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保育園からの帰り道 ①

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「ねぇママ。今日ね、雫くんとパズルしたんだ。すっっごく楽しかった」

 千景は繋いだ瑞稀の手を、ブンブンと振りながら歩く。

「千景は雫くんと、本当に仲良しだね」

 知り合いもいない慣れない場所での新しい生活が始まってすぐ、千景は新しい保育園に入園した。

 入園当初の千景は一日中泣いていて、『こんなに泣かせてまで、新しい場所で仕事するべきなのだろうか?』と瑞稀が悩んだ時期もあったが、今では保育園が大好きで、毎日笑顔で登園している。

「うん。ぼく、雫くん大好き」

 満面の笑みを浮かべる千景を見ていると、怒涛のような一日の慌ただしさから解き放たれった気持ちになる。

「あのねあのね、雫くん、もうすぐ弟が生まれてお兄ちゃんになるんだって。ぼくもいつかお兄ちゃんになれる?」

「!」

 千景の質問にはなんでも答えてきた瑞稀だが、この質問にはどう答えればいいか戸惑った。

「お兄ちゃんになるのってね、なりたいなって思っても、なれないこともあるんだよ」

「じゃあ、ぼくはなれないの?」

 千景の顔が曇る。

「それは……」

 瑞稀は答えられなかった。

 今でも晴人を愛しているし、これから先もそれは変わらない。
 晴人以外の人は考えられない。
 だから瑞稀は誰とも番になるつもりはない。
 千景をお兄ちゃんにしてあげることは、絶対にありえないのだ。
 事実をどう千景に伝えたらいいかがわからない。

「ごめんね、千景……」

 瑞稀は千景を抱きしめながら、そう言うしかなかった。

「僕にパパがいないから?」

え!?

 頭が真っ白になる。

「アキくんもパパがいないから、赤ちゃんきてくれないって……」

 アキくん。千景の一つ上の年長さん。
 アキくんには歳の離れた兄がいて、その兄が話したのかも知れない。

「ねぇ、そうなの?」

 千景を抱きしめる力が強くなる。
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