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その14
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アンナが止めを刺した。
「これでもうお分かりでしょう。リンプルさんは、全て誤った処方をしていたことになるんです。しかも意図的に。この意味が分かりますよね?」
「本当に、そうなのだろうか?」
「この薬師の言っていることが信頼できませんか?」
「いや、そういうわけではないんだが……」
「まあ、いいでしょう。どちらにしても、ファンコニー様。リンプルさんとの婚約についてですが……一度考え直した方がいいのではありませんか?」
「君に言われなくても分かっているよ……それが一番大きな問題なのだ……」
ファンコニーはあからさまに不快感を示した。
「さて、どうしたものだろうか……」
「いっそのこと、私と婚約するというのはどうですか?」
「冗談はよしたまえ……」
「いいえ、冗談ではございません!」
アンナは再びファンコニーを押し倒した。
「さあ、今度はあなた様の身体の自由がきくわけですから。イヤでしたら、とっとと押しのけてくださいまし!」
一種の賭けだった。ひょっとすると、そのまま殴られるかもしれない。あるいは……?
「バカな冗談はやめてくれ!」
ファンコニーは起き上がった。
「これは夢なのではないだろうか?ところで……肝心のリンプルはどこにいるんだ?」
「彼女は地下の牢獄にいます」
「会わせてはもらえないだろうか?」
「あなた様にその権限はございません。これは、私たち捜査官に与えられた権限なのです」
「しかしながら、君たちは本来皇帝陛下直属の官吏だろう?ならば、私の命令にどうして逆らうことができようか?」
「それは、高度な独立性を担保するために……」
「これ以上君の戯言を聞いている必要はないだろう。そこにいる薬師殿、あなたの的確な処置には大変感謝しております。この件は皇帝陛下に進言致し、爵位を授けましょう。そして、アンナと言ったかね、私は君たちの捜査権を侵害するつもりなんてないんだ。ただ、リンプルの口から真実を聞きたいだけなんだ。そして、彼女が本心から私を殺すつもりだと分かったら、私はその場で彼女を殺す!」
「それはいけません!法による裁きを待たなければいけません!」
「これは皇帝権限だ!私がその代理として行使する!」
ファンコニーは城に戻る決心をした。アンナはこれ以上引き留めることができなかった。皇帝権限を持ち出されると、最悪の場合、自分の立場が危うくなるからだった。
「これでもうお分かりでしょう。リンプルさんは、全て誤った処方をしていたことになるんです。しかも意図的に。この意味が分かりますよね?」
「本当に、そうなのだろうか?」
「この薬師の言っていることが信頼できませんか?」
「いや、そういうわけではないんだが……」
「まあ、いいでしょう。どちらにしても、ファンコニー様。リンプルさんとの婚約についてですが……一度考え直した方がいいのではありませんか?」
「君に言われなくても分かっているよ……それが一番大きな問題なのだ……」
ファンコニーはあからさまに不快感を示した。
「さて、どうしたものだろうか……」
「いっそのこと、私と婚約するというのはどうですか?」
「冗談はよしたまえ……」
「いいえ、冗談ではございません!」
アンナは再びファンコニーを押し倒した。
「さあ、今度はあなた様の身体の自由がきくわけですから。イヤでしたら、とっとと押しのけてくださいまし!」
一種の賭けだった。ひょっとすると、そのまま殴られるかもしれない。あるいは……?
「バカな冗談はやめてくれ!」
ファンコニーは起き上がった。
「これは夢なのではないだろうか?ところで……肝心のリンプルはどこにいるんだ?」
「彼女は地下の牢獄にいます」
「会わせてはもらえないだろうか?」
「あなた様にその権限はございません。これは、私たち捜査官に与えられた権限なのです」
「しかしながら、君たちは本来皇帝陛下直属の官吏だろう?ならば、私の命令にどうして逆らうことができようか?」
「それは、高度な独立性を担保するために……」
「これ以上君の戯言を聞いている必要はないだろう。そこにいる薬師殿、あなたの的確な処置には大変感謝しております。この件は皇帝陛下に進言致し、爵位を授けましょう。そして、アンナと言ったかね、私は君たちの捜査権を侵害するつもりなんてないんだ。ただ、リンプルの口から真実を聞きたいだけなんだ。そして、彼女が本心から私を殺すつもりだと分かったら、私はその場で彼女を殺す!」
「それはいけません!法による裁きを待たなければいけません!」
「これは皇帝権限だ!私がその代理として行使する!」
ファンコニーは城に戻る決心をした。アンナはこれ以上引き留めることができなかった。皇帝権限を持ち出されると、最悪の場合、自分の立場が危うくなるからだった。
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