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結局のところ、カーチャに導かれて旦那様の屋敷に戻った。旦那様やお母様にばれてしまうのは非常にまずかったので、この作戦は秘密裏に実行された。
ひとまず、私の部屋は地下の物置小屋と決まった。正直どこでも良かった。誰の目にも触れない暗がり…閉ざされた空間が私には似合っていた。
「最低限の食事や衣装の方は手配させていただきますので、ご心配なく…」
カーチャが言うところの最低限は私が思う最高レベルだった。こんな奴隷みたいな身分であっても、一応は人間として扱ってくれるようだった。子育てを任せることに恩義を感じているから?
カーチャの出産が近づくと、屋敷内は大騒ぎだった。それもそのはず、公爵家待望の跡取りになるわけだから。地下に居ても上の階の声が聞こえてくるほどだった。この屋敷内で何もせず生活しているのは、たぶん私だけだった。
いいじゃないか。別に怨んでいるわけではないが…公爵家の寄生虫として生きるのも。カーチャの言っていることが本当だったら、こんな滑稽な話はないと思った。公爵家の血筋を引く、正真正銘旦那様の子供と言われても、実際はどこの馬の骨とも知らない男の子供だったら。
カーチャの出産現場はどうやら、私の部屋の真上だった。産まれる頃合いになって、カーチャの声がよく響いたものだから。うるさくて一睡も出来なかった。まあ、女にとっては一大イベントだからね。同性として許してあげた。
「お子様が産まれました!」
産まれた瞬間、騒めきが一際大きくなった。きっと旦那様やお母様たちが喜んでいたのだろう。私はやはり、笑いを堪えることが出来なかった。こんな滑稽な話があるだろうか…ないよね、普通は。でも…これが彼らのやり方なのだから、それでいいんだ。
さあ、これから忙しくなる…と思ったんだけど、そんな私に、いや、公爵家全体としても予想外の出来事が起きてしまった。そのお子様がなんと、産まれて3日後に亡くなってしまったのだ…。
ひとまず、私の部屋は地下の物置小屋と決まった。正直どこでも良かった。誰の目にも触れない暗がり…閉ざされた空間が私には似合っていた。
「最低限の食事や衣装の方は手配させていただきますので、ご心配なく…」
カーチャが言うところの最低限は私が思う最高レベルだった。こんな奴隷みたいな身分であっても、一応は人間として扱ってくれるようだった。子育てを任せることに恩義を感じているから?
カーチャの出産が近づくと、屋敷内は大騒ぎだった。それもそのはず、公爵家待望の跡取りになるわけだから。地下に居ても上の階の声が聞こえてくるほどだった。この屋敷内で何もせず生活しているのは、たぶん私だけだった。
いいじゃないか。別に怨んでいるわけではないが…公爵家の寄生虫として生きるのも。カーチャの言っていることが本当だったら、こんな滑稽な話はないと思った。公爵家の血筋を引く、正真正銘旦那様の子供と言われても、実際はどこの馬の骨とも知らない男の子供だったら。
カーチャの出産現場はどうやら、私の部屋の真上だった。産まれる頃合いになって、カーチャの声がよく響いたものだから。うるさくて一睡も出来なかった。まあ、女にとっては一大イベントだからね。同性として許してあげた。
「お子様が産まれました!」
産まれた瞬間、騒めきが一際大きくなった。きっと旦那様やお母様たちが喜んでいたのだろう。私はやはり、笑いを堪えることが出来なかった。こんな滑稽な話があるだろうか…ないよね、普通は。でも…これが彼らのやり方なのだから、それでいいんだ。
さあ、これから忙しくなる…と思ったんだけど、そんな私に、いや、公爵家全体としても予想外の出来事が起きてしまった。そのお子様がなんと、産まれて3日後に亡くなってしまったのだ…。
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