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告白 ①
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瑞稀の気持ちも落ち着き二人は黙ったまま、また廊下に静けさが戻ってくる。
「瑞稀、聞いてもいい?」
口を開いたのは晴人の方だった。
「はい」
「俺は千景君と同じように、先天的に出血したら止まりにくい体質だし、血液も特殊だ。この病気は子供の父方からしか遺伝しない。なぁ瑞稀、千景君は、いったい誰の子なんだ?」
今度こそ返事を聞かせてくれというように、晴人は瑞稀の目を真正面から、瞬きせず聞いた。
瑞稀はゴクリと唾を飲み込み、
「晴人さんの子どもです」
瞬きをせず、晴人の目を見て言った。
「そうか……」
晴人は特に驚きもせず、瑞稀の告白を受け入れる。
「どうして今まで言ってくれなかったんだ?」
「それは……晴人さんに迷惑をかけたくなかったんです」
「迷惑?」
晴人は眉を顰める。
「それどういう意味?」
「……」
「話してくれないとわからない」
声のトーンに苛立ちが感じられる。
「妊娠がわかった時、話そうと思ったんです。でも偶然奥様と会って、晴人さん、旦那様と奥様と連絡を取られてないって……」
「それと瑞稀の妊娠とどう関係があるんだ?」
先ほどまで隠そうとしていた苛立ちを、もう隠そうとはしない。
「晴人さんには許嫁の方がいらっしゃって、その方との話が進んでいると」
「じゃあ瑞稀は、俺に確認することなくそれを信じたの?」
「……はい……」
「どうして!?」
晴人は声を荒げその声が廊下に響き、晴人はハッと我に帰った。
「母さんのことだ。それだけ言いにきたんじゃないんだろ?」
いつものように、晴人は落ち着いて話す。
「実は……」
瑞稀は晴人の母親から手切れ金を突きつけられたこと。
晴人を不幸にしないでほしいと言われたこと。
話した。
「どうしてその話をしてくれなかったんだ? 俺が瑞稀といることで、どうして俺が不幸になるって思ったんだ? 一生一緒にいようと言ったのは、なんだったんだ?」
晴人が言いたいこと、聞きたいことは確かだ。
だがその時の瑞稀には、その選択肢を選ぶことはできなかった。
なぜなら……、
「晴人さんは、俺との子供、いらないのかと思って……」
まともに晴人の目が見れず、瑞稀は目を伏せて言った。
「はぁ?」
明らかに晴人の怒りの声が聞こえる。
「いつ、いつそんなこと言った?」
「晴人さんとお鍋を食べに行った時に……」
「そんな話、聞いてない」
「……」
晴人自身ははっきりとは言っていない。
でもその時の瑞稀の心境では、あの時の晴人の言葉は、晴人は子供を望んでいないと聞こえてしまっていたのだ。
「瑞稀、聞いてもいい?」
口を開いたのは晴人の方だった。
「はい」
「俺は千景君と同じように、先天的に出血したら止まりにくい体質だし、血液も特殊だ。この病気は子供の父方からしか遺伝しない。なぁ瑞稀、千景君は、いったい誰の子なんだ?」
今度こそ返事を聞かせてくれというように、晴人は瑞稀の目を真正面から、瞬きせず聞いた。
瑞稀はゴクリと唾を飲み込み、
「晴人さんの子どもです」
瞬きをせず、晴人の目を見て言った。
「そうか……」
晴人は特に驚きもせず、瑞稀の告白を受け入れる。
「どうして今まで言ってくれなかったんだ?」
「それは……晴人さんに迷惑をかけたくなかったんです」
「迷惑?」
晴人は眉を顰める。
「それどういう意味?」
「……」
「話してくれないとわからない」
声のトーンに苛立ちが感じられる。
「妊娠がわかった時、話そうと思ったんです。でも偶然奥様と会って、晴人さん、旦那様と奥様と連絡を取られてないって……」
「それと瑞稀の妊娠とどう関係があるんだ?」
先ほどまで隠そうとしていた苛立ちを、もう隠そうとはしない。
「晴人さんには許嫁の方がいらっしゃって、その方との話が進んでいると」
「じゃあ瑞稀は、俺に確認することなくそれを信じたの?」
「……はい……」
「どうして!?」
晴人は声を荒げその声が廊下に響き、晴人はハッと我に帰った。
「母さんのことだ。それだけ言いにきたんじゃないんだろ?」
いつものように、晴人は落ち着いて話す。
「実は……」
瑞稀は晴人の母親から手切れ金を突きつけられたこと。
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話した。
「どうしてその話をしてくれなかったんだ? 俺が瑞稀といることで、どうして俺が不幸になるって思ったんだ? 一生一緒にいようと言ったのは、なんだったんだ?」
晴人が言いたいこと、聞きたいことは確かだ。
だがその時の瑞稀には、その選択肢を選ぶことはできなかった。
なぜなら……、
「晴人さんは、俺との子供、いらないのかと思って……」
まともに晴人の目が見れず、瑞稀は目を伏せて言った。
「はぁ?」
明らかに晴人の怒りの声が聞こえる。
「いつ、いつそんなこと言った?」
「晴人さんとお鍋を食べに行った時に……」
「そんな話、聞いてない」
「……」
晴人自身ははっきりとは言っていない。
でもその時の瑞稀の心境では、あの時の晴人の言葉は、晴人は子供を望んでいないと聞こえてしまっていたのだ。
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