161 / 202
愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜
圭太と買い物 ①
しおりを挟む
風呂から上った鈴木はうつらうつらしながら歯磨きをし、晴人が使っていた部屋に入るとすぐに寝てしまったのだろう。
なんの物音もしなかった。
その間に俺は鈴木のワイシャツを洗濯し、アイロンをかける。
明日とりあえずいるワイシャツを買いに行かないとな。
翌日、俺と鈴木が一緒に出勤し俺のネクタイをしていた鈴木を見て、晴人は一瞬驚いたようだったが、いつも通り「おはようございます」と挨拶し何も聞かなかった。
昼休み。本人に承諾を得て鈴木から昨日聞いた話を晴人にすると、このままでは鈴木の身が危ないので探偵を雇って調べることにした。
ことがハッキリするまでしばらくかかりそうだ。
そして次の休みの日に、揃っていない物を買いに行こうということになったのだが……。
ーガシャン!ー
大きな音がして目が覚めた。
音がしたダイニングに急いで行くと置いてあった観葉植物が倒れ土が床に撒き散らされ、キッチンからは焦げた匂い。
まさかここが見つかって入られた!?
いやここのセキュリティーはしっかりしている。
マンションを見つけられたとしても、家の中に入るのは無理だ。
またガシャン!という音と共に
「わっ!」
どこかで鈴木の声がした。
「鈴木!」
ダイニングを飛び出し音のした方にいくと。
……ん?
これはどういうことになっているのだろうか……。
ドラム式洗濯機の前で頭から洗剤水を被った鈴木が情けなさそうな顔で尻もちをついている。
そこに鈴木以外誰もいない。
よかった。ストーカーが入ったわけではなかった。
にしても……。
「鈴木、これは……」
「ご、ごめんなさい」
「?」
「いつも副社長にしてもらってばっかりだから、今日はお返しがしたくて。それで洗濯機回して朝ごはん作ったら、スクランブルエッグ焦がしちゃって、それじゃあ掃除しようと思ってしたら観葉植物倒しちゃって、近くに置いてあったラグ汚しちゃって洗濯物途中だったから、洗濯機に入れようと思って蓋開けたら水浸しになりました……。ホントにすみません」
頭から水を被ったまま鈴木は項垂れる。
「……プハハハハ!」
笑ってはいけないと我慢していたが、ずぶ濡れになった子犬が項垂れているようで、つい吹き出してしまった。
「!」
「ごめんごめん。つい可愛くて……。アハハハハ」
こんなに笑ったのは久々だ。涙が出てくる。
我が家はドラム式洗濯機。ロック外して途中で開けたら、そりゃ中の水溢れるよな~。
失敗して焦る鈴木の顔が目に浮かぶ。
「一生懸命頑張っくれてたんだな。ありがとう。でも家事は得意な奴がすればいい。俺は家事するの嫌じゃないから、気にせず頼ればいい」
「それでも副社長の負担になりませんか?」
「どれだけ一人暮らししてると思ってるんだ?これぐらい大丈夫だ。とりあえずシャワー浴びてこい。ずぶ濡れの柴犬みたいになってるぞ」
バスタオルを鈴木の顔に押し当てる。
「柴犬?」
鈴木は柴犬の子犬を想像したようで、
「俺そんなに可愛くありません!」
なぜだか少し怒っている。
「そうか?そういう反応も可愛いと思うぞ」
「!」
顔を真っ赤にした鈴木は
「今から入るので!」
俺の背中をぐいぐい押し出した。
なんの物音もしなかった。
その間に俺は鈴木のワイシャツを洗濯し、アイロンをかける。
明日とりあえずいるワイシャツを買いに行かないとな。
翌日、俺と鈴木が一緒に出勤し俺のネクタイをしていた鈴木を見て、晴人は一瞬驚いたようだったが、いつも通り「おはようございます」と挨拶し何も聞かなかった。
昼休み。本人に承諾を得て鈴木から昨日聞いた話を晴人にすると、このままでは鈴木の身が危ないので探偵を雇って調べることにした。
ことがハッキリするまでしばらくかかりそうだ。
そして次の休みの日に、揃っていない物を買いに行こうということになったのだが……。
ーガシャン!ー
大きな音がして目が覚めた。
音がしたダイニングに急いで行くと置いてあった観葉植物が倒れ土が床に撒き散らされ、キッチンからは焦げた匂い。
まさかここが見つかって入られた!?
いやここのセキュリティーはしっかりしている。
マンションを見つけられたとしても、家の中に入るのは無理だ。
またガシャン!という音と共に
「わっ!」
どこかで鈴木の声がした。
「鈴木!」
ダイニングを飛び出し音のした方にいくと。
……ん?
これはどういうことになっているのだろうか……。
ドラム式洗濯機の前で頭から洗剤水を被った鈴木が情けなさそうな顔で尻もちをついている。
そこに鈴木以外誰もいない。
よかった。ストーカーが入ったわけではなかった。
にしても……。
「鈴木、これは……」
「ご、ごめんなさい」
「?」
「いつも副社長にしてもらってばっかりだから、今日はお返しがしたくて。それで洗濯機回して朝ごはん作ったら、スクランブルエッグ焦がしちゃって、それじゃあ掃除しようと思ってしたら観葉植物倒しちゃって、近くに置いてあったラグ汚しちゃって洗濯物途中だったから、洗濯機に入れようと思って蓋開けたら水浸しになりました……。ホントにすみません」
頭から水を被ったまま鈴木は項垂れる。
「……プハハハハ!」
笑ってはいけないと我慢していたが、ずぶ濡れになった子犬が項垂れているようで、つい吹き出してしまった。
「!」
「ごめんごめん。つい可愛くて……。アハハハハ」
こんなに笑ったのは久々だ。涙が出てくる。
我が家はドラム式洗濯機。ロック外して途中で開けたら、そりゃ中の水溢れるよな~。
失敗して焦る鈴木の顔が目に浮かぶ。
「一生懸命頑張っくれてたんだな。ありがとう。でも家事は得意な奴がすればいい。俺は家事するの嫌じゃないから、気にせず頼ればいい」
「それでも副社長の負担になりませんか?」
「どれだけ一人暮らししてると思ってるんだ?これぐらい大丈夫だ。とりあえずシャワー浴びてこい。ずぶ濡れの柴犬みたいになってるぞ」
バスタオルを鈴木の顔に押し当てる。
「柴犬?」
鈴木は柴犬の子犬を想像したようで、
「俺そんなに可愛くありません!」
なぜだか少し怒っている。
「そうか?そういう反応も可愛いと思うぞ」
「!」
顔を真っ赤にした鈴木は
「今から入るので!」
俺の背中をぐいぐい押し出した。
12
お気に入りに追加
680
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる