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出会いと別れ ②

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  晴人さんのお屋敷で過ごし始め穏やかな日々が9年過ぎ、俺が14歳の時。母さんが再婚することになった。相手は母さんのことをずっと支え、僕にもいつも優しく接してくれる『成瀬なるせさん』
 母さんは僕の気持ちを考え、プロポーズをされても再婚することを拒んでいたけれど、僕は母さんに幸せになって欲しくて再婚を勧めたんだ。
 再婚するにあたって、住み込みでの仕事を辞め、成瀬さんと一緒に暮らすことになって、僕は晴人さんと離れ離れに。
 晴人さんと離れ離れになるのは、本当は寂しくて、悲しくて、心にポッカリ穴が空いてしまったようだったけらど、母さんの幸せそうな笑顔が何より嬉しかったし、本当の息子のように可愛がってくれていた成瀬さんとの生活は希望で輝いていた。

 僕が17歳になった時、妹『すみれ』が生まれた。 天使のように可愛い妹が。
 すみれが生まれ、家の中がより明るくなった。義父さんは実の子供すみれと同じように僕を愛してくれていたけれど、その愛情を僕は今までのように素直に受け取れなくなってきて…。
 僕さえいなければ、この家族は本当の家族になれると…。
 だから僕は高校卒業と同時にバーで働きだし、家を出たんだ。
 昼夜逆転の生活。カクテルやお酒の作り方を覚えるのに精一杯。仕事場バーとアパートの往復だった生活から、少し仕事にも慣れた頃、そう、あれは6年前の花火大会の日。
 大通りでは浴衣姿の人たちがごった返す中、少し路地に入った俺が働くバーの分厚いドアを、お客として偶然やって来た晴人さんが開けたんだ。
 皺一つないスーツ姿に、すらっと伸びた背丈。漆黒のような髪を後に流し、整った容姿に大人の色気を醸し出し、晴人さんの周りだけ空気が違ってたんだよ。
 でも瞳の中にある輝きや優しい眼差しは、僕が知ってる晴人さん、そのものだった。
 晴人さんは僕を見た途端「奇跡だ…」と呟き、カウンターに駆け寄ると僕の手を握り、僕の瞳をじっと見つめ人目もはばからず「瑞稀の事、大切にする。悲しい思いは絶対にさせない!だからどうか俺と結婚してください!」とプロポーズしてくれた。
 晴人さん、あの時のこと覚えていますか?
 僕の人生で、あの時ほど驚いて、驚いて、驚いて、うれしかったことはなかったです。

 忘れもしない、その日から、僕の世界がまた動き始めたんだ。
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