒に来たがっていましたが、それはおかしな話なので断っておきました」
すごいな。瑞稀くんの万が一が当たりそうだったんだ。
「他に何か言ってたんじゃないか?」
「『休日に呼び出しなんて、非常識にも程がある』って怒ってましたけど『副社長からの呼び出しじゃなくて、山崎さんのパートナーさんからのお誘いで、俺はその誘いを嬉しく思ったから行くだけで、怒ることはひとつも無い』って言っておきました。谷川くん、いい人なんですが副社長関係になると直ぐに苛立つので」
やや困った顔で鈴木は言う。
谷川に敵意を向けられていると感じていたが、やはり間違いではなかったようだ。
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