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中編
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「お久しぶりです、陛下」
「ああ、久しぶりだな。レオン……」
挨拶を交わした後、二人はお互いに見つめ合ったまま動かなかった。
「相変わらず美しい方だ」
陛下はレオンの婚約者となる少女を見てそう言ったのだった。
「恐れ入ります……」
少女は恭しく頭を下げて、そう言った。
「ああ、レオン、これほど美しい女子を妃に迎え入れることができて、幸せなのはよく分かる。だがな、お前にはもう一つ大切な仕事が残っていることを忘れてはいないかな???」
「それは、なんでしょうか???」
「おいおい、まさか忘れたわけではあるまいね???ミクリッツ王国との講和条約締結について、お前に任せた大切な仕事だよ」
レオンはここまで言われて初めて思い出した。隣国のミクリッツ王国とは長年戦争を繰り返してきたのだが、その度にお互い疲弊してきた。そのため、これ以上戦争を続けることが無意味だと悟った両国元首が、講和条約締結を一刻も早く望むこととなった。そして、条約締結とは他に、ミクリッツ王国の令嬢とアルタイル王国の貴族を婚約させて結束するという、新たな計画が浮上したわけで、その仲人を務めるというのが、王子レオンに与えられたミッションだったわけなのだ。
「ああ、そんなこともありましたっけ???」
「はあああっ……」
陛下は深いため息をついた。
「もう少ししたら、私はお前に全てを譲るつもりだったのだが、それはまだ早いようだな」
「恐縮です!!!」
「お前が恐縮してどうするんだ……」
陛下は呆れ果てて、これ以上王子レオンを叱る気力も失せていた。
「それで、お前の知り合いでもなんでもいいが、どうなんだね、ミクリッツ王国の御令嬢の婚約候補の目星はあるのかね???」
「そんなことを急に言われましても……」
王子レオンは一瞬迷った。だがすぐに、この問題を解決する方策を悟った。
「いや、一人おりますよ!!!私の同級生で、まだ婚約相手のいない伯爵が一人!!!早速呼んできます!!!」
そう言って、王子レオンはある男のところへ向かうのだった。
「シリウス!!!シリウスはいるか???」
そう、王子レオンが白羽の矢を立てたのは、伯爵シリウスだった。
「王子、部屋に入る時はノックくらいしませんと???そのくらいの常識もないのですか???」
シリウスは怪訝そうな顔をした。
「おいおい、シリウス。そんな説教を聞いている暇はないんだ。さあ、早く来るんだ!!!」
「説教じゃありません。私はあなた様の常識を疑っているだけなのです。って、あの……私をどこに連れていくのですか???」
「黙ってついてこればいいんだ!!!!」
王子レオンは強引にシリウスの手を引いて、陛下のところへ連れていった。シリウスはいきなり、陛下の前まで来させられて、仰天してしまった。
「陛下!!!ああ、はしたない姿をお見せいたしまして、申し訳ございません!!!」
陛下はにこやかに微笑んだ。
「ああ、そんなに恐縮されるとこちらが困るからな。君は、レオンの友人なのか???」
「はああっ、レオン様とは学院時代の同級生でございまして……」
「その通りでございます、父上」
王子レオンが先に答えてしまった。
「そうかそうか、レオンの友達なのか。ああ、いつもレオンが世話になっているなあ」
陛下はそう言って、シリウスの手を取った。
「いえいえ……恐縮でございます!!!!」
「ああ、だからそんなに恐縮しなくていいんだよ。なあ、そうだろう???」
「はいっ、申し訳ございません!!!!」
「ああ、よく教育されたご子息だな……どこかの誰かとは違って……」
この嫌味は陛下の完全な独り言と解釈され、誰もがスルーした。もちろん、レオンの耳にも届いていたのだが、知らんぷりをした。シリウスはこの場に自分が呼ばれた理由が分からなかった。
「つまりはだな、君の婚約候補者を紹介しようと思っているんだよ……」
レオンがシリウスに今進んでいる話を説明すると、当然のことながら、シリウスは困惑することとなった。
確かに婚約者はいない。だがしかし、彼には幼馴染のアゼルスがいた。いくら、皇帝陛下が隣国の婚約者との縁談を持ちかけてきたとしても、それに答えることは到底できないと心の底で思っていたのだ。もちろん、そんなことを口に出すことはできなかったのだが……。
「ああ、久しぶりだな。レオン……」
挨拶を交わした後、二人はお互いに見つめ合ったまま動かなかった。
「相変わらず美しい方だ」
陛下はレオンの婚約者となる少女を見てそう言ったのだった。
「恐れ入ります……」
少女は恭しく頭を下げて、そう言った。
「ああ、レオン、これほど美しい女子を妃に迎え入れることができて、幸せなのはよく分かる。だがな、お前にはもう一つ大切な仕事が残っていることを忘れてはいないかな???」
「それは、なんでしょうか???」
「おいおい、まさか忘れたわけではあるまいね???ミクリッツ王国との講和条約締結について、お前に任せた大切な仕事だよ」
レオンはここまで言われて初めて思い出した。隣国のミクリッツ王国とは長年戦争を繰り返してきたのだが、その度にお互い疲弊してきた。そのため、これ以上戦争を続けることが無意味だと悟った両国元首が、講和条約締結を一刻も早く望むこととなった。そして、条約締結とは他に、ミクリッツ王国の令嬢とアルタイル王国の貴族を婚約させて結束するという、新たな計画が浮上したわけで、その仲人を務めるというのが、王子レオンに与えられたミッションだったわけなのだ。
「ああ、そんなこともありましたっけ???」
「はあああっ……」
陛下は深いため息をついた。
「もう少ししたら、私はお前に全てを譲るつもりだったのだが、それはまだ早いようだな」
「恐縮です!!!」
「お前が恐縮してどうするんだ……」
陛下は呆れ果てて、これ以上王子レオンを叱る気力も失せていた。
「それで、お前の知り合いでもなんでもいいが、どうなんだね、ミクリッツ王国の御令嬢の婚約候補の目星はあるのかね???」
「そんなことを急に言われましても……」
王子レオンは一瞬迷った。だがすぐに、この問題を解決する方策を悟った。
「いや、一人おりますよ!!!私の同級生で、まだ婚約相手のいない伯爵が一人!!!早速呼んできます!!!」
そう言って、王子レオンはある男のところへ向かうのだった。
「シリウス!!!シリウスはいるか???」
そう、王子レオンが白羽の矢を立てたのは、伯爵シリウスだった。
「王子、部屋に入る時はノックくらいしませんと???そのくらいの常識もないのですか???」
シリウスは怪訝そうな顔をした。
「おいおい、シリウス。そんな説教を聞いている暇はないんだ。さあ、早く来るんだ!!!」
「説教じゃありません。私はあなた様の常識を疑っているだけなのです。って、あの……私をどこに連れていくのですか???」
「黙ってついてこればいいんだ!!!!」
王子レオンは強引にシリウスの手を引いて、陛下のところへ連れていった。シリウスはいきなり、陛下の前まで来させられて、仰天してしまった。
「陛下!!!ああ、はしたない姿をお見せいたしまして、申し訳ございません!!!」
陛下はにこやかに微笑んだ。
「ああ、そんなに恐縮されるとこちらが困るからな。君は、レオンの友人なのか???」
「はああっ、レオン様とは学院時代の同級生でございまして……」
「その通りでございます、父上」
王子レオンが先に答えてしまった。
「そうかそうか、レオンの友達なのか。ああ、いつもレオンが世話になっているなあ」
陛下はそう言って、シリウスの手を取った。
「いえいえ……恐縮でございます!!!!」
「ああ、だからそんなに恐縮しなくていいんだよ。なあ、そうだろう???」
「はいっ、申し訳ございません!!!!」
「ああ、よく教育されたご子息だな……どこかの誰かとは違って……」
この嫌味は陛下の完全な独り言と解釈され、誰もがスルーした。もちろん、レオンの耳にも届いていたのだが、知らんぷりをした。シリウスはこの場に自分が呼ばれた理由が分からなかった。
「つまりはだな、君の婚約候補者を紹介しようと思っているんだよ……」
レオンがシリウスに今進んでいる話を説明すると、当然のことながら、シリウスは困惑することとなった。
確かに婚約者はいない。だがしかし、彼には幼馴染のアゼルスがいた。いくら、皇帝陛下が隣国の婚約者との縁談を持ちかけてきたとしても、それに答えることは到底できないと心の底で思っていたのだ。もちろん、そんなことを口に出すことはできなかったのだが……。
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