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「子爵の名前はフンボルトと言う。言うなれば……君の人生を台無しにした張本人ということだな。彼は聖女に関する研究を進めている。そこで、君の人生に干渉したんだ。彼に会うことで、君の人生を修正することが出来る。気に入らなかったら……私が許可するから、闇に葬り去るなど自由にすればいい……」

 最後の方は、神様の発言とは思えなかった。でもまあ、言っていることを信じて私はフンボルトという子爵の邸宅に向かった。邸宅という名に相応しくない、非常におんぼろで古風、手狭な一軒家であった。

 神様の許可をいただいているし……加えて、段々と苛立ちが出てきた。フンボルトが……どういう経緯だか知らないが私の人生を台無しにしたというのなら、それなりの報いを受けるべきだと思ったのだ。

 触っただけで壊れそうなドアを、私は思いっきり開いた。

「フンボルトはいるかしら!?」

 私は大声で喚いた。見た限り、男の気配はなかった。怒りのせいか、想像以上に私の声は周囲に響いたようだった。近くから怪訝そうに人々が出てきて、ひそひそ話を始めた。


「新しい借金の取り立てかしら?」

「でも、女性だわ……」

 私はそこらに居合わせた人々にフンボルトのことについて尋ねてみた。


「フンボルト殿は……最近王宮に及ばれされていることが多いみたいですよ?」

 ある令嬢が呟いた。子爵が王宮に招かれるのは、一般的に不自然である。何か裏事情があるのか……。

 そう言えば……フンボルトは聖女に関する研究をしていると言っていた。

 つなぎ合わせて考えてみる……すると、一つの結論に至った。


 つまり……テレサに聖女の入れ知恵をしている!!!


 どうして私はこれほど狂暴になってしまったのか……これも神様の仕業だと言うのか。逆らうことが出来なかった。自分の意思ではなくて、何か大きな力が働いているような感じがしたのだ。



「何をしているのですか!!!」

 その声の主がフンボルトであると気が付くまで、私は必死にフンボルトの邸宅を破壊していた。あまりにもおんぼろであったので、1/4くらいを破壊するのは案外容易であった。
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