7 / 18
7
しおりを挟む
「まあ、とりあえずは元気そうで何よりだ……」
薬師は言いました。
「ありがとうございます」
私は丁重に挨拶をしました。
「多少の違和感は感じるかもしれないが…概ね問題ないだろう。さあ、君にはまだやり残した仕事がたくさんあるんだろうから……精進しなさい……」
薬師は言いました。やり残した仕事……よく分かりませんでしたが、とにかく家に帰ろうと思いました。
「本当にありがとうございました」
私はもう一度挨拶をして医務室を出ました。
「上手くやってくれたまえ……私が生み出した修正プログラムの効果は……」
とりあえずあの事件が起きた廊下に戻りました。家に帰るためには、まず王宮から出ないといけないのです。出口に通じる長い廊下を歩いておりました。そうすると、行き交う人々が再び私を見て、ひそひそと噂話を始めました。
「あの女、どこかで見たことがあるなあ……」
「確か……ランゲルハンス様を殺した女じゃないかしら???」
「ああ、そうだ。ランゲルハンス様を誑かした女よ!!!」
ランゲルハンス様を誑かして殺した???私が???そんなわけありませんのです。
「確か……名前はマリアと言ったか……」
ええ、まさしく私は公爵令嬢のマリアでございます。
「まだ生きていたのか……。それにしても、ランゲルハンス様は非常に可哀想なお方だったな……」
みんなが言いました。可哀想……ああ、確かに巷では名君と祀り上げられておりますからね。あの方は。
実際のところ、それほど名君なのか……いいえ、とんでもありません。誰が彼を名君だと言うのでしょうか???
私は言いません!!!!!絶対に!!!!!
「ああ、マリア君……」
そして、背後から聞き慣れた声が……人々は私たちを避け始めました。振り返るとそこには顔なじみの姿がありました!!!!!
「皇帝陛下!!!!!」
「ああ、久しぶりだなあ……」
随分と悲しそうな顔をしていらっしゃいました。
「どうされたのですか???」
「ああ、実を言うとランゲルハンスの件なのだが……」
またまたランゲルハンス様のお話……正直なところ、私にはもう関係のない話なのですが……。
「いかがいたしましたか???」
「ああ、実を言うとだな……ランゲルハンスは不治の病におかされているんだ……」
「不治の病ですって???」
「ああ、そうなんだ……」
人々はブツブツ言いだしました。
「マリアが毒を盛ったに違いない……」
ああ、それで理解できました。だから、みんな、私がランゲルハンス様を殺したと噂しているのですね。
でもね、ちょっと待った!!!!私は今の今まで眠っていたわけですからね。ランゲルハンス様に毒を盛るなんてことはできないのです!!!!!
つまり、私は犯人じゃない、この一件については関係ない!!!!!
以上……この件を皇帝陛下に伝えれば話は終わりだと思いました。そんなことよりも早く、私は家に戻らないといけないと思いました。誰よりもお父様が私のことを心配なさっているはずなんです。婚約破棄されてしまった娘の身の振りについて……修道院送りになるのか、知り合いの貴族がいる辺境に送られることになるのか……。
「ランゲルハンスを助けたい……是非とも力をかしてほしいんだ……」
「力をかす……私がですか???あの、皇帝陛下。私にランゲルハンス様を治す能力など、全く持ち合わせておりませんが…………」
「ああ、そんなことは分かっている。君に治療してほしいと言っているわけではない。君の傷を癒した最高レベルの薬師……サイクリック様にヘルプを要請いただきたいのだ……」
「サイクリック様……あのお方はサイクリック様と言うのですか」
私の傷を癒してくれた最高の薬師にして最高の魔法使い……サイクリック様。
彼はまだ医務室にいるはずでした。それにしても、どうして皇帝陛下から直接依頼しないのでしょうか。
薬師は言いました。
「ありがとうございます」
私は丁重に挨拶をしました。
「多少の違和感は感じるかもしれないが…概ね問題ないだろう。さあ、君にはまだやり残した仕事がたくさんあるんだろうから……精進しなさい……」
薬師は言いました。やり残した仕事……よく分かりませんでしたが、とにかく家に帰ろうと思いました。
「本当にありがとうございました」
私はもう一度挨拶をして医務室を出ました。
「上手くやってくれたまえ……私が生み出した修正プログラムの効果は……」
とりあえずあの事件が起きた廊下に戻りました。家に帰るためには、まず王宮から出ないといけないのです。出口に通じる長い廊下を歩いておりました。そうすると、行き交う人々が再び私を見て、ひそひそと噂話を始めました。
「あの女、どこかで見たことがあるなあ……」
「確か……ランゲルハンス様を殺した女じゃないかしら???」
「ああ、そうだ。ランゲルハンス様を誑かした女よ!!!」
ランゲルハンス様を誑かして殺した???私が???そんなわけありませんのです。
「確か……名前はマリアと言ったか……」
ええ、まさしく私は公爵令嬢のマリアでございます。
「まだ生きていたのか……。それにしても、ランゲルハンス様は非常に可哀想なお方だったな……」
みんなが言いました。可哀想……ああ、確かに巷では名君と祀り上げられておりますからね。あの方は。
実際のところ、それほど名君なのか……いいえ、とんでもありません。誰が彼を名君だと言うのでしょうか???
私は言いません!!!!!絶対に!!!!!
「ああ、マリア君……」
そして、背後から聞き慣れた声が……人々は私たちを避け始めました。振り返るとそこには顔なじみの姿がありました!!!!!
「皇帝陛下!!!!!」
「ああ、久しぶりだなあ……」
随分と悲しそうな顔をしていらっしゃいました。
「どうされたのですか???」
「ああ、実を言うとランゲルハンスの件なのだが……」
またまたランゲルハンス様のお話……正直なところ、私にはもう関係のない話なのですが……。
「いかがいたしましたか???」
「ああ、実を言うとだな……ランゲルハンスは不治の病におかされているんだ……」
「不治の病ですって???」
「ああ、そうなんだ……」
人々はブツブツ言いだしました。
「マリアが毒を盛ったに違いない……」
ああ、それで理解できました。だから、みんな、私がランゲルハンス様を殺したと噂しているのですね。
でもね、ちょっと待った!!!!私は今の今まで眠っていたわけですからね。ランゲルハンス様に毒を盛るなんてことはできないのです!!!!!
つまり、私は犯人じゃない、この一件については関係ない!!!!!
以上……この件を皇帝陛下に伝えれば話は終わりだと思いました。そんなことよりも早く、私は家に戻らないといけないと思いました。誰よりもお父様が私のことを心配なさっているはずなんです。婚約破棄されてしまった娘の身の振りについて……修道院送りになるのか、知り合いの貴族がいる辺境に送られることになるのか……。
「ランゲルハンスを助けたい……是非とも力をかしてほしいんだ……」
「力をかす……私がですか???あの、皇帝陛下。私にランゲルハンス様を治す能力など、全く持ち合わせておりませんが…………」
「ああ、そんなことは分かっている。君に治療してほしいと言っているわけではない。君の傷を癒した最高レベルの薬師……サイクリック様にヘルプを要請いただきたいのだ……」
「サイクリック様……あのお方はサイクリック様と言うのですか」
私の傷を癒してくれた最高の薬師にして最高の魔法使い……サイクリック様。
彼はまだ医務室にいるはずでした。それにしても、どうして皇帝陛下から直接依頼しないのでしょうか。
0
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
変装して本を読んでいたら、婚約者さまにナンパされました。髪を染めただけなのに気がつかない浮気男からは、がっつり慰謝料をせしめてやりますわ!
石河 翠
恋愛
完璧な婚約者となかなか仲良くなれないパメラ。機嫌が悪い、怒っていると誤解されがちだが、それもすべて慣れない淑女教育のせい。
ストレス解消のために下町に出かけた彼女は、そこでなぜかいないはずの婚約者に出会い、あまつさえナンパされてしまう。まさか、相手が自分の婚約者だと気づいていない?
それならばと、パメラは定期的に婚約者と下町でデートをしてやろうと企む。相手の浮気による有責で婚約を破棄し、がっぽり違約金をもらって独身生活を謳歌するために。
パメラの婚約者はパメラのことを疑うどころか、会うたびに愛をささやいてきて……。
堅苦しいことは苦手な元気いっぱいのヒロインと、ヒロインのことが大好きなちょっと腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(作品ID261939)をお借りしています。
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる