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下校 ①
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智樹は下校も環と雅樹と自分の3人で帰ると思っていた。だが下校の用意をしてた雅樹の元へ、陸上部顧問直々に迎えに来て、そのまま部活へと連れて行かれてしまった。
雅樹と環と一緒に帰りたかったのに。
下駄箱で靴を履きながら、しゅんと智樹が肩を落とすと環が智樹の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「雅樹待っとくか?」
時間をを確認すると雅樹の部活が終わるまで3時間以上ある。
そんなに環を待たせることはできない。
「ううん2人で帰ろ。俺、環と帰りたい」
智樹は微笑んでみせた。
「俺待つのかまわないぜ」
靴を履いた環がグラウンドに向かおうとすが、智樹が環の腕を掴みそれを止める。
「雅樹とはいつでも帰れるって。だから今日は先に帰ろう」
智樹はそのまま環の腕を掴んで門を出た。
いつもは早見の車の中から見ていた景色を、今日は環と肩を並べて歩く。
なんだか不思議だ。
つまらない灰色がかった景色も、隣に環《友達》がいてゆっくりと観る景色は色が鮮やかに見える。
ここに雅樹もいたらどんなに楽しいだろう?
隣を歩く環の顔を見上げると、その視線に気がついた環がニコッと笑い返す。
環は本当によく笑う。
それだけで周りが明るくなるように感じる。
「なぁ環はどうしてこの高校に編入してきたんだ?前の高校も有名な進学校だっだだろ?」
環の前行っていた学校の名前を聞いてから、智樹はずっと気になってた。そこは有名な進学校で有名大学への進学率も高い。わざわざ年度途中から編入することもなかったはずだ。
「病院が近いんだ」
「病院?環、どこか調子が悪いのか?もしそうだったら純也の親父さん、有名な総合病院の院長先生だから紹介できるぞ」
純也に相談すればなんとかなるかもしれない。
「ありがとう。でも治療が必要なのは俺じゃなくて妹の桜なんだ」
環の妹?
昨日、環の家にいたけど妹には会っていない。
どういうことだ?
「桜、心臓病で移植しない限り治らないんだ。それに前の病院より今の病院の方が設備も技術も整ってるんだ」
環はふと遠い目をする。
「桜の移植待ちはまだまだ順番が回ってこなさそうなんだ。でも俺たちは諦めたくない。だから俺は医者になって桜を助けたいんだ」
転入してきたばかりなのに、いつも笑顔で周りを明るくしている環にそんな事があったなんて…
昨日だってもしかしたら環は、桜ちゃんのお見舞いに行きたかったのかもしれない。
なのに俺が環の家にいたばっかりに…、迷惑かけたばっかりに……。
「環、俺1人で帰れる。だから桜ちゃんの所に行ってやれよ」
俺にできることはそれぐらいだ。
「それじゃあ智樹が危ない」
心配そうに環が智樹を見る。
「大丈夫だよ。俺もう子供じゃないし1人で帰れる。それでも心配なら、雅樹と一緒に帰るから…。環は桜ちゃんの所へ…」
「あ!智樹も一緒に桜の病院《ところ》に行かないか?そうだよ!一緒に行こ!」
環は『いい事を思いついた!』と言うように智樹の手を握る。
「俺はいいけど、桜ちゃん嫌じゃないか?知らない俺なんかが行って…」
見舞いって誰でもいいから来て欲しいもんじゃないし…
「そんな事ない!桜も喜ぶよ!な!智樹、一緒に行こう!」
キラキラした目で環が智樹を見つめると、
「桜ちゃんの好きな食べ物ってなに?」
「好きな食べ物?プリンだけどなんで?」
智樹の問いかけに環が首を傾げた。
「持ってくんだよ。桜ちゃんに会いにいくのに、手ぶらでいくわけないじゃん」
今度は智樹が環の腕を掴む。
「一緒に行ってくれるのか!?ありがとう智樹。ちなみに俺はシュークリームが好きだ」
「それは自分で買え」
えへへと笑う環とつられて笑う智樹は少し早足で店へと急いだ。
雅樹と環と一緒に帰りたかったのに。
下駄箱で靴を履きながら、しゅんと智樹が肩を落とすと環が智樹の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「雅樹待っとくか?」
時間をを確認すると雅樹の部活が終わるまで3時間以上ある。
そんなに環を待たせることはできない。
「ううん2人で帰ろ。俺、環と帰りたい」
智樹は微笑んでみせた。
「俺待つのかまわないぜ」
靴を履いた環がグラウンドに向かおうとすが、智樹が環の腕を掴みそれを止める。
「雅樹とはいつでも帰れるって。だから今日は先に帰ろう」
智樹はそのまま環の腕を掴んで門を出た。
いつもは早見の車の中から見ていた景色を、今日は環と肩を並べて歩く。
なんだか不思議だ。
つまらない灰色がかった景色も、隣に環《友達》がいてゆっくりと観る景色は色が鮮やかに見える。
ここに雅樹もいたらどんなに楽しいだろう?
隣を歩く環の顔を見上げると、その視線に気がついた環がニコッと笑い返す。
環は本当によく笑う。
それだけで周りが明るくなるように感じる。
「なぁ環はどうしてこの高校に編入してきたんだ?前の高校も有名な進学校だっだだろ?」
環の前行っていた学校の名前を聞いてから、智樹はずっと気になってた。そこは有名な進学校で有名大学への進学率も高い。わざわざ年度途中から編入することもなかったはずだ。
「病院が近いんだ」
「病院?環、どこか調子が悪いのか?もしそうだったら純也の親父さん、有名な総合病院の院長先生だから紹介できるぞ」
純也に相談すればなんとかなるかもしれない。
「ありがとう。でも治療が必要なのは俺じゃなくて妹の桜なんだ」
環の妹?
昨日、環の家にいたけど妹には会っていない。
どういうことだ?
「桜、心臓病で移植しない限り治らないんだ。それに前の病院より今の病院の方が設備も技術も整ってるんだ」
環はふと遠い目をする。
「桜の移植待ちはまだまだ順番が回ってこなさそうなんだ。でも俺たちは諦めたくない。だから俺は医者になって桜を助けたいんだ」
転入してきたばかりなのに、いつも笑顔で周りを明るくしている環にそんな事があったなんて…
昨日だってもしかしたら環は、桜ちゃんのお見舞いに行きたかったのかもしれない。
なのに俺が環の家にいたばっかりに…、迷惑かけたばっかりに……。
「環、俺1人で帰れる。だから桜ちゃんの所に行ってやれよ」
俺にできることはそれぐらいだ。
「それじゃあ智樹が危ない」
心配そうに環が智樹を見る。
「大丈夫だよ。俺もう子供じゃないし1人で帰れる。それでも心配なら、雅樹と一緒に帰るから…。環は桜ちゃんの所へ…」
「あ!智樹も一緒に桜の病院《ところ》に行かないか?そうだよ!一緒に行こ!」
環は『いい事を思いついた!』と言うように智樹の手を握る。
「俺はいいけど、桜ちゃん嫌じゃないか?知らない俺なんかが行って…」
見舞いって誰でもいいから来て欲しいもんじゃないし…
「そんな事ない!桜も喜ぶよ!な!智樹、一緒に行こう!」
キラキラした目で環が智樹を見つめると、
「桜ちゃんの好きな食べ物ってなに?」
「好きな食べ物?プリンだけどなんで?」
智樹の問いかけに環が首を傾げた。
「持ってくんだよ。桜ちゃんに会いにいくのに、手ぶらでいくわけないじゃん」
今度は智樹が環の腕を掴む。
「一緒に行ってくれるのか!?ありがとう智樹。ちなみに俺はシュークリームが好きだ」
「それは自分で買え」
えへへと笑う環とつられて笑う智樹は少し早足で店へと急いだ。
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