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「アンナ、愛している!」

「私も…旦那様のことを愛しております!」

「今日も子作りに励もうではないか、寝かさないぞ!」

「はいっ…私に旦那様の子種をたくさんくださいっ!」

 こんな破廉恥なやり取りを毎晩していたのが懐かしい…旦那様は最近ほとんど話もしてくれなくなった。

 私の旦那様は名門公爵家の血筋を引くチャールズ様である。私は…それほど高貴な家の出身ではないが、曰く旦那様の一目惚れであったと。出会ったその日にプロポーズされ、私は正式に旦那様と婚約を交わすことになった。

 それから、旦那様は激しく私を愛してくれた。理由は分からなかったが、とにかく私の身体を必死に貪った。私は女として求められるのが嬉しかった。発情した旦那様が求めれば、私はいつでも身体を旦那様に許した。

 旦那様は子供が欲しかった。公爵家の後継ぎである。私のことを愛して…一刻も早く私が身籠ることを楽しみにしていたのだ。

 そんな新婚気分は長く続かなかった。旦那様がどれほど頑張っても…もちろん、私も必死に頑張ったのだが、無理だった。旦那様はしばらく私のことを魅力的な女として見てくれていた。激しい夜は毎晩続いた。でも、私の身体が悲鳴を上げた。毎晩毎晩旦那様に認められて、私の肉体は限界を迎えていた。

 旦那様は子種をたくさん注いだ…それでも、結果として私が旦那様の子供を孕むことはなかった。そうなると、公爵家の面々がでしゃばってきて、今度は私のメンタルが段々ダメになっていった。一番酷かったのは旦那様のお母様だった。子供を孕まない女はろくでなし…最悪の場合、公爵家の名誉に関わるので離縁の可能性もあると。

 旦那様は最初の頃は私のことを庇ってくれた。でも、旦那様も段々と焦るようになった。世継ぎが生まれないというのは、公爵家にとっては重大な問題だったのだ。

 こうして、私は旦那様の夜の相手をする頻度が減っていった。最近は側室という概念が無くなりつつあるのだが、旦那様のお母様の命令により(つまり、私の意志に関係なく)、全国から令嬢が集められ、旦那様は夜な夜な側室の相手をするようになっていった。

 側室を設けてから1年ほど経過したが、やはり誰一人として旦那様の子供を孕む者は出てこなかった。令嬢だから無理…そう考えたお母様はもはやどこの馬の骨とも知らない卑しい身分の女たちまで連れてくるようになり、旦那様はそんな女たちの相手をするようになった。身元不詳の女との間に出来た子供なんてろくでもないに決まっている、そう思ったが、公爵家としてはとにかく世継ぎが出来ないと言うのが一番の問題だったのだ。

 ひょっとして…旦那様に問題があるのでは、なんて考えたこともあった。数十人の女を相手にして誰も子供を孕まないというのは流石におかしいと思った。でも、それを言うのはまずいと思ったので敢えて黙っていた。

 なんだかんだで時間だけが過ぎていった。私が旦那様と正式に婚約してちょうど2年経った日のこと…ある女が懐妊したとの情報がもたらされた。噂によれば元々娼婦だったらしい。それでも、旦那様の子供を身籠ったので、公爵家の人々は大層喜んだ。

 娼婦がいきなり旦那様の第一側室…正妻であるこの私の地位が崩壊するのも時間の問題だと思われた。









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