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千景からのお返し ③

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 千景は瑞稀にひらがなを教えてもらうと、一生懸命練習し、お礼の折り紙と共に拙いながらも晴人に手紙を出すようになっていった。
 晴人からも千景からの手紙の返事が来るようになり、二人のやりとりはさながら『文通』のようだ。

 千景は晴人からのプレゼンントを本当に喜んでいた。
 晴人からもらったお菓子の包み紙や手紙を、キラキラしたシールだったり、お気に入りのアニメのキャラクターのお菓子やおもちゃに付いているシール。病院の診察後にご褒美としてもらったシールなどをお菓子箱に貼り、千景のお気に入りを全部詰め込んだ『宝物箱』に大切にしまっている。

もし晴人さんに千景と本当の関係を言えたなら、千景の頑張る姿を直接見てもらうこともできるのに……。
千景だって、一生懸命折った折り紙を直接渡すこともできるのに…。
直接渡せたら、きっと千景、喜ぶだろうな。

 自信満々に力作を晴人に手渡す千景を想像してしまい、ふと瑞稀の表情が緩んだ。

いつかきっとそんな日が……。

 いつも考えてしまう。

あの頃に戻りたい。
戻れない。
そばにいたい。
一緒にいてはいけない……。
 
 そんな気持ちが振り子のように、行ったり来たりする日々を送っていた、ある日。


「ママできたよ~」

 晴人へのお返しを作り終えた千景は、洗濯物を畳む瑞稀のそばにやってきた。

「今日も凄く上手にできたね。明日山崎さんに渡しておくね。今度も山崎さん喜んでくれるといいね」

 千景からのお返しを受けと取ると、毎回、初めてプレゼントを受け取るように喜ぶ晴人の顔が思い出され、フフフと笑ってしまった。

「ねぇママ。ママは山崎さんのことが好きなの?」
「え……?」
 千景の言葉に、洗濯物を畳む瑞稀のてが止まる。
「どうしてそんなことを思うの?」
「だってママ、山崎さんのお話しする時、いつも楽しそう」
「そう?」
「うん。ママ楽しそ。僕のパパが山崎さんだったらいいのにな~」

!!

 千景の呟きに、瑞稀は驚きのあまり目を見開くと、完全に体の動きが停止する。

「え……? パパ?」
「うん! 僕、山崎さん大好きだもん」
 そう言いながら、千景はまた折り紙を折に行った。

『僕のパパが山崎さんだったらいいな~』

 千景の言葉が頭の中で繰り返し響く。

——千景のパパは、本当に山崎さんなんだよ——

そう言えたらどんなにいいだろ……。

 そう思うが、

僕はもう、晴人さんと関わらない方がいいのかもしれない。
でも千景は晴人さんのことが大好きで、プレゼントのやりとりが千景と晴人さんとの唯一の繋がり。
僕は自分の気持ちいだけで、晴人さんとの関係を切ってしまっていいのだろうか……。

 瑞稀の心は揺れていた。
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