上 下
25 / 202

2度目の… ②

しおりを挟む
 タクシーの女性運転手とかすみに支えられながら、瑞稀は部屋に帰り、ベッドに倒れ込んだ。
 微かに晴人の香りがし、不安な気持ちが薄れ、涙が溢れる。

 時計の針は午後10時を回ったあたり。

「瑞稀くんはゆっくりしてて。もう10時を過ぎてるし、さすがに懇親会も終わってると思うの。その時に晴人さんに連絡入れるね。私はリビングにいるから、何かあったら電話してね」

 そう言って、かすみが瑞稀のそばから離れようとすると、

「晴人さんには…言わないで…」

 かすみの服の裾を引っ張る。

「かすみさん…、僕、一人で大丈夫です…」

「でも…」

「ご迷惑をおかけして…すみません…」

 瑞稀は重い体を起こそうとすると、かすみが慌てて瑞稀をベッドに寝かせた。

「今の瑞稀君は心細いし大丈夫なわけない。私、迷惑だなんて思ってないわ」

 息の上がる瑞稀の頭を、かすみは優しく撫でる。

「それにね、恋人がヒートで苦しんでるのに、自分だけ知らなかったら、晴人さん『自分は頼ってもらえないんだ』って悲しいと思うわよ。瑞稀くんが辛い時、一番に頼ってもらいたいのは、晴人さん自身なんじゃないかな?」

「…」

「私から晴人さんに連絡入れておくから、瑞稀くんは自分が一番落ち着けるようにしていてね」

 かすみはわざとクローゼットを開け電気を消すと、部屋から出ていった。

 かすみが出て行った部屋の中は、窓から入る外の灯りのみで薄暗い。
 開けられたクローゼットからは、晴人の香りがする。
 
晴人さんの香に、包まれたい…。

 瑞稀は誘われるように、クローゼットに向かうと、晴人の服を手当たり次第出し、ベッドの上に山のように積んだ晴人の服の中に埋もれた。

 香に包まれ安心したが、同時に晴人が恋しくなる。
 瑞稀の体はより火照りだし、お腹の奥が疼き出し、後孔からは蜜がじわりと染み出してくる。
 瑞稀は晴人のスーツやシャツを胸元でぎゅっと抱きしめ、香りを嗅ぐ。
 今すぐにでも抱きしめてもらいたくて、触れて欲しくてたまらない。
 でも晴人はそばにいない。
 ヒートで疼く身体よりも、晴人と離れ離れになっていることが、悲しい。

晴人さんの温もりと香に包まれたい。
そばにいて欲しい。

 気持ちは寂しくて悲しくて涙が溢れるのに、身体は本能に逆らえず発情する。
 ヒートだから抱きしめてもらいたいわけじゃない。
 不安なこの気持ちを癒せしてくれるのは、晴人の優しさだけ…。
 部屋中に瑞稀の香りが充満し、瑞稀自身もその香りに飲み込まれそうだ。

 時間ばかりが過ぎていき、もう身体の奥からの欲求に促されるまま、晴人の香りが残る衣服に包まれようと、瑞稀から自分の服を脱ぎ捨てた。
 うつ伏せになり腰を高く上ると、後孔に指を入れる。
 すでに蕩けた後孔からは蜜が流れ、中を弄る瑞稀の太ももへと伝う。
 くちゅくちゅとかき混ぜる音がすると、気持ちいいはずなのに、悲しさが増してくる。

晴人さん…晴人さん…。

 心の中で呼び続ける。

寂しい。そばにいて…。

 そう思うのに、自ら前立腺弱いところを押し続けてしまう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

春風の香

梅川 ノン
BL
 名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。  母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。  そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。  雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。  自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。  雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。  3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。  オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。    番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!

処理中です...