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「ひどい、ひどいわ。お姉様がこんなことをするだなんて……」

 テレサが悲鳴を上げた。出会いがしらにテレサと衝突した。ただそれだけなのに、テレサは被害者になった。

「どうしたんだ、テレサ!!!」

 もはや、テレサの夫になった第一王子ロベルトがその声を聴いて駆け付けた。

「お姉様がね……私に足を引っかけて……転んでしまったのよ……」

 もちろん、全部嘘なのだ。その事実を知っているのは、結局テレサと私だけ。さあ、王宮ですっかりアウェイになってしまったこの私とテレサ……皆さんはどちらの主張を信じるでしょうか?

 答えは最初から決まっている。それは、当然のことながらテレサなのだ。テレサが言ったことが全て正解で、私の言ったことは全部嘘、と言うことになる。

 これまで、私の味方をしてきたロベルトでさえ、もう私の言うことを信じなかった。

「ソフィア……君はどうして、こんなことを?」


「ロベルト……あなたが最初に婚約した女……私はそういうことをする人間だと思うのかしら?」

 ここまでくると、ムシャクシャして収まらなかった。

「そうだと信じたくはない……だからこそ残念なんだよっ……」


「お姉様!!!これ以上、ロベルト様を傷つけないで!!!」

 テレサもまた、私に反論した。そこまでして、私をここから追い出したいのか……私は泣き出すことも出来ずにその場を去った。


 後日、私は皇帝陛下から呼び出された。鬼のような形相で私を叱った。

「人間は非常に嫉妬深い生き物である……その醜さを改めて実感することが出来た!!!」

 テレサの件だとすぐに分かった。本当は冤罪なんだけど。

「それも……姉妹でこういうことになるとは……許しがたい蛮行じゃないか?」

 私は何も反論しなかった。したところで意味がないことを知っているから。


 諦めた。全て終了……もう十分だ。

 
 それから一週間後のこと、正式にロベルトとの離縁が決定した。加えて、聖女の地位も正式に剥奪された。私は即日王宮から追放されることとなった……。
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