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!!!! ③
しおりを挟む午前3時半。
その日、瑞稀はなんとか笑顔で仕事を終えた。
「お疲れ様した」
その日の売り上げの集計をしているオーナーに挨拶する。
「お疲れ様。今日はゆっくり休みな。明日、体調悪かったら仕事、休んだらいいから」
「いつもありがとうございます」
オーナーの気遣いに感謝しながら、店をあとにした。
1人、家路につくと、今日聞いてしまった奈子とオーナーの話が、頭の中でぐるぐる回る。
妊娠のこと、晴人さんに話すべきか…話さないべきか…。
瑞稀は無意識のうちに、首からぶらっ下げている指輪を服の上から触れた。
話せば晴人さんを困らせるだけじゃないだろうか…。
そんなことを考えていると、
「瑞稀、おかえり」
店の近く、よく一緒に住む前、晴人が瑞稀を待っていた場所に、晴人が瑞稀を迎えにきていた。
「晴人さん…」
晴人の顔を見ると、いつも駆け寄ってしまう瑞稀だったが、今日は少しためらった。
「どうしてここに?」
今日あった出来事を、晴人に話すか決めかねていた瑞稀はそんなことを言ってしまった。
「オーナーから、瑞稀の体調が良くないって連絡きてたから、迎えに来たんだよ」
晴人は瑞稀に右手を差し出すと、瑞稀はその手えを握る。
「本当は連絡もらった時、すぐに迎えに行こうかと思ったんだけど、それは瑞稀が嫌がるかもって思ってね。瑞稀、バーテンダーの仕事、好きだからね」
自分のことを良く知ってくれていて、仕事にも理解がある晴人の気持ちが嬉しかった。
「今の仕事をしていたから晴人さんと再会できましたし、行き場のない僕に手を差し伸べてくれたオーナーに恩返しがしたいんです」
自分の力で恩返しができるかわからない。
でも、少しでも力になれることがあったら、していきたいと、瑞稀はずっと思っている。
自分に対して、とても優しくしている家族を、自ら遠ざけてしまっていることに悩んでいる時、手を差し伸べてくれたオーナー。
利害関係なく居場所を作ってくれたオーナー。
オーナーを兄のように、瑞稀は慕っていた。
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