86 / 202
保育園からの帰り道 ①
しおりを挟む
「ねぇママ。今日ね、雫くんとパズルしたんだ。すっっごく楽しかった」
千景は繋いだ瑞稀の手を、ブンブンと振りながら歩く。
「千景は雫くんと、本当に仲良しだね」
知り合いもいない慣れない場所での新しい生活が始まってすぐ、千景は新しい保育園に入園した。
入園当初の千景は一日中泣いていて、『こんなに泣かせてまで、新しい場所で仕事するべきなのだろうか?』と瑞稀が悩んだ時期もあったが、今では保育園が大好きで、毎日笑顔で登園している。
「うん。ぼく、雫くん大好き」
満面の笑みを浮かべる千景を見ていると、怒涛のような一日の慌ただしさから解き放たれった気持ちになる。
「あのねあのね、雫くん、もうすぐ弟が生まれてお兄ちゃんになるんだって。ぼくもいつかお兄ちゃんになれる?」
「!」
千景の質問にはなんでも答えてきた瑞稀だが、この質問にはどう答えればいいか戸惑った。
「お兄ちゃんになるのってね、なりたいなって思っても、なれないこともあるんだよ」
「じゃあ、ぼくはなれないの?」
千景の顔が曇る。
「それは……」
瑞稀は答えられなかった。
今でも晴人を愛しているし、これから先もそれは変わらない。
晴人以外の人は考えられない。
だから瑞稀は誰とも番になるつもりはない。
千景をお兄ちゃんにしてあげることは、絶対にありえないのだ。
事実をどう千景に伝えたらいいかがわからない。
「ごめんね、千景……」
瑞稀は千景を抱きしめながら、そう言うしかなかった。
「僕にパパがいないから?」
え!?
頭が真っ白になる。
「アキくんもパパがいないから、赤ちゃんきてくれないって……」
アキくん。千景の一つ上の年長さん。
アキくんには歳の離れた兄がいて、その兄が話したのかも知れない。
「ねぇ、そうなの?」
千景を抱きしめる力が強くなる。
千景は繋いだ瑞稀の手を、ブンブンと振りながら歩く。
「千景は雫くんと、本当に仲良しだね」
知り合いもいない慣れない場所での新しい生活が始まってすぐ、千景は新しい保育園に入園した。
入園当初の千景は一日中泣いていて、『こんなに泣かせてまで、新しい場所で仕事するべきなのだろうか?』と瑞稀が悩んだ時期もあったが、今では保育園が大好きで、毎日笑顔で登園している。
「うん。ぼく、雫くん大好き」
満面の笑みを浮かべる千景を見ていると、怒涛のような一日の慌ただしさから解き放たれった気持ちになる。
「あのねあのね、雫くん、もうすぐ弟が生まれてお兄ちゃんになるんだって。ぼくもいつかお兄ちゃんになれる?」
「!」
千景の質問にはなんでも答えてきた瑞稀だが、この質問にはどう答えればいいか戸惑った。
「お兄ちゃんになるのってね、なりたいなって思っても、なれないこともあるんだよ」
「じゃあ、ぼくはなれないの?」
千景の顔が曇る。
「それは……」
瑞稀は答えられなかった。
今でも晴人を愛しているし、これから先もそれは変わらない。
晴人以外の人は考えられない。
だから瑞稀は誰とも番になるつもりはない。
千景をお兄ちゃんにしてあげることは、絶対にありえないのだ。
事実をどう千景に伝えたらいいかがわからない。
「ごめんね、千景……」
瑞稀は千景を抱きしめながら、そう言うしかなかった。
「僕にパパがいないから?」
え!?
頭が真っ白になる。
「アキくんもパパがいないから、赤ちゃんきてくれないって……」
アキくん。千景の一つ上の年長さん。
アキくんには歳の離れた兄がいて、その兄が話したのかも知れない。
「ねぇ、そうなの?」
千景を抱きしめる力が強くなる。
23
お気に入りに追加
680
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる