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愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜

N社との話し合い ②

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「やっぱり山崎さんは凄いですね」
 晴人たちが使ったコップを下げながら、鈴木が呟く。
「山崎さんは素敵な旦那様で、いいお父さんで、優秀な秘書。俺なんて足元にも及びません」
「そんなことないぞ。鈴木は鈴木で頑張ってるじゃないか。晴人が人間離れしてるだけだ」
 晴人は優秀中の優秀。『全てに関して完璧だが、家族のことになるとデレデレした、ヤバい奴だぞ』と言おうと思ったが、せっかくある鈴木の中の晴人のイメージをわざわざ壊すこともないかと、やめておいた。

「……しなきゃ……」
「ん?なんて?」
 よく聞き取れなかったので聞き返すと、
「なんでもないです」
 笑顔で鈴木が答えた。
「晴人は特別だ。あまり気にするな」
 そう言うと、
「はい」
 いつもより少し沈んだような、焦ったような返事が返ってきた。


 2日後の夕方、晴人が俺の元にやって来た。
 N社が世代交代の話が出ているのは正しかった。
 だが、まだ世代交代が本格的に進んでいないことで、ましてや今ある契約の見直しをすることは、情報者も初耳だったそうだ。
「晴人の情報者って?」
 ダメもとで聞いてみたが、
「秘密ですが、情報は信用していいと思います」
 晴人、刑事みたいだな。
 そんなことを思いながら、N社がどうしてそんな架空の話を持って来たのか、よくよく考えがわからない。

 今度直接会った時は探りではなく、単刀直入に聞いてみよう。
 鈴木に長野さんとの話の場をセッティングしてもらおうと鈴木の姿を探すが、見当たらない。
「あれ?」
 あたりを見回していると、
「私が来た時、鈴木くんはいませんでしたよ」
 俺の言いたいことに気がついた晴人が言った。

 そういえば晴人が来る少し前「少し出ます」と言って、どこかに行ったな。
 時計を見ると、鈴木が俺に声をかけてから30分ぐらい経っている。
 ちょっと席を外すには長い。
「おかしいですね」
 晴人も不審に思い出した時、社長室からの内線がなった。

「はい」
『あの話はどうなった?』
「社長からお聞きしていた話と、長野さんの話では食い違うところがあるので、また後日、長野さんとの話の場を作って、真意を聞いてみようと思っています」
『後日?さっき廊下で鈴木に会ったんだが、その時今から長野に会いに行くと言ってたから、渡して欲しい書類をことづけたのだが……。今日話し合いをするんじゃなかったのか?』
「え?そんな話聞いてません」
『そうか。では次回長野に会う前、鈴木に渡しておいた書類に目を通しておくように』
「はい……」
 そう言い、内線を切った。
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