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病院 ③

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 千景……。

 ただただ処置室を見続けていると、急に処置室のドアが開いて、数人の看護師と医師にベッドを押されてベッドに寝かされたままの千景が出てきた。
「千景!」
 瑞稀が駆け寄ると、
「お母さん、離れて」
 看護師に止められる。
 チラッと見えた千景は、点滴と鼻には呼吸器が付けられている。
 心が張り裂けそうだった。
 
「千景!」
 またそばに駆け寄ろうすると、今度は医師に止められた。
「今から手術室に向かいます」
「! 手術室!?」
「傷口の確認をしました。MRIも撮りました。まだ安心しきれませんが、脳内に目立った異常は見られません。それに千景くんの血液と山崎さんの血液が適合しました。千景くんは血が止まりにくい体質なので、念のため手術室で輸血をしながら傷口を縫っていきます。処置出来次第、ご説明にあがりますので、どうかもう少しお待ちください」
 それだけ言って、医師は手術室に向かう。

脳内に異常はなかった。
よかった……。

 緊張の糸が切れ、全身の力が抜け瑞稀はそのばに座り込んだ。
「瑞稀くん!」
 昴が瑞稀の体を支え、椅子に座らせる。
「千景君の容態、安定して本当によかった」
「はい……」
 返事をする声が震え、安堵の涙が溢れる。
「晴人の血も適合してよかった」
 昴も心底ほっとしたように言った。
 そんな時、
「瑞稀!」
 瑞稀に駆け寄る晴人の姿が見えた。
「千景君は、千景君の容態は!?」
 採血した直後から走ってきたのだろう。
 採血のために袖口がまくられ、針を刺した場所を押さえたままの姿だった。

「先生の話では、容態は安定しているのですが、千景は血が止まりにくい体質なので手術室で処置をしてくださると……」
「容態は安定している……。本当によかった」
 晴人は瑞稀の隣に座る。
「もしもっと輸血が必要となっても俺がいるから、もう大丈夫だ」
 
よかった。
本当によかった……。

 溢れる涙で嗚咽が止まらない。
 瑞稀は両手で顔を覆う。
「大丈夫。俺がついてる」

 晴人が瑞稀をきつく抱きしめた。
   背中に回された腕が、瑞稀の体を包み込み、不思議と落ち着きを取り戻してくる。
 不安ばかり広がり、悪い方へ悪い方へと考えが傾いていたのがなくなってくる。

ー晴人さんといれば大丈夫ー
 そう思えてくる。
 
「大丈夫、大丈夫だから」
 なんの保証もない言葉だが、その言葉に縋っていたい。
 希望を託していたい。
 
千景さえ無事でいてくれたら。
元気でいてくれたら、それだけでいい。

「……。ちょっと席を外すよ。晴人、瑞稀君のことを頼む」
 そう言って昴は暗い廊下を歩いて行った。











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