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この日から、我が家の日常生活風景は大きく変わることとなりました。あと一週間足らずで王子様の正妻になるわけですから、何もしないわけにはいきませんでした。
「クレア様!!!起きてください!!!」
私は昼寝が得意、昼食を終えた後は特にやることが無いので、自室に籠って睡眠……といういつものルーチンを壊す敵が増えました。
「なによ、エミリー。わたしは今、休憩をしているところなんだから」
「お黙りなさい!!!」
そう言って、エミリーは私を包む布団をひっぺかしました。
「クレア様!!!この一大事になにのんきにお昼寝なんかされているんですか!!!」
「一大事???」
私はこのときまだ半分夢の中におりました。そう、現実世界が目まぐるしく変化することに、自分の身体と思考が全く追いついておりませんでした。
「そんなダメダメ人間では……すぐさま旦那様に捨てられてしまいますわよ!!!」
「旦那様???私の旦那様が一体どこにいるって言うのよ…………」
自分で話すうちに、私は段々と思い出しました。そうです、私は第一王子のアンソニー様からプロポーズを受けたのでした。
「ああ、クレア様がこんな感じでは……ライツ公爵家の行く末が心配ですわ……」
「あなたねえ……私の心配はしてくれないの???」
「ええ。しておりません」
エミリーはきっぱりと答えました。
「クレア様の変わりはいくらでもいらっしゃいますから……」
「代わりですって???この家には私しかいないでしょうに」
「まあ、今のところはですね。でも、公爵様がこの事態に気がつかれましたら、恐らく新しい世継ぎを作られるでしょう。まだまだお若くていらっしゃいますからね、旦那様は」
「お前というやつは……まあ、いいわ。そこまで言うんだったら、私なんて一層どうでもいい存在になるじゃないの。辞めたわ、こんなバカバカしい話は」
「どうして、そうあなた様はいつもいつも短絡的なんですか!!!」
「ねえ、エミリー。あなた、今日は特別に期限が悪いわね」
「期限が悪いもなにも、いい歳をした公爵令嬢様が、未だ子供だからですよ!!!本気でこの家のことを私は案じております!!!」
メイドとして長年我が家に仕えてきたエミリー……彼女に言われてしまうと、私は何だか申し訳ない気分になってしまうのでした。
「とにかく、これからお嬢様の環境はがらりと変わるのですから。この家では許されることであっても……王宮に入られてからは通用しないことがたくさんあるはずです!!!ですから、この一週間は、私も心を鬼にして、クレア様の教育に当たる覚悟です!!!」
心配してくれるのは嬉しいと思いましたが、そこまで強攻でなくてもいいのでは、と私は思いました。でもまあ、確かに私は一人娘だったせいもありましょうが、両親からは比較的甘やかされて育ったのかもしれません。それが、結果として今回の悲劇を招いた……と言われてしまうと、それも否定できないと思いました。
「クレア様!!!起きてください!!!」
私は昼寝が得意、昼食を終えた後は特にやることが無いので、自室に籠って睡眠……といういつものルーチンを壊す敵が増えました。
「なによ、エミリー。わたしは今、休憩をしているところなんだから」
「お黙りなさい!!!」
そう言って、エミリーは私を包む布団をひっぺかしました。
「クレア様!!!この一大事になにのんきにお昼寝なんかされているんですか!!!」
「一大事???」
私はこのときまだ半分夢の中におりました。そう、現実世界が目まぐるしく変化することに、自分の身体と思考が全く追いついておりませんでした。
「そんなダメダメ人間では……すぐさま旦那様に捨てられてしまいますわよ!!!」
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自分で話すうちに、私は段々と思い出しました。そうです、私は第一王子のアンソニー様からプロポーズを受けたのでした。
「ああ、クレア様がこんな感じでは……ライツ公爵家の行く末が心配ですわ……」
「あなたねえ……私の心配はしてくれないの???」
「ええ。しておりません」
エミリーはきっぱりと答えました。
「クレア様の変わりはいくらでもいらっしゃいますから……」
「代わりですって???この家には私しかいないでしょうに」
「まあ、今のところはですね。でも、公爵様がこの事態に気がつかれましたら、恐らく新しい世継ぎを作られるでしょう。まだまだお若くていらっしゃいますからね、旦那様は」
「お前というやつは……まあ、いいわ。そこまで言うんだったら、私なんて一層どうでもいい存在になるじゃないの。辞めたわ、こんなバカバカしい話は」
「どうして、そうあなた様はいつもいつも短絡的なんですか!!!」
「ねえ、エミリー。あなた、今日は特別に期限が悪いわね」
「期限が悪いもなにも、いい歳をした公爵令嬢様が、未だ子供だからですよ!!!本気でこの家のことを私は案じております!!!」
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「とにかく、これからお嬢様の環境はがらりと変わるのですから。この家では許されることであっても……王宮に入られてからは通用しないことがたくさんあるはずです!!!ですから、この一週間は、私も心を鬼にして、クレア様の教育に当たる覚悟です!!!」
心配してくれるのは嬉しいと思いましたが、そこまで強攻でなくてもいいのでは、と私は思いました。でもまあ、確かに私は一人娘だったせいもありましょうが、両親からは比較的甘やかされて育ったのかもしれません。それが、結果として今回の悲劇を招いた……と言われてしまうと、それも否定できないと思いました。
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