2 / 202
雪の日 ②
しおりを挟む
今日はいつもより早く、保育園のお迎えに行けそうだ。
大急ぎで仕事着から私服に着替えた。
ビルの出入口から外に出ると、ビューっと強い風と共に粉雪が吹雪き、瑞稀は咄嗟に目を閉じた。
飛びそうになったマフラーを首に巻き直し、ダウンジャケットの前チャックを急いで閉める。
こんな日限って、手袋持ってくるの忘れちゃうなんて…。
そんな事を思いながら、洗剤や水で荒れ、冷たくなった両手を擦り合わせ、駅に向かう。
信号待ちで空を見上げると、灰色の空から粉雪が落ちてきて、瑞稀の頬に当たった。
粉雪を見ると、いつも思い出す。
20年前、母さんに手を引かれ、貴方の住むお屋敷で、貴方と初めて出会った日のことを。
あの日も今日のように、粉雪が風に舞っていましたね。
凍えるような寒い冬が過ぎ、暖かな風が吹き始め春が訪れると、いつも思い出す。
11年前、貴方の住むお屋敷から出ていき、貴方と離れ離れになってしまったことを。
桜の木の下、涙を堪えるが精一杯で『さよなら』と言えませんでした。
浴衣姿で夏祭りに向かう人達を見ると、いつも思い出す。
7年前、僕が働いていたバーで貴方と再会したことを。
夏の暑い夜、僕の作ったジントニックを飲む貴方の姿を見るのが、どれほど嬉しかったか。
残暑残る中、空を見上げ鱗雲を見つけると、いつも思い出す。
6年前、僕のお腹に中に貴方との子供がいることを告げず、貴方の前から姿を消した時のことを。
夏を惜しむように鳴いていた蝉の声を聞きながら、今度こそ、もう二度と貴方に会えないこと、覚悟したんです。
そしてまた冬が来て粉雪を見ると、思い出す。
貴方のことを。
どんな季節がやってきても、いつも僕の心には貴方との…、晴人さんとの思い出ばかりが浮かんでは消えていく。
貴方と出逢い、僕の世界が色付き始めた、あの頃を。
大急ぎで仕事着から私服に着替えた。
ビルの出入口から外に出ると、ビューっと強い風と共に粉雪が吹雪き、瑞稀は咄嗟に目を閉じた。
飛びそうになったマフラーを首に巻き直し、ダウンジャケットの前チャックを急いで閉める。
こんな日限って、手袋持ってくるの忘れちゃうなんて…。
そんな事を思いながら、洗剤や水で荒れ、冷たくなった両手を擦り合わせ、駅に向かう。
信号待ちで空を見上げると、灰色の空から粉雪が落ちてきて、瑞稀の頬に当たった。
粉雪を見ると、いつも思い出す。
20年前、母さんに手を引かれ、貴方の住むお屋敷で、貴方と初めて出会った日のことを。
あの日も今日のように、粉雪が風に舞っていましたね。
凍えるような寒い冬が過ぎ、暖かな風が吹き始め春が訪れると、いつも思い出す。
11年前、貴方の住むお屋敷から出ていき、貴方と離れ離れになってしまったことを。
桜の木の下、涙を堪えるが精一杯で『さよなら』と言えませんでした。
浴衣姿で夏祭りに向かう人達を見ると、いつも思い出す。
7年前、僕が働いていたバーで貴方と再会したことを。
夏の暑い夜、僕の作ったジントニックを飲む貴方の姿を見るのが、どれほど嬉しかったか。
残暑残る中、空を見上げ鱗雲を見つけると、いつも思い出す。
6年前、僕のお腹に中に貴方との子供がいることを告げず、貴方の前から姿を消した時のことを。
夏を惜しむように鳴いていた蝉の声を聞きながら、今度こそ、もう二度と貴方に会えないこと、覚悟したんです。
そしてまた冬が来て粉雪を見ると、思い出す。
貴方のことを。
どんな季節がやってきても、いつも僕の心には貴方との…、晴人さんとの思い出ばかりが浮かんでは消えていく。
貴方と出逢い、僕の世界が色付き始めた、あの頃を。
22
お気に入りに追加
680
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる