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その22

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「ところで、ここに薬師はいらっしゃるか?」

「薬師でございますか?」

「ああ、少し質問したいことがある。本当ならば、リンプルに確認すべきところだが……頼む」

暫くして、元軍医と名乗る男が現れた。

「初めてお目にかかります。ランセットと申します。それで……質問とは何でしょうか?」

「ああ、ベータという成分のことについてなのだが……あれで人を殺すことはできるのかね?」

「ベータで人殺しですと?それはまた、どれほど過量投与しなくてはならないことやら……手っ取り早く殺したいのであれば、カリウムを用いるでしょう。ベータは心臓の収縮力を調整する薬です。ですから、よほどの量を用いない限り、殺すことはできないでしょう?」

「なるほど……。ならば、ベータを服用して、何か妄言が浮かぶとか、あるいは、一過性に意識を失うということはあるのか?」

「それは可能ですね。ベータに限らず、あらゆる薬の副作用に、精神の攪乱がございますから。そして、ベータは一時的に血圧を下げることがありますから、意識を失うと言うのは十分考えられますな」

「なるほど。すると、私が倒れたのは、私がリンプルの指示を聞かずに歩き回った結果、ということか……」

ファンコニーはすっかり納得した。

「だとすると、やはり、彼らの判断は間違っているわけだ。さあ、早くしないと……」

ファンコニーは軍人の落人たちを集めた。
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