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その17

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「だからといって、薬師の権限を大幅に逸脱するような行為が許されるとは思わないだろう?」

「今さら何を言うか。このような状態の中、正義とかそういうものはどうでもいいんじゃないか?」

「わかってないな……」

「わからなくて結構だよ。君は人の親になったことがないだろう。だから、わかるはずがないんだ。子供の未来を踏みにじられた親の気持ちがわかるのか?」

ボアジエ公爵はジャックに近寄った。

「そんなものはわからないな。ただ私は、神様みたいに大層な視点に立って、物事がいいのか悪いのかを判断するだけだ」

「だとすれば、私がこれからしようとすることに、君はケチをつけることができるのか?」

「さあね、まぁいいや。私が何を言っても君は聞く耳をもたないだろう。さよなら、私の古い友達……」

再び、ジャックの声が聞こえなくなった。

「おーい、ジャック。いないのか?」

ボアジエ公爵は不審がった。

「お父様。さっきもそうだったんですよ。消えたかと思えばまた現れたりして。ずいぶんと不思議なお方ですね」

ボアジエ公爵は一言、

「ああ、そうだな」

と答えた。

「ところで、お父様?私には何か、お父様が悪いことを企てているように思えてならないのですが……。気のせいでしょうか?」

ボアジエ公爵は言うべきか、それとも言わないべきか迷った。しかし、リンプルの顔を見ていると、必ずしも無言を貫くことが得策ではないと思った。

「リンプル……私たちが薬師である由縁はなんだ?」

「それは……神の司る薬理を広く人々に浸透させ、実際に人の傷を癒すためです」

「その通りだ。リンプル、君は薬師としてたくさんの人々を救ってきた。そしていま、自らを傷つけているわけだ……」

ボアジエ公爵の顔色が少しずつ変わってきた。それは、子供を見守る父親ではなく、憎しみに魂を燃やす神のようだった。

「薬理とは、一種の神との契約だ。それを誤った方向に用いれば、災いを起こすことだってできるのだ……。そう、例えば人を殺めることもできるのだ……」

「お父様?もしかして……」

「リンプル。これは独り言だ。ただ、これだけは伝えておく。私がこれ以上生きている理由と言えば、それは君の幸せが確約されるのを見届けることだろうな……」

ボアジエ公爵はそう言い残して、上の世界に帰っていった。

「愚かな父親だよ……」

リンプルは、ジャックの独り言を、確かに聞いた。
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