72 / 202
再会 ⑨
しおりを挟む
伸ばされた左手の薬指を見て、瑞稀は目を見開く。
「その指輪……」
晴人の薬指には、瑞稀とお揃いで作った指輪がはめられていた。
「! これは……。別れたのに指輪、いつまでもつけていてごめん……。どうしても外せなくて……」
瑞稀に見られてしまい申し訳なさそうに、でも愛おしそうに晴人は指輪に触れる。
「晴人さん、ご結婚は……?」
晴人さんは総合病院の娘さんと、ご結婚されるって……。
「結婚? してないよ」
「でも……」
奥様が晴人さんはご結婚されるって……。
言いそうになったが、それを言ってしまうと晴人の母親が瑞稀に別れ話を持ちかけたことを、話さなくてはいけなくなる。
「でもって。瑞稀、何か知ってるのか?」
「いえ……何も……」
瑞稀は隠し事を下後めたさから、咄嗟に目を逸らせてしまう。
「何か知ってるなら……」
晴人は瑞稀の様子がおかしいのに気付いている。だが、
「瑞稀がそう言うなら」
深くは追求しなかった。
「瑞稀、また会ってくれる?」
晴人は真っ直ぐ見つめる。
「でも、晴人さんはお忙しいですし、貴重な時間を無駄にされては……」
「無駄なんかじゃない」
真剣な眼差しで晴人はいった。
「今の俺にとって、瑞稀との時間が一番だ。だから瑞稀がいい時、会って欲しい」
瑞稀の胸がドキンと鳴った。苦しくもなった。
どうして晴人さんは、僕が欲しいと思うことばかりくれるのだろう…。
あんなに酷いことをしたのに。
怒っても、怒鳴っても、罵ってもいいのに……。
——僕も晴人さんと一緒にいたいです——
そう言いたかったが、
「僕なんかでよければ……」
鞄から付箋を取り出し、番号を書いて晴人に渡した。
「その指輪……」
晴人の薬指には、瑞稀とお揃いで作った指輪がはめられていた。
「! これは……。別れたのに指輪、いつまでもつけていてごめん……。どうしても外せなくて……」
瑞稀に見られてしまい申し訳なさそうに、でも愛おしそうに晴人は指輪に触れる。
「晴人さん、ご結婚は……?」
晴人さんは総合病院の娘さんと、ご結婚されるって……。
「結婚? してないよ」
「でも……」
奥様が晴人さんはご結婚されるって……。
言いそうになったが、それを言ってしまうと晴人の母親が瑞稀に別れ話を持ちかけたことを、話さなくてはいけなくなる。
「でもって。瑞稀、何か知ってるのか?」
「いえ……何も……」
瑞稀は隠し事を下後めたさから、咄嗟に目を逸らせてしまう。
「何か知ってるなら……」
晴人は瑞稀の様子がおかしいのに気付いている。だが、
「瑞稀がそう言うなら」
深くは追求しなかった。
「瑞稀、また会ってくれる?」
晴人は真っ直ぐ見つめる。
「でも、晴人さんはお忙しいですし、貴重な時間を無駄にされては……」
「無駄なんかじゃない」
真剣な眼差しで晴人はいった。
「今の俺にとって、瑞稀との時間が一番だ。だから瑞稀がいい時、会って欲しい」
瑞稀の胸がドキンと鳴った。苦しくもなった。
どうして晴人さんは、僕が欲しいと思うことばかりくれるのだろう…。
あんなに酷いことをしたのに。
怒っても、怒鳴っても、罵ってもいいのに……。
——僕も晴人さんと一緒にいたいです——
そう言いたかったが、
「僕なんかでよければ……」
鞄から付箋を取り出し、番号を書いて晴人に渡した。
16
お気に入りに追加
680
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる