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「聖なるソフィアよ。君に新しい世界を教えよう……」
毎週末、私は神殿を訪れて神様と対話する。神様の姿を見ることが出来るのは人間世界で私だけなのだ。
「……世界は変わらず平和であり続ける。君が人間の代表として、これからの新しい世界の秩序を守る行動をとり、また、それを人々に広めるのだ。この先…場合によっては苦難が待ち受けているかもしれない。だがしかし、それを乗り越えた先には希望に満ちた世界がある。人々が君に敵対しても…神のみは君の味方であり続けるだろう…」
神様は毎回毎回、同じような訓話をする。振り返ってみると、これは大きな伏線だった。そうとも気付かず、私はいつもみたいに「ありがとうございました!!!」とだけ答えて神殿を後にした。
神様から教えられたことを直ちに実践するため、王宮に戻る。第一ロベルトはもとより、国政の頂点に君臨する義父の皇帝陛下にも進言を行う。
「何か新しい情報はあったかい?」
ロベルトは割と熱心に質問してくる。
「いいえ、特に変わったことは。強いて言えば…湖水エリアでもうじき大雨が降るとのこと、川の氾濫に注意せよ、とのことですね」
「分かった、治水の担当者に伝えておくよ……」
皇帝陛下は特に質問をしない。良く言えば、私の言葉を全て信じているということ。悪く言えば、そもそも国政に興味がない?ってことだろう。要するに、私の言った通りに進めれば何も問題ないので、皇帝陛下が何か考える必要は全くないのだ。事実上の国政のトップは聖女である私、ということになる。
だから、面白くないのだろう。私に従うだけだから。聖女とはいえ、所詮は公爵令嬢。格下の貴族、しかも女から助言を受けるというのは、面目が立たないわけだ。とは言え、無碍にすることは出来ないから、こういう微妙な関係になっているのかもしれない。
会議がおおよそ10分程度で終了すると、自由時間になる。というより、ロベルトと夜まで一緒に時間を過ごす。平日は学院に通い、休日は王宮内でデート…皇帝陛下や義母が待望する世継ぎを作る練習など様々である。
「今日の練習はどんな感じだろうか?」
「分からないわ。なんだか、緊張してきたわ…」
「心配することはないさ。恥ずかしいのは……私も同じだから……」
子作りの練習…婚約してから概ね1カ月が経過しているけど、音沙汰が全くない。どちらかと言えば、私の方に問題があるんじゃないか。ひょっとして、体質的に孕みにくいのではないか、と心配になってしまう。普通、仲の良い男女がベッドを共にすると、すぐに子供が出来るものらしい。夜間、ロベルトは私のことをしっかり抱いてくれる。たくさん愛を囁いてくれる。私も全身でロベルトの愛を受け入れる。
それでも…子供が出来る気配は一向になかった。痺れを切らした皇帝陛下や義母が子作りに詳しい専門家チームを招集して、夜な夜な私たちの交わりを指導することになった。本来、子作りって2人だけでこっそりやるものじゃなかったっけ…逆に見られていたら緊張してしまって、上手くできるわけないでしょう、と反論したくもなったが。そういう点で皇帝陛下や義母に反論することは多分赦されなかった。
「腰の角度が悪いですね、もう少し曲げ方を変えてみましょう!」
「ソフィア様…その顔色では、ロベルト様が安心出来ませんよ?」
「もっともっと、身体を密接にくっつけて……」
とまあ、こんな具合で事細かに指導を受ける。ロベルトも私も必死に交わりを進めていく。若いから上手なやり方を知らないのだ。それはでも、仕方のないことだろう。
「もっともっと腰を振って…お互いが気持ちよく!!!」
私がロベルトを受け止めても、ロベルトが私を受け止めても、結局は変わらない。疲れるだけ疲れて……お互いが大した快楽を感じることもなく終わってしまうのだ。これだと、本来はダメだよね……。
専門家チームは恐らく、皇帝陛下と義母に対して今日もダメだったと報告するはずだ。そうすると、2人は溜息をついて、「何か他に方法はないだろうか…」なんて言うはずだ。
「そんな2人に朗報です!!!」
これも振り返ってみれば、当然の成り行きだった。新たな登場人物、彼女であればこうした問題を解決するのは容易だった。元々、大したプライドなんてなかったから。私もまた、受け入れることにしたんだ……。
毎週末、私は神殿を訪れて神様と対話する。神様の姿を見ることが出来るのは人間世界で私だけなのだ。
「……世界は変わらず平和であり続ける。君が人間の代表として、これからの新しい世界の秩序を守る行動をとり、また、それを人々に広めるのだ。この先…場合によっては苦難が待ち受けているかもしれない。だがしかし、それを乗り越えた先には希望に満ちた世界がある。人々が君に敵対しても…神のみは君の味方であり続けるだろう…」
神様は毎回毎回、同じような訓話をする。振り返ってみると、これは大きな伏線だった。そうとも気付かず、私はいつもみたいに「ありがとうございました!!!」とだけ答えて神殿を後にした。
神様から教えられたことを直ちに実践するため、王宮に戻る。第一ロベルトはもとより、国政の頂点に君臨する義父の皇帝陛下にも進言を行う。
「何か新しい情報はあったかい?」
ロベルトは割と熱心に質問してくる。
「いいえ、特に変わったことは。強いて言えば…湖水エリアでもうじき大雨が降るとのこと、川の氾濫に注意せよ、とのことですね」
「分かった、治水の担当者に伝えておくよ……」
皇帝陛下は特に質問をしない。良く言えば、私の言葉を全て信じているということ。悪く言えば、そもそも国政に興味がない?ってことだろう。要するに、私の言った通りに進めれば何も問題ないので、皇帝陛下が何か考える必要は全くないのだ。事実上の国政のトップは聖女である私、ということになる。
だから、面白くないのだろう。私に従うだけだから。聖女とはいえ、所詮は公爵令嬢。格下の貴族、しかも女から助言を受けるというのは、面目が立たないわけだ。とは言え、無碍にすることは出来ないから、こういう微妙な関係になっているのかもしれない。
会議がおおよそ10分程度で終了すると、自由時間になる。というより、ロベルトと夜まで一緒に時間を過ごす。平日は学院に通い、休日は王宮内でデート…皇帝陛下や義母が待望する世継ぎを作る練習など様々である。
「今日の練習はどんな感じだろうか?」
「分からないわ。なんだか、緊張してきたわ…」
「心配することはないさ。恥ずかしいのは……私も同じだから……」
子作りの練習…婚約してから概ね1カ月が経過しているけど、音沙汰が全くない。どちらかと言えば、私の方に問題があるんじゃないか。ひょっとして、体質的に孕みにくいのではないか、と心配になってしまう。普通、仲の良い男女がベッドを共にすると、すぐに子供が出来るものらしい。夜間、ロベルトは私のことをしっかり抱いてくれる。たくさん愛を囁いてくれる。私も全身でロベルトの愛を受け入れる。
それでも…子供が出来る気配は一向になかった。痺れを切らした皇帝陛下や義母が子作りに詳しい専門家チームを招集して、夜な夜な私たちの交わりを指導することになった。本来、子作りって2人だけでこっそりやるものじゃなかったっけ…逆に見られていたら緊張してしまって、上手くできるわけないでしょう、と反論したくもなったが。そういう点で皇帝陛下や義母に反論することは多分赦されなかった。
「腰の角度が悪いですね、もう少し曲げ方を変えてみましょう!」
「ソフィア様…その顔色では、ロベルト様が安心出来ませんよ?」
「もっともっと、身体を密接にくっつけて……」
とまあ、こんな具合で事細かに指導を受ける。ロベルトも私も必死に交わりを進めていく。若いから上手なやり方を知らないのだ。それはでも、仕方のないことだろう。
「もっともっと腰を振って…お互いが気持ちよく!!!」
私がロベルトを受け止めても、ロベルトが私を受け止めても、結局は変わらない。疲れるだけ疲れて……お互いが大した快楽を感じることもなく終わってしまうのだ。これだと、本来はダメだよね……。
専門家チームは恐らく、皇帝陛下と義母に対して今日もダメだったと報告するはずだ。そうすると、2人は溜息をついて、「何か他に方法はないだろうか…」なんて言うはずだ。
「そんな2人に朗報です!!!」
これも振り返ってみれば、当然の成り行きだった。新たな登場人物、彼女であればこうした問題を解決するのは容易だった。元々、大したプライドなんてなかったから。私もまた、受け入れることにしたんだ……。
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