上 下
7 / 10

その7

しおりを挟む
表面だけを見ていれば、私どもの夫婦仲は案外順風満帆だったのかもしれません。

ですが……実際にはどうだったのでしょうか???正直に申し上げて、あんまり芳しくはなかったと思います。

というのも、スミス様は私と面と向かっているときは、

「ああ、今日も美しいですね!!!」

といつもの口調でお世辞を言うわけでございますが、時々お酒を飲まれると、

「ああ、この世界にもっと美しい女ってものはいないのかねえ!!!ああ、ヘレンよりも美しい女なんていないか!!!」

と言って、妹のヘレン様を随分と持ち上げるわけでございます。

まあ、仕方がないとは思うのです。こうなってしまうのも。別に私が悪いわけではないと思いますが、それにしたって、スミス様とヘレン様は仲良しなんですね。ああ、本当は夜の逢瀬でも重ねているんじゃないかって、疑問に感じてしまうレベルに。

だって、実際のところ、二人が互いを見つめあうとき、それは単純に兄妹の関係には見えないわけでございます。

本当は愛し合っているのでは???そんな疑惑がどんどん深まっていくわけです。もちろん、面と向かって確認することはできませんし、それこそ、ナンセンスと言われてしまうでしょう。ですがね……こんなことは本当にあまり言いたくないのですが、やはり、問題だと思うのです。

この歪な関係に終止符が必要……誰だって、きっとそう思うはずなのです。


そんな疑心暗鬼を抱えながら、私はかりそめの夫婦関係を生き抜こうと頑張っておりました。その背後には離縁という言葉がちらつきながら……その果てには何があるのか、と考えながら。


ある夜のこと。

時々、スミス様は仕事があるからと言って、ベッドを共にしないことがあります。もちろん、スミス様のすることにいちいち干渉することなんてできませんから、文句なんて何も言いませんが、それでも気になってはしまいます。

夜に仕事なんて、普通はないでしょう。まあ、下級の貴族の子息たちが王宮の警護などに駆り出されるってことはあるかもしれませんが、スミス様の場合、そういう雑多な仕事を割り当てられることは、まずないはずでした。

だとすると、本当に何をしているのか???疑問は深まる一方でした。ですから、私は一度、スミス様の部屋に行ってみることにしました。仕事の支度でもしているのではないか、と考えていたわけでございます。

すると……そこには、スミス様と妹のヘレン様のお姿がありました。

やっぱり……私にとってはある意味想定通りの結果になったわけでございました。ですが……こうして現場を見てしまうと、案外生々しいのだと思いました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

復讐は合わせ鏡のように─『私』を殺してでも絶対に許しませんわ!

naturalsoft
恋愛
シオン・ローゼンクロイツ公爵令嬢は、この国の王太子であるジーク・サザンクロス王子と婚約関係にあった。 しかし、学園でとある転入生が来たことで平和な日常が変わってしまった。 婚約のジーク王子がその転入生、マリア男爵令嬢に夢中になってしまったのだ。しかも、側近の高位貴族の子息達も同じく夢中となり、学園生活はメチャクチャになっていった。 そしてついに婚約破棄の出来事に発展していく─ 事前にその気配を察知した、頭の切れる公爵令嬢は裏でその計画を潰そうと動いたが、予期せぬ事に逆上した王子に殺されてしまう。 公爵家の抗議を握り潰し、マリア令嬢と婚約を結び直して、幸せを満喫するジーク王子は気付かなかった。 その怨みは死なずに生き続けていることに………

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。  今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王太子殿下の4人目の婚約者は悪役令嬢?!

橘ハルシ
恋愛
ある夜会で、3人目の婚約者の浮気現場を目の当たりにした王太子。その相手にも婚約者がいて、その女性までその場に現れて修羅場に。 ひょんなことからその女性の足を見てしまい、その脚線美に惚れた王太子だったが、彼女が好きだと自覚したのは、当人から婚約者候補辞退を申し出られた時だった。そして見栄をはった王太子はそれを承諾してしまう。 それでも結局、諦めきれない王太子が弟妹の協力を得、ワーワー言いながら彼女と結婚するまでのお話です。 何故か兄弟間の会話がメインで、主人公の王太子は情けない性格です。 多分ギャグです。 ※このお話は、『色褪せ令嬢は似合わない婚約を破棄したい』のスピンオフとなります。そちらのヒーローは出ますが、ヒロインは出てきません。 ※本編の方に比べて糖度は微糖か無糖くらいになっております。 ※悪役令嬢がチートで婚約者共をバッタバッタとなぎ倒すような話でも盛大にざまあする話でもありません。どちらかというと悪役令嬢を裏側から見る感じではないかと思います。 全6話です。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。 公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。 そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。 ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。 そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。 自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。 そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー? 口は悪いが、見た目は母親似の美少女!? ハイスペックな少年が世界を変えていく! 異世界改革ファンタジー! 息抜きに始めた作品です。 みなさんも息抜きにどうぞ◎ 肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!

処理中です...