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誤解
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雅樹、怒ってないかな?
また喧嘩になんてならないかな?
本当は喧嘩なんかしたくないのに……。
早見の車で家まで送ってもらった智樹は、玄関のドアを開ける時躊躇しながらも、ゆっくりとドアを開けた瞬間、
!!!!
智樹の体に何かが飛びついてきた。
「雅樹… ?」
広い胸から智樹が逃げてしまわないように、雅樹はギュッと抱きしめ、智樹の肩に顔を埋める。
「おかえり智樹…」
「ただいま」
「もう…、もう帰ってこないかと思った…」
「帰ってくるよ」
智樹の肩に顔を埋めたままの雅樹の頭を、智樹が撫でると、雅樹は怯えるように体を震わせていた。
「俺、あんなキスしたかった訳じゃないんだ…」
「うん」
「智樹から幸樹兄さんの香りがしたから、それを消したかったんだ…」
「うん」
まだ智樹の肩から頭を上げない雅樹の頭を、智樹は撫でる。
「晩飯も食べずに部屋から出てこない智樹のことがか心配で、夜中寝顔を見に行ったら、智樹いなくて…」
「うん」
「家中探したけど、いなくて…」
「…」
「スマホも財布も置いてあったから、誰かに連れ去られたのかと思った…。夜中飛び出して、探し回ったけど、どこにもいなくて…。智樹フェロモン出てたし…智樹の身に何かあったら…って思ったら俺、生きてけないって……」
「!!」
夜中中探してた?
俺を?
「敬也さん達にも探してもらったけど、智樹見つからなくて…」
「…」
「『帰ってくるかもしれないから、雅樹は家で待ってろ』って言われて家に着いたら…智樹、普通の顔して帰ってきて…」
「…」
「『俺の気も知らないで!!』ってなったら止まらなかった。本当はあんなこと言いたかったんじゃないんだ。『帰ってきてくれて嬉しい』って、『無事でよかった』って。『智樹の気持ち考えずに、あんなマークつけてごめん』って謝りたかった…」
雅樹の声が涙声になり、智樹の存在を確認するかのように、雅樹はより智樹の肩に頭を埋める。
「あんなに怒鳴ってごめん…。智樹を怖がらせるメール送ってごめん…。俺、智樹がいないと生きてけない。生きてる意味なんてない…。智樹が帰ってきてくれて嬉しい。無事でいてくれて嬉しい…」
智樹を抱きしめる雅樹の腕に力がはいり、智樹はより雅樹に抱きしめられた。
「雅樹……」
俺こそごめん…。
心配かけてごめん。
無視してごめん。
雅樹の事、一番よく知ってるのに…。
雅樹の気持ち考えなくてごめん。
俺も雅樹がいないと生きてけない…。
「本当にごめん…。ごめんなさい、智樹…。俺、俺…」
「はいはい雅樹。そんなに抱きしめたら智樹が困ってるわよ」
雅樹の後ろから2人の様子を見守っていた母親が、雅樹に声を掛けた。
「おかえり智樹。…お腹すいてない?今日は智樹の好きなエビフライ」
そう言われると、キッチンからいい香りがする。
「昨日も俺の好きなメニューだったのに…。ありがとう母さん」
昨日といい、今といい、智樹は母親の気遣いが本当に嬉しかった。
それはまるで『帰ってきてくれて、嬉しい』と言ってくれているようだ。
「そりゃ、智樹がいくつになっても、可愛い可愛い私の大切な息子ですもの。さ、お父さん帰ってくる前に食べちゃいなさい。ほら、雅樹は智樹から離れる」
母親に雅樹は無理矢理、智樹と離れさせられる。
「手、洗ってらっしゃい」
「…うん!」
智樹が洗面所に向かおうとすると、
⁉︎
雅樹が智樹の服を引っ張っていた。
「雅樹、どうした?」
「智樹…もう、どこにも行かない?俺の前から急にいなくなったりしないか?」
智樹から体を離した雅樹は、不安気に智樹を見つめる。
よくよく雅樹の事を見ると、雅樹の姿は激変していた。
昨晩と今日半日、たったこれだけの時間離れてただけなのに、顔面蒼白で、やつれ、いつものはつらつとした雅樹とかけ離れている。
「雅樹、もしかして昨日から何も食べてない?」
「……」
「寝てない?」
「……」
雅樹は智樹の問いかけに、何も答えない。
何か言ったら、俺が怒ると思ってるのか?
じゃあ、雅樹が必ず答えそうな質問…
「風呂、入った?」
「‼︎臭った⁉︎」
雅樹が急いで智樹から離れる。
ほら、やっぱり喋った。
「臭くない」
今度は智樹から雅樹を抱きしめた。
「雅樹の匂いしかしない。俺の大好きな雅樹の匂い」
首に腕を回し背伸びをた智樹は、スンっと雅樹の首筋を嗅いだ。
「雅樹、ご飯食べた?」
「それどころじゃ…なかった…」
「寝た?」
「それどころじゃ…なかった…」
雅樹の口からは『それどころじゃなかった』。
それしか出てこない。
そんなに心配させてたのに、俺は1人、環の家でくつろいでた…
「ごめんな…雅樹…」
智樹の口から、雅樹に対しての謝罪の言葉が出た。
「!!」
雅樹の口からは何も発せられなかった。
でも、智樹の言葉の『ごめんな』に対して、『俺こそ、ごめん…』という風に、智樹の背中に恐る恐る腕を回すと、瞳からポロポロと涙を溢す。
ごめんな、雅樹。
わかってるよ、雅樹。
言葉に表してなくても。
いつから一緒にいると思ってるんだよ。
母さんのお腹の中からだぞ。
「雅樹一緒に、手、洗いに行こ」
幼い時にしていたように、雅樹の手を智樹が引くと、こくりと頷き、雅樹も智樹の手を握り返した。
また喧嘩になんてならないかな?
本当は喧嘩なんかしたくないのに……。
早見の車で家まで送ってもらった智樹は、玄関のドアを開ける時躊躇しながらも、ゆっくりとドアを開けた瞬間、
!!!!
智樹の体に何かが飛びついてきた。
「雅樹… ?」
広い胸から智樹が逃げてしまわないように、雅樹はギュッと抱きしめ、智樹の肩に顔を埋める。
「おかえり智樹…」
「ただいま」
「もう…、もう帰ってこないかと思った…」
「帰ってくるよ」
智樹の肩に顔を埋めたままの雅樹の頭を、智樹が撫でると、雅樹は怯えるように体を震わせていた。
「俺、あんなキスしたかった訳じゃないんだ…」
「うん」
「智樹から幸樹兄さんの香りがしたから、それを消したかったんだ…」
「うん」
まだ智樹の肩から頭を上げない雅樹の頭を、智樹は撫でる。
「晩飯も食べずに部屋から出てこない智樹のことがか心配で、夜中寝顔を見に行ったら、智樹いなくて…」
「うん」
「家中探したけど、いなくて…」
「…」
「スマホも財布も置いてあったから、誰かに連れ去られたのかと思った…。夜中飛び出して、探し回ったけど、どこにもいなくて…。智樹フェロモン出てたし…智樹の身に何かあったら…って思ったら俺、生きてけないって……」
「!!」
夜中中探してた?
俺を?
「敬也さん達にも探してもらったけど、智樹見つからなくて…」
「…」
「『帰ってくるかもしれないから、雅樹は家で待ってろ』って言われて家に着いたら…智樹、普通の顔して帰ってきて…」
「…」
「『俺の気も知らないで!!』ってなったら止まらなかった。本当はあんなこと言いたかったんじゃないんだ。『帰ってきてくれて嬉しい』って、『無事でよかった』って。『智樹の気持ち考えずに、あんなマークつけてごめん』って謝りたかった…」
雅樹の声が涙声になり、智樹の存在を確認するかのように、雅樹はより智樹の肩に頭を埋める。
「あんなに怒鳴ってごめん…。智樹を怖がらせるメール送ってごめん…。俺、智樹がいないと生きてけない。生きてる意味なんてない…。智樹が帰ってきてくれて嬉しい。無事でいてくれて嬉しい…」
智樹を抱きしめる雅樹の腕に力がはいり、智樹はより雅樹に抱きしめられた。
「雅樹……」
俺こそごめん…。
心配かけてごめん。
無視してごめん。
雅樹の事、一番よく知ってるのに…。
雅樹の気持ち考えなくてごめん。
俺も雅樹がいないと生きてけない…。
「本当にごめん…。ごめんなさい、智樹…。俺、俺…」
「はいはい雅樹。そんなに抱きしめたら智樹が困ってるわよ」
雅樹の後ろから2人の様子を見守っていた母親が、雅樹に声を掛けた。
「おかえり智樹。…お腹すいてない?今日は智樹の好きなエビフライ」
そう言われると、キッチンからいい香りがする。
「昨日も俺の好きなメニューだったのに…。ありがとう母さん」
昨日といい、今といい、智樹は母親の気遣いが本当に嬉しかった。
それはまるで『帰ってきてくれて、嬉しい』と言ってくれているようだ。
「そりゃ、智樹がいくつになっても、可愛い可愛い私の大切な息子ですもの。さ、お父さん帰ってくる前に食べちゃいなさい。ほら、雅樹は智樹から離れる」
母親に雅樹は無理矢理、智樹と離れさせられる。
「手、洗ってらっしゃい」
「…うん!」
智樹が洗面所に向かおうとすると、
⁉︎
雅樹が智樹の服を引っ張っていた。
「雅樹、どうした?」
「智樹…もう、どこにも行かない?俺の前から急にいなくなったりしないか?」
智樹から体を離した雅樹は、不安気に智樹を見つめる。
よくよく雅樹の事を見ると、雅樹の姿は激変していた。
昨晩と今日半日、たったこれだけの時間離れてただけなのに、顔面蒼白で、やつれ、いつものはつらつとした雅樹とかけ離れている。
「雅樹、もしかして昨日から何も食べてない?」
「……」
「寝てない?」
「……」
雅樹は智樹の問いかけに、何も答えない。
何か言ったら、俺が怒ると思ってるのか?
じゃあ、雅樹が必ず答えそうな質問…
「風呂、入った?」
「‼︎臭った⁉︎」
雅樹が急いで智樹から離れる。
ほら、やっぱり喋った。
「臭くない」
今度は智樹から雅樹を抱きしめた。
「雅樹の匂いしかしない。俺の大好きな雅樹の匂い」
首に腕を回し背伸びをた智樹は、スンっと雅樹の首筋を嗅いだ。
「雅樹、ご飯食べた?」
「それどころじゃ…なかった…」
「寝た?」
「それどころじゃ…なかった…」
雅樹の口からは『それどころじゃなかった』。
それしか出てこない。
そんなに心配させてたのに、俺は1人、環の家でくつろいでた…
「ごめんな…雅樹…」
智樹の口から、雅樹に対しての謝罪の言葉が出た。
「!!」
雅樹の口からは何も発せられなかった。
でも、智樹の言葉の『ごめんな』に対して、『俺こそ、ごめん…』という風に、智樹の背中に恐る恐る腕を回すと、瞳からポロポロと涙を溢す。
ごめんな、雅樹。
わかってるよ、雅樹。
言葉に表してなくても。
いつから一緒にいると思ってるんだよ。
母さんのお腹の中からだぞ。
「雅樹一緒に、手、洗いに行こ」
幼い時にしていたように、雅樹の手を智樹が引くと、こくりと頷き、雅樹も智樹の手を握り返した。
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